第3話 『家族になろうよ』

福山雅治の「家族になろうよ」がスタジアムに響き渡る中、高橋直樹はステージの光から少し離れた場所で冷静を装いながらも、その内側では感情がぐるぐると渦巻いていた。周囲の歓声や歓喜の声に耳を傾けるも、心は全く別の場所にあった。


新しい経営陣への不満が頭の中を占領する。昔の仲間たちはどこに行ったのか?理想を追い求めていた時代はどこへ消えたのか?直樹は降格され、セキュリティチーフという肩書きに甘んじているが、心の中ではまだ燃えるような復讐心が残っている。


「家族になろうよ」の歌詞が、彼の心の琴線に触れる。直樹は家族のことを思い出す。彼の支えであり、彼が守りたい存在。だが、今や彼は、家族にとって理想の父親でなくなってしまったと感じている。この会社での降格は、自分だけでなく家族全体の生活をも脅かしている。


直樹は計画を実行するために次のステップへ進む。彼の計画は、スタジアムのシステムに細工を施し、混乱を引き起こすことだ。観客たちが気付かないうちに、彼はスタジアムの隅々を回り、仕掛けたトラップが正常に作動しているかを確認する。


「家族になろうよ」のメロディが流れる中、直樹の心には一つの思いがよぎる。「家族のために、自分が何をすべきか…」。彼は家族のために戦っているのだと自分に言い聞かせ、計画の遂行に集中する。


周囲の観客の中には、彼の動きを怪しむ目があることに気付くが、彼は冷静に対処する。計画を成功させるためには、どんな犠牲も厭わない決意があった。香織や涼介が迫っていることを感じながらも、彼は自分の道を貫く。


「家族になろうよ」の歌が終わりに近づくにつれ、直樹の決意も固まっていく。「全ては家族のために」。彼の心には、愛と怒り、そして復讐の念が入り混じっていた。家族への思いが、彼を突き動かしているのだ。


「これで終わりにしよう…全てを、家族のために。」

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