神隠しにあったと思ったら、そこは妖怪の暮らす隠世でした。

六月

プロローグ

 夜桜の舞う季節、月明かりに照らされる広大な屋敷の、誰もいない薄暗い部屋の中で、私とこいつは茶を飲んでいた。 

 

 ふと、こいつは顔をあげた。まるで何かを感じ取ったかのように。口が弧を描く。


 「…おや、客人が来たようだな」


 こいつはそう言って、上品に茶を飲む。

 私も、すでに客人の気配は感じ取っていた。


 しかし、不安だ。私にはこいつの考えていることが分からない。客人を呼んで、一体どうするつもりなのだろうか。


 それに、今夜は月が眩いほどに輝いている。私にはその輝きが恐ろしく見えて、嫌な予感がした。


 ふいに、こいつが口を開いた。その内容に、私は大きな衝撃を覚える。


 思わず、正面にある顔を見る。その瞳は妖しいほどに紅く輝いていて、その表情は玩具を得た子供のようで、言葉が出なかった。


 私は、悟った。もう、誰にもこいつの企みは止められない、と。

 ひとつ、ため息を吐いて、口を開く。


 「私は……、お前がそれを望むのならできる限り助力しよう。しかし、客人の意思を一番に尊重することを忘れるなよ」


 こいつはその言葉に驚いたのか、目を見開きしばし固まる。やがて、声をあげて笑い出した。


 「ははっ! まさかお前がそのようなことを言うなんてな! 驚いたが、感謝するよ、兄弟」


 ああ、今夜は良い夜になりそうだ。

 私はなぜかそう予感した。

 

 客人、それはどのような人間なのだろう。

 会ってみたい、話してみたい。そんな期待がこみあげる。


 私の感情を表すように、九つの尾がゆらゆらと揺れる。それは、人間にはないもの。こいつもまた、人間ではない。


 これを見たら、客人はどう思うだろう。反応が楽しみだ。





------------------------------------------------------------------


はじめまして、六月と申します。

今回、初めての投稿となりますので、文章がおかしかったり、分かりにくかったりするかもしれません。

ですが、何卒温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

そして何かアドバイス等ありましたら、ぜひ教えていただきたく思います。

どうぞよろしくお願いいたします。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る