六章 ベティーからの告白
ローズからの告白を聞いたミラは翌日、ずっと王女の正体を探っていたベティーへと教えに雑貨屋へと向かった。
「ベティー!」
「あら、ミラ。こんな朝早くから如何したの?」
駆け込む勢いで扉を開け放ち入って来た彼女へとベティーが不思議そうに首をかしげ尋ねる。
「あのね、ついに王女様の正体がわかったの!」
「え?」
勢いよく話すミラの言葉に彼女が目を丸めた。
「それがね、あのね。驚かないで聞いて欲しいのだけれど、なんと、あのローズ様が王女様だったのよ!」
「あ、うん。そ、そうなんだ……」
食らいついてくるかと思われたベティーだが歯切れの悪い言葉を零す。
「驚かないの?」
「え? 勿論驚いているわよ。うん」
不思議そうにミラは尋ねる。それに彼女が引きつった笑みを浮かべて答えた。
「如何したのよ。あんなに王女の正体を確かめるんだって息巻いていたのに。何だか変よ」
「……ミラ、あのね。素直に告白するわ」
彼女の言葉にベティーが真面目な顔をして口を開く。
「あのね、実はずっと前からローズ様が王女様だって私知っていたのよ」
「え?」
彼女の告白にミラは驚いて目を丸めると変な声をあげて固まった。
「え、ええっ!? どういう事よ」
「王女様の誕生日プレゼントを王宮に献上に行った時に色々とあって知ってしまってね。ローズ様からミラには言わないようにって口止めされていたからずっと黙っていたのよ」
納得のいかない彼女の質問にベティーが答える。
「でも、ミラもローズ様の正体を知ったんだったらもう黙っておく必要はないかなって思って」
「ずっと前から知っていただなんて……そんな素振り全然」
「そうかしら、結構冷や冷やしていたのよ」
彼女の話にミラは考える。それにベティーが答えた。
「そう言われてみれば王宮観覧の時何だか様子がおかしかったような気もしなくもないわね」
「もういつバレるんじゃないかって思っていたんだからね。あ~。でもこれでミラに色々と話せるわね」
記憶を遡り考えるミラへと彼女がにこりと笑う。
「ご機嫌よ。あら、ミラやっぱりここに来ていたのね」
「お、王女様!」
そこに話題に上っているローズが入って来るとベティーが驚いて声をあげた。
「ベティー、わたしと貴女はただの友達なんだから、王女様って呼ばないでって言っておいたでしょ」
「あ、あら。ごめんなさいね。これからは気を付けるわ」
「ローズ様如何してここへ?」
むっとした顔で話す王女へと彼女が謝る。ローズの姿を見てミラは尋ねた。
「わたしが王女だって知ったら絶対ここに来るだろうと思ってね。それで二人に話をするために来たの」
「「?」」
王女の言葉に二人は不思議そうに疑問符を浮かべる。
「二人はわたしの正体を知ってしまったけれど、街の人達には内緒なの。だから絶対にわたしが王女だって事誰にも言わないでおいて頂戴。それから、二人は不自然に思われないように今まで通り普通に接して頂戴ね。わたしたちお友達だもの」
「えぇ、勿論よ。こんな重大な秘密誰にも言えやしないわ」
「そうよ。私達は絶対に誰にも言わないから安心して」
ローズの言葉に答えるミラに続けてベティーも頷く。
「ふふっ。二人ならそう言ってくれると思っていたわ。それよりミラ、お店がまだ開かないってお客さん達が困っていたわよ」
「あ、いけない。ベティーに話さなきゃって思ってて、オープンの時間忘れてた。それじゃあ、私はこれで」
王女の言葉に彼女は慌てて踵を返す。
「えぇ。またお手伝いに行くからね」
「わたしもパンを買いに行くわ」
お店を出て行くミラへと二人が声をかけた。
「まさかベティーがローズ様の正体を知っていただなんて。今まで黙っていたなんてね。でも、納得だわ。これは街中の人が知ったら凄い騒ぎになるだろうからね」
思わぬベティーの告白に彼女は納得して小さく独り言を零す。
こうしてローズが王女と分かってからも今までと変わらぬ付き合いの始まりを告げたのであった。
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