ブタのポゥさん

ぱぴっぷ

ポゥさん、おつかいにいく

 とある森の中、小さな家に『ポゥ』という名前の、かわいい子ブタの男の子が住んでいました


 ポゥさんは食べるのが大好き、とくにママンの作るごはんを食べるのが大好きでした


 そんなある日、ポゥさんはママンにおつかいをたのまれました


「ポゥ、晩ごはんの野菜やさいが足りないの、山のふもとにある村の、クマノさんのお店で野菜を買ってきてくれないかな?」


「うん! いいよ、ママン!」


 ポゥさんはママンのおねがいを聞いて、元気に返事へんじをしてから おでかけの用意よういをしました。


 お気に入りのリュックを背負せおい、首にはヒモのついたお財布さいふをぶら下げて、おつかいにしゅっぱーつ!


「ポゥ、森のおくは危ないから道を間違まちがえないようにね?」


「はーい! いってきまーす! ふんふんふーん!」


 おつかいのために家を出たポゥさんは、ママンのお手伝いができるのがうれしくて、鼻歌はなうたうたい、スキップをしながら森の中を歩いていました


 そして、しばらく歩いていると道の真ん中にどんぐりが落ちているのを見つけました


「あっ! どんぐり! ママンのおみやげにしよう!」


 ポゥさんは落ちていたどんぐりを一つ拾《いました

 そしてそのどんぐりをリュックの中に入れて、また歩き出そうとしたら


「もう一つ落ちているぞ! あっ、あっちにもどんぐりがある!」


 またどんぐりを見つけたポゥさんは、一つ、また一つと拾い


「あっちにもまだある! やったー! ママンへのおみやげがいっぱいだー!」


 ママンへのおみやげが増えて大喜おおよろこびのポゥさん

 だけど、おつかいに向かう道から外れて、くらい森の中にどんどん入っていってしまいました


「わぁー、リュックがどんぐりでいっぱい! ……あれ? ……ここはどこ?」


 どんぐりを拾うのに夢中むちゅうになっていたポゥさんは迷子まいごになってしまいました


 暗くて木がいっぱいの森の中、どこから来たのか分からなくなったポゥさんは、だんだんこわくなって


「……ママーン! ……ママーン!」


 と、大きな声で呼んでみましたが、カサカサとはっぱの音がするだけで、ママンの返事はしませんでした


「遠くまで来ちゃったのかな? どうしよう…… 迷子になっちゃった……」


 泣きそうになるのを我慢がまんして、ポゥさんはもと場所ばしょもどるために暗い森の中で道をさがしていました

 そして しばらく歩いていると


「うぅっ…… ママン…… でも泣いちゃだめだ! ……あれ? 誰かの声が 聞こえるぞ!」


 耳をすますと遠くの方から小さな声が聞こえてきました

 ひとりぼっちで怖かったポゥさんは、急いで声がする方に行くと


「うぇーん! ママぁ…… パパぁ……」


 木の下ですわりながら 泣いている人間にんげんの女の子を見つけました


「きみ、大丈夫だいじょうぶ?」


「うぅっ…… お花を探していたら迷子になっちゃったの……」

 

「君も迷子になったの? ボクと一緒だね!」


「あなたも迷子なの?」


「うん、だから一緒に帰り道を探そうよ!」


 迷子の仲間なかまができた! と、思ったポゥさんは、さっきまで泣きそうになっていたのもわすれ、笑顔えがおになりました


「あなたも迷子なのに、なんでそんなに楽しそうに笑ってるの?」


「何でだろう? 一人だと怖かったけど、二人なら大丈夫な気がしてきたんだ!」


「……ふふっ、あなた、面白おもしろいね」


 ポゥさんの元気な笑顔を見て、女の子も笑顔になりました


「きみ、お名前はなんていうの?」


「あたしはユア、クマノ ユアよ」


「ユアちゃんっていうんだ! クマノって、野菜を売ってるクマノさんのおうちの子?」


「そうだよ! あなたのお名前は?」


「ボクはポゥ! ブタのポゥだよ! ママンにたのまれて、クマノさんのおうちの野菜を買いに行く途中とちゅうだったんだ!」


「えー!? そうだったのね!」


「だから頑張がんばって一緒にユアちゃんのおうちまで行こう!」


「うん!」


 そして二人は暗い森の中を手をつなぎながら歩き、一緒に帰り道を探すことにしました


 からだの大きなポゥさんは、からだの小さなユアちゃんのために草を足でかきわけて、道を作りながら歩いていきます


「ふんふん! ふんふん!」


「わぁー! ポゥさんは大きいから いっぱい草がたおれてる!」


「ふっふーん! すごいだろ? でもボクはもっといっぱい食べてパパンみたいに もっと大きくなるんだ!」


「ポゥさんのパパはもっと大きいんだ! すごーい!」


「ユアちゃんもいっぱい食べて大きくなれるといいね!」


「うん!」


 そして二人は森の出口を探すためにどんどん前に進みますが、なかなか帰り道は見つかりません


「ポゥさん、足がいたいよー」


「ユアちゃん、大丈夫?」


 からだの小さなユアちゃんは、歩きつかれて座りこんでしまいました


「いたいよー、もう歩けないよー」


「じゃあユアちゃん、ボクがおんぶしてあげるよ!」


 まだまだ元気なポゥさんは、ユアちゃんをおんぶしてあげることにしました


「わー! すごーい! 高ーい!」


 ポゥさんにおんぶされたユアちゃんは、ポゥさんの大きさにビックリ、だけど楽しそうに笑っていました


「どんどん行くよー? ふんふん! ふんふん!」


「ポゥさん、頑張って! すごい! すごーい!」


 ポゥさんが草を倒しながら歩き、ユアちゃんはおんぶされながら ポゥさんを応援おうえんしていました


 しばらく歩いていると二人はすぐ近くに小屋こやがあるのに気がつきました


「あんなところに小屋があるよ! 誰かいるかもしれないから行ってみよう」


「もし誰か住んでいたら、道を教えてもらえるかもしれないね! そうしたらあたしたち、迷子じゃなくなるよ!」


 そして二人で小屋の前に立ち、コンコン、とドアをたたいてみました


 でも何も返事はありません


「誰もいないのかな?」


 コンコン、コンコン


 すると、小屋の中から何か聞こえてきました


「……誰だー? オレっちのお昼寝ひるね邪魔じゃまをするのはー」


 グルルル! と、怖い声が聞こえてきたので、ポゥさんとユアちゃんはビックリしてしまいました


「ユアちゃん! 早くボクの背中にのって!」


「う、うん!」


 リュックをおなかの前にかかえ、ユアちゃんをおんぶしたポゥさんは、急いで小屋からはなるれことにしました


 でも小屋の中から黒くて大きいモジャモジャのイヌが出てきて


「うるさいのはおまえたちか? ……よく見たらおいしそうな子ブタだな! よし、お昼寝の前のオヤツにしよう!」


「ボ、ボクはおいしくないよ!」


「ふーん、じゃあその小さな人間を食べようかなー?」


「あ、あたしもおいしくないよ!」


「おなかもへったし、それじゃあ…… 二人とも食べちゃおう! わぉーん!!」


「「わぁぁぁー!!」」


 大慌おおあわてで走り出したポゥさん

 ユアちゃんはポゥさんの背中にガッチリしがみついて、今にも泣き出しそうです


「イヌさん、こないでー! わーん! ポゥさん、怖いよー!」


「おまえたちー! 逃げるなー! まてまてー!」


 黒いイヌはドシ、ドシと大きな足音あしおとをさせて二人をいかけてきます


 急いで逃げるポゥさんとユアちゃんでしたが、ポゥさんは走るのが苦手にがてで すぐにイヌに追いつかれそうになってしまいました


「ポゥさん! イヌさんがすぐそこまで来ているよー!」


「ぶひぃ! ぶひぃ! ボ、ボク、足がおそいから……」


「ポゥさん、頑張ってー!」


 ユアちゃんはポゥさんのふわふわの背中にしがみつきながら一生懸命応援いっしょうけんめいおうえんしていました、でも黒いイヌは二人を抜いて、目の前に立ちました


「へへへっ! 追いついた! それじゃあ、まずは人間から…… いただきまーす!」


「きゃーー!! ポゥさん、食べられちゃうー!!」


 イヌは大きく口をあけてユアちゃんを食べようとしました


「……わわぁ! ユ、ユアちゃんを食べちゃだめなんだぞー!」


 ポゥさんはとっさにリュックに入っていたどんぐりを手でつかみ、イヌに向かって投げました


 すると、すぽーん! とイヌの口の中にどんぐりが入って


「むぐっ!? もぐもぐ…… ごくん! うげー! これはどんぐりじゃないか! オレっちはどんぐりが大嫌だいきらいなんだ! ぺっ! ぺっ!」


 ユアちゃんを食べようとしたイヌはポゥさんの投げた大嫌いなどんぐりを食べてしまい苦しそうにジタバタしていました


 それを見たポゥさんは


「ユアちゃん! イヌさんの口にどんぐりをいっぱい投げるんだ!」


「わかったわ、ポゥさん!」


 大きく口をあけたまま苦しそうにしているイヌに向かって、ポゥさんとユアちゃんはリュックにいっぱい入っているどんぐりを、次々つぎつぎとイヌの口の中をねらって投げ入れました


「えい! ボクたちよりも どんぐりの方がおいしいぞー!」


「いっぱい食べておなかいっぱいになっちゃえー!」


「うぎゃー!! どんぐりはやめてくれー!!」


 イヌが口をあければポゥさんとユアちゃんはどんぐりをポイ! 


 イヌは大嫌いなどんぐりを口から出したくても次から次へとどんぐりを食べさせられて、最後さいご


「もうおなかいっぱいだー! やめてくれー! わぉーん!」


 おなかがぽっこりとなったイヌは、泣きながら森の奥へと逃げていきました


「ポゥさん! 怖いイヌさんが帰っていったよ!」


「食べられなくて良かった! やったね、ユアちゃん!」


 二人で協力きょうりょくして、一生懸命いっしょうけんめいどんぐりを投げていたら、二人は怖いイヌを追いはらうことができました


 だけど、いっぱい投げてイヌに食べさせてしまったので、ポゥさんのリュックに入っていた、ママンのおみやげのために頑張って拾ったどんぐりは全部なくなってしまいました


「ふふん! あっ! ユアちゃん、あっちの方に道があるよ!」


本当ほんとうだ! あたし、この道を知ってるよ!」


 そして二人は暗い森から出ることができました


 ポゥさんはユアちゃんをおんぶしながら村まで歩き、無事ぶじユアちゃんをおうちまでおくとど


「この野菜をくださーい!」


 ユアちゃんのうちで野菜を買い、ママンに頼まれたおつかいもちゃんと済ませました


「ありがとう、ポゥさん! ポゥさんのおかげでおうちに帰ってこれたわ! ……でもリュックに入っていたどんぐりがなくなっちゃったね」


「ふっふーん! 大丈夫! どんぐりがなくなるより、ユアちゃんが食べられちゃう方が嫌だからね! ボクたち、迷子ともだちだろ?」


「ポゥさん…… うん! あたしたち、迷子ともだち!」


「じゃあママンが待ってるから、ボクはおうちに帰るね! ユアちゃん、今度は遊びに来るから、一緒に遊ぼうね!」


「うん、あたしも遊びたい! またね、ポゥさん!」


 そして、ポゥさんは走って家に帰り、買ってきた野菜をママンにわたしました


「おかえり、ポゥ! わぁぁ…… これはおいしそうな野菜ね! おつかいをしてくれてありがとう、助かったわぁ」


 ママンに頭をでてもらったポゥさんは、おつかいを頑張って良かった、とうれしくなりました


 そしてママンはおつかいをしてくれたポゥさんのために、おいしいごはんをいっぱい作ってくれました


「きょうのばんごはんは ポゥがおつかいしてくれた野菜がたっぷり入ったシチューよ」


「おぉ! おつかいしてきてくれたのか、えらいな、ポゥ!」


 パパンにもおつかいに行ったことをめられて、ポゥさんはニコニコ


「ふっふーん! いただきまーす!」


 今日は迷子になったり怖いイヌに食べられそうになって、ママンへのおみやげにといっばい拾ったどんぐりもなくなってしまったりと、とても大変たいへんな一日でした


「ふふん! 今日のごはん、すっごくおいしいよ、ママン!」


 でも、それよりもユアちゃんという大切なともだちができたことが嬉しくて、ポゥさんはしあわせな気持きもちで、ママンの作ってくれたおいしいごはんをおなかいっぱい食べました

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