第4話 ある青年の思い出 肆

 あの正月の出来事から伯父の家に行くと、いつもフィーナや向日葵が私のまわりに居てくれた。

 

 しかしそんな中でも、私に対してあからさまに悪意を向けてくる者もいて……伯父が私とフィーナの縁談を、正式に断った事も、それによって伯父と祖父との関係がさらに悪化した事も知った……。母は、そんな祖父を止めようと、遅くに仕事から帰った夜にさえ祖父に対して手紙を書いていたりもした。

 

 ある日、私は母に一度だけ聞いてしまった事がある……。

 

「お母さん、何故おじちゃんは……」

 

 ――伯父さんをイジメるの? 欲深く本家の利権を求めるの? どうしたら満足なの?……

 どう聞いても母が辛いだけだろうに、それでも口に出さずにはいられなくて……。 でも、すぐ口出すべきじゃなかったと後悔した。

 

みなと……おじいさまとても貧しい家で、生まれ、そして育ったの……」

 

みなと位の歳には、働いてお金を手にしてやっと立派人間になれたと、いつもおじいさま言っていた」

 

「でも……きっと……大切にすべきものは別にあった……」

 

 そう言うと母は僕を抱き寄せ――。

 

「貴方はきっと大切なものをみつけられる」

 

「貴方は白銀の血が濃いし、何より……お父さんの子だもの」

 そう言って母少し笑った。私に……そして私に宿る父に向かって。


 つづく

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