第7話 月 日 (空飛ぶお弁当)

不平では無く、慨嘆でも無い。心の肝に纏わりつく胸襟の吐露はデトックスである。心のクレンジングである。ものに書く事の効能は共有出来ると信じる。忍びに以下、世迷いの言。


ぬるま湯の電車に大勢が乗り込み限られたスペースに押し込まれ駅から駅の間、空間が増えることも減ることもない為、知らない人と背中がビトって接触することがある。あのビトッが特に苦手。車で出社したい。タクシーでも良い。そんな身分はない。目的の駅に着く。ペットボトルのお茶を買ってがぶ飲みすると生き返る。


今日も頑張りますよ。頑張りますとも。


本社。リモートワークが楽過ぎて過酷な出勤だ。会社のデスクはフリーアドレス、ということになってはいるがもう座る場所はほぼ固定である。


自分のノートPCを持って会議室へ移動すれば自動的にWi-Fiで繋がる。繋がるように設計・設定を担当したのは僕である。


休憩室があり、そこでネスカフェアンバサダー的なやつがあり、ネスカフェかどうか知らんけど、そこでお茶とか紅茶とかコーヒーの小さいパックをセットして飲むことができる。


恐るべきは社員なのに一杯50円取られるのである。非現実的な搾取である。福利厚生なぞガン無視ではないか。


休憩室。誰かの出張土産の洋菓子をかじり、景色を見ながらコーヒー飲んでたら、別部署の柿山くん(仮名)が来て「あ、にこにこ先生、どうもっす」と、手にはラベルのはがされたペットボトルを持っていた。そのペットボトルには緑に混濁した液体が入っている。


「それなんすか」と尋ねると「なんだと思います?」と笑顔。


柿山くんクイズが出題されたが、柿山くんにはそんなに興味はない。へんなクイズ出さんで欲しい。


「お茶?」


「ブー!青汁でした」


どうでもええわ。


ヘルシーなものを飲んでいる事について称賛したが、しょうもないクイズについては黙殺した。


一時期、水筒とお弁当(ほぼ冷凍おにぎり)を持参して休憩室で食べてた。お昼を外食するとお金がかかるので倹約である。


今は暑いから鞄の重さも相まって止めている。でもやめている一番の理由はお弁当箱を覗き込まれることである。体感、特に女子がさり気なく覗き込んでくるので恥ずかしい。


男子の低スキルお弁当なんです。握ったおにぎりの冷凍(レンジで解凍)とお漬物くらいなのです、貧弱なのです、覗き込まないでね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る