第4話 情意投合≪じょういとうごう≫

「どうする? 最後まで、しちゃう?」


 予想だにしなかった展開で、俺、二子神淳史≪にこがみあつし≫は童貞を卒業した。

 優しく、そして大胆に、身体を張って自分の症状を解明してくれた遥≪はるか≫さんに、俺はすっかり感激し、彼女に交際を申し込んだ。


「遥さん、好きです。俺とお付き合いしてください」


 俺の突然の告白に、遥さんは目を丸くして驚いていた。

「そんなの無理に決まってるじゃない! 私、犯罪者って言われちゃうわ!」

 

 確かに俺は高校生で、遥さんは一回りほども歳上の女医である。二人が釣り合わないことは百も承知だ。それでも俺は、遥さんのベッドの上で、全裸で正座というかなり滑稽な格好で、誠心誠意の告白を続けた。


 突然の告白に服を着るタイミングを逸した遥さんは、時折吹き出しながらも俺の告白を聴いてくれた。

 

 最初は全く本気にしてもらえなかったが、俺の誠意が通じたのか、とうとう最後は、

「こちらこそ、よろしくお願いします」と頭を下げてくれた。

 

 かくしてアラサーの女医と男子高校生という全く釣りあわない二人が恋人同士になった。


 遥さんは歳より若く見えるものの、それでも俺と並ぶと明らかに年上とわかってしまう。

 おそらく周囲からは姉と弟に見えていることだろう。

 遥さんは、人目を気にしてデート中は恋人同士らしい振る舞いは一切しなかった。いちゃいちゃもしなければ手もつながないデートに、俺は不満を感じていた。 


 遥さんにとっても外でのデートが不完全燃焼なのは同じこと、自然な帰結として、外でのデートは早々に切り上げて遥さんのマンションへという流れになり、そうなるとやはりやることは自ずと決まってくる。

 

 俺たちは、デートの度に、遥さんの部屋で、幾度も幾度も身体を重ねた。

 

 そのおかげで、俺は女性の発情を示すフェロモンを、単に目視確認するだけでなく、その濃度や流れを読んで、女性の感じる場所や興奮の度合いまでもチェックする術を身に着けていった。


 俺の腕の中で何度もその身を震わせるかわいい遥さん、彼女はことが終わるといつも俺にこう言って聞かせた。


「いい、淳史くんは、その気になればいくらでも女性と関係が持てるし、その女性を虜にすることもできるわ。でも、私以外の女性とエッチしたら、私は絶対に許さないから」

 

 それが遥さんの独占欲によるものなのか、はたまた大人の女性、あるいは医者としての忠告なのか、前者であればうれしいなと思った。

 でも遥さん、そんな心配は無用に願いたい。なぜって、俺は遥さん一筋、浮気なんて絶対にするつもりはないから。

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