エピローグ

 真冬の冷たい風が吹き抜けるライゼン通り。今日も今日とてパン屋さんは大繁盛。


「ミラさん。この前は変な噂になってしまったみたいで申し訳ない。こちらお詫びの品です」


「あら、気にしなくていいのに。でも有り難う」


グラウィスがやって来ると申し訳なさそうな顔で菓子箱を差し出す。それを受け取りながらミラは笑顔でお礼を述べた。


「こんにちは。ミラ、貴女と作ったチーズケーキ蒸しパン凄く大人気なのよ。それでね、今度はチーズケーキ菓子パンなんてあったらいいんじゃないかと思って。貴女も手伝ってもらうわよ」


「え、また!? もう、アミーさんてば相変わらずなんだから」


アミーが来店してくるなりそう言って彼女の手を取る。腕をひかれながらミラは盛大に溜息を吐き出した。


「ちょっと待った! ミラとチーズケーキ菓子パンを作るのはまた今度にしてくれ。今日はオレの新作料理を食べてもらう日なんだ」


「あれ、そんな約束していたかしら?」


シュトルクがやって来るとアミーへと言ってミラの空いている方の手を取る。


その言葉に彼女は約束していただろうかと頭を捻った。


「失礼。ミラちゃん。今度は昼食用にサンドウィッチの配達を頼みたいのだが、今ご両親は忙しいかな」


「えっと、お父さんなら厨房にいま――きゃあ」


アルフレートが来店して来て尋ねるので答えていたミラだったが誰かに押されてよろける。


しかしアミーとシュトルクがしっかり支えてくれていたため倒れる事はなかった。


「あら、アルフレートさんいらっしゃいませ。おほほほっ。お話ならこの私が聞きますわ」


「くぅ! ミランダ……話なら俺が聞くからお前は向こうに行っていろ」


彼女を押しのけやって来たミランダは腰をくねらせながら話す。その姿にマックスが悔し気に歯ぎしりした後妻を背後へと退け前へと出て行った。


「失礼します。お嬢さん。今日は配達の件でお話に来ました。いや、悪い話ではないので安心ください。実は、貴女がご負担でなければもう少し商品を増やして配達して頂きたいのです」


「それって、今配達しているパン以外の商品も一緒に配達するって事?」


ヴェンがやって来るとそう話す。その言葉にミラは尋ねた。


「はい、そうです。実は以前頼んだお酒に合うパンが直ぐに完売になってしまいましてね。それで代わりの商品も増やしたいと思いまして」


「畏まりました。またナッツ系ですか?」


彼の言葉に彼女は問いかける。


「そうですね。今度はナッツではなくお惣菜系がいいのですが」


「それならベーコンとポテトのパンなんてどうでしょう」


ヴェンの話を聞いていたミラは提案した。


「それならお酒にも合いそうですし、悪くありませんね。お願いします」


「分かりました」


彼の了承を得たのを確認すると彼女は頷く。


「さぁ、ミラ。行くわよ」


「よし、ミラ行くぞ」


「ちょ、ちょっと待って~っ」


話が終わったのを確認したアミーとシュトルクに腕を引かれてお店を出て行く。


こうして新しいお客達との賑やかな時間は過ぎ去っていくのであった。


さて、来年はどんな出会いが待っているのだろうか。


======

あとがき

 ここまでご拝読下さり誠に有難う御座いました。今回は新キャラオンパレードでした。美味しいパンが沢山出てきて作者もお腹を空かせながら書いておりました(笑)ミラを巡る男たちの戦いが繰り広げられましたがマルクスはここで辞退となりルッツとグラウィスの二人の戦いとなるのか?それとも?彼女を取り巻く恋の行方も今後追いかけて頂けると幸いです。女の子少ないのでもう少し増やしたい。また次回ライゼン通りのパン屋さん3でお会いしましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る