プロローグ
朝の陽ざしが差し込む店内でミラは大きく息を吸い込むと吐き出す。
「さあ、パンが焼けたぞ」
「ミラ、並べるのを手伝ってちょうだい」
今から数時間後には開店して朝の忙しい時間を迎えるのだと思っていると両親に声をかけられる。
「はいはい。分かっているわよ。あぁ、私ってなんでこんなにつまらない人生を送っているのかしら。もうこのままパン屋の娘で一生を終えてしまうのかしら」
「あら、何言っているの。パン屋の娘として生まれてきたんだから、パン屋を手伝うって言っていたじゃないの」
愁いを帯びた瞳で語る彼女へとミランダがおかしそうに話す。
「それはうんと小さい頃の話でしょ」
「そうでもないだろう。「パン屋を引き継ぐんだ」っていってパン作りを勉強していた時期もあっただろう」
唇を尖らせ抗議するミラへとマックスも語った。
「それは私が14の時でしょ。今はうら若き乙女よ。あ~あ。私はこのまま恋愛も友達と遊ぶこともなく一生パン屋の人生で終わってしまうのかしら」
「ミラ、結婚なんてお父さん許さないぞ!」
「もう、貴方もミラも変なこと言ってないで早く手を動かしなさいな」
娘の言葉にムキになる父親。その様子に母親が盛大に溜息を吐き出しながら諫める。
ちょっと変化が欲しいと思い始めた年頃の娘の一日はこうしてまた始まりを迎えるのであった。
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