プロローグ
それは春になったばかりのある日の出来事だった。
「え……今何て?」
「だから、お父さんとお母さんはこの国を出て開拓の地ウィンシュロットの町に行くことになったんだ」
大事な話があると言われて椅子に座らされていたミラは目を見開き尋ねる。それにマックスが腕を組み真剣な顔で話した。
「昔から辺境の地でパン屋をやりたいと思っていたんだ」
「それで、お父さんだけだと色々と大変だろうから、私も一緒についていくことになったの」
「そんな、唐突な」
両親の言葉に彼女は驚愕の表情で呟く。
「町の開拓に協力してくれる職人を募集していてな。それで名乗り出たんだ」
「すでに国からの使者として正式にメンバーとしての登録も済ませてあるわ」
「そんなの私は絶対に認めないからね。それに、いきなり店長就任だなんてそんなの無理よ」
マックスとミランダの言葉にミラは唇を尖らせ怒る。
「ミラも連れていってあげたかったが辺境の地で生活していけれるかどうかも分からない」
「それにこのお店を潰してしまったらもしうまくいかなかった場合、帰ってくる場所が無くなってしまうでしょう」
「そんな勝手な!」
両親の話に憤りながら叫ぶ。
「すでに今日の昼には旅立たないといけないんだ。ミラを残していくのは少し、いやかなり心配だがお店を畳むわけにはいかないからな」
「私達がいなくてもミラなら大丈夫よ。しっかりと教育してきたつもりだからね。一人でやっていけれるわ」
「勝手な事ばっかり言って。私の気持ちは無視なの?」
言いくるめようとするマックスとミランダにミラは激怒し言い放つ。
「だがなミラ、お父さんがいないからと言って変な男をこの店に連れ込んだりしたら駄目だからな」
「はいはい。貴方は少し黙っていて。そう言う訳だからもう決まってしまった事なの。貴女に何の相談もなしに決めた事は悪いとは思っているわ。でもマックスの夢を叶えてあげたいと思ったのよ。それにミラはもう一人でも大丈夫な歳なんだから何時までも私達に頼っていてはいけないわ。だから、ね」
「もう、身勝手な親なんだから!!」
両親の言葉にライゼン通り中に彼女の叫び声が木霊した。
こうしていきなり店長としてこのお店を経営していかないと行けなくなったのである。
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