C-1 蒼の友達、メイちゃん

田舎から出てきた私に、この高校で初めて友達になってくれたのは蒼ちゃんだった。


乳でっか!


女の私でも驚いた。

やっぱり都会の子は発育が違うわ……と感心した。


制服のブラウスが逆にいやらしい。

いや、ジャージもいやらしい。

Tシャツもいやらしい。

ワンピースもいやらしい。


服がいやらしいんじゃない、蒼ちゃんが着ると服がいやらしくなるのだ。


だが、そんなこと、冗談でも蒼ちゃんには言えない。

胸の大きさなんて自分で決められないんだから、蒼ちゃん本人は本当は巨乳なんて嫌なのかもしれない。


周りの男子の視線が嫌だとか、通学の電車で痴漢に遭ったとか、あるかもしれない。

女の子ってだけで危ない目に遭うのに、ましてあんな……あんな人の心を狂わすようなおっぱいをしていたら、大変なことになりそうだ。


その心配を、蒼ちゃんに話すと、


「行き帰りはお兄ちゃんと一緒だから、大丈夫」


と言う。

そして初めてそのお兄ちゃんを見て、


カッコよ!

何この、美少女美男兄妹!


と思った。


北斗先輩はあんまりカッコよくて、恋愛対象にならなかった。

毎回会う度に、「北斗先輩は今日もカッコいいし、どの角度でもカッコいいし、カッコよくない場面がないな」と思っていたが、ある日ふと、北斗先輩とよく一緒にいる先輩がいることに気づいた。


蒼ちゃんに聞くと、その人は遼馬先輩といい、北斗先輩と幼馴染だという。


ふーん……


遼馬先輩はあまりに普通すぎて、何も印象に残ってない。

優しい人というのは間違いなさそうだけど。




ある日、北斗先輩と遼馬先輩が二人でいるところを見かけた。

蒼ちゃんには大抵冷たい北斗先輩だが、遼馬先輩にはめちゃくちゃ笑顔だった。

北斗先輩が遼馬先輩にやたらと近くて、なんとなく遼馬先輩が距離をとろうとしている。


え? BL?

生BLまであるのか都会は。



都会の刺激にまだ慣れていない私に、ある日、蒼ちゃんが言った。


「あたし、遼馬先輩と付き合うことにしたの」


ああ……遼馬先輩ね。

今でもどんな人か印象ないけど。

蒼ちゃんならもっとたくさん選択肢があると思うけど、好きな人と付き合えたら幸せだよね、おめでとう。

そう思った。


それにしても、あのおっぱいが手に入るって、遼馬先輩はどんな気持ちなんだろう。

優越感とかあるんだろうか。

あと、北斗先輩がもし本当に遼馬先輩が好きだったらどうするんだろ。

でもいくら仲良くでも、それ以上は簡単じゃないよね……。



と、思っていたある日、見てしまった。

北斗先輩と遼馬先輩がキスしているところを。


え? 学校って、キスしていいところなの?

さすが都会の学校、寛容だな。


って、長くない?

キス長くない?


遼馬先輩も、前はなんかノンケぶってましたけど、今は結構その気じゃん、ってかお前、蒼と付き合ってんじゃねーのか!


と、思っていたら、蒼ちゃんがこちらに近づいてきた。

まずい、このままじゃ、蒼ちゃんの彼氏が蒼ちゃんのお兄ちゃんにNTRてるのを目撃してしまう!

寝てないけど、高校生レベルならこれはNTRと同等だ!



「あ、蒼ちゃん、ちょ、ちょっと飲み物買いに行かない?」


我ながら誤魔化すのが下手だ。


「飲み物なら、良かったらコレ。人気で売り切れそうだったからメイちゃんの分も買ってきたよ」


蒼ぃぃ……ええ子やぁぁ……


そんな蒼ちゃんを裏切るなんて!

許すまじ遼馬!!



「ああ! お兄ちゃん! また遼馬君とキスしてる!」


……また?


蒼ちゃんは北斗先輩に駆け寄り、遼馬(もはや呼び捨て)から引き離そうとしている。


……公認? 公認のNTR?


都会の人間関係って、複雑だなぁ……。

蒼ちゃんが買ってきた練乳いちご味のドリンクは、やたら甘かった。

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