弐拾漆ワ『公衆電話』

  社内でオカルト好きの怪談師として

  有名な電車の運転士、輪通わづつはとある日の

  休憩中、仮眠室でいつも通り後輩達に

  怪談を話していると2年下の後輩である

  川崎かわさきが輪通に問い掛ける。


川崎「本当にホラー好きですよね。何きっかけなんですか?」


輪通「それはだな……」


  輪通は少し照れながら語り始めた。

  遡ること22年前。輪通が9歳の時、家の

  隣にレベルスというアメリカ人の少年

  の家族が引っ越して来た。

  ぎこちなく日本語を話す彼だけど、

  持ち前の人当たりの良さですぐに輪通

  と友達になり、二人はお互いの家を

  行き来きするまで仲良くなった。

  レベルスが日本に住み始めて2ヶ月

  経ったある日、


レベルス「君におすすめの本があるんだ!貸してあげたいけど英語じゃ分からないよね?」


輪通「うん、ごめん。まだ読めない😞」


レベルス「だったら、図書館に行こうよ!日本語で書いてるのがあるかも知れないよ」


  善は急げと言わんばかりに図書館へ

  行くと、レベルスの言う通り日本語に

  翻訳された本が見つかった。

  本の内容を簡単に説明すると––––。


『アメリカの◯◯州に悪魔の公衆電話が存在する。その公衆電話はBOXタイプで夜遅くに使用すると突然受話器が燃えだし耳が焼けてしまうらしい。それだけじゃなく悪魔に取り憑かれ外に出れなくなってしまうという』


  ホラー小説だ。

  レベルスはアメリカでは有名な話

  だから知って欲しくておすすめした

  らしい。

  それまで宇宙の話をよく読んでいた

  輪通は、初めて読むホラーに衝撃を

  受けた。それからだ、オカルトや

  都市伝説に興味が湧きハマった。


  輪通が怪談をよく語るきっかけに

  なったのは自身がホラー体験を

  したからだと言い、誰も頼んでも

  いないのにとっておきの話をしてやると

  再び語り始める。


  中学生の頃、電車で学校に通っていた

  ある日の夕方、家に着く時間が遅く

  なるからと、駅のホームに設置して

  ある公衆電話で家にいる母親に電話を

  掛けると雑音と共に……。


『早く……帰って……キて。早ク……帰っテ……来て』


  途切れで、途切れで気味が悪い。

  どこか変だ。女の人の声だけど、母親の

  声じゃない。

  恐怖を感じ、輪通は一度受話器を

  切ってしまった。

  再度家に電話を掛ける……。


輪通母「––––はい。遅くなる?うん。わかった。すぐ晩御飯だから寄り道しちゃダメよ」

 

  そう言って母親は電話を切った。


輪通「いつもの母さんだ」


  翌朝一緒に登校するレベルスに話す

  と「怖いね」と言い信じてくれたが、

  母さんはその日、家には自分一人

  だったと言って信じて貰えなかったの

  である。

  あれは誰だ?

  解明しないまま大人になったので、

  冗談混じりに今度休みの日に検証して

  みないかと後輩に誘うと案の定

  断られたのだった。


  終

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