第35話 真実の代償
エミリー、トム、マイケルの三人は指定された場所に向かうために準備を整えた。彼らの心には不安と決意が交錯していた。リチャードの幽霊が静かに見守る中、彼らは新たな真実を暴くために進む覚悟を決めた。
指定された場所は、ニューヨーク市内の廃工場だった。薄暗い空間に足を踏み入れると、冷たい空気が肌に触れ、不安がさらに募った。三人は互いに頷き合いながら、奥へと進んでいった。
突然、薄暗い空間の奥から一人の男が姿を現した。彼はインフィニティ・コーポレーションの幹部、ジェームズ・ベネットだった。彼の顔には冷酷な笑みが浮かんでいた。
「ようこそ、エミリー。君たちがここに来ることを待っていたよ」とベネットは言った。
「何が目的なの?」エミリーは警戒しながら尋ねた。
ベネットは一歩前に進み、「君たちが公表した証拠は、我々にとって大きな痛手だった。しかし、それは一部に過ぎない。我々にはまだ隠された計画がある。そして、その計画を知ることができるのは君たちだけだ」
「どういうことだ?」トムが鋭く問いかけた。
「我々は単なる不正行為だけでなく、政府や多国籍企業との巨大な陰謀に関与している。その証拠を全て公表される前に、君たちがその手に入れることができるかどうかだ」とベネットは答えた。
「それが本当なら、全てを公表してやる。リチャードのためにも」とエミリーは決意を込めて言った。
「だが、その前に、君たちにはもう一つの試練が待っている」とベネットは冷たく笑い、周囲に指を鳴らした。
その瞬間、周囲の暗がりから数人の男たちが現れ、エミリーたちを取り囲んだ。激しい戦闘が始まった。リチャードの幽霊は再び力を発揮し、エミリーたちを守るために男たちの動きを妨げた。
エミリー、トム、マイケルは全力で戦いながら、廃工場の奥へと進んだ。彼らの目的は、ベネットが語った証拠を手に入れ、全ての真実を暴くことだった。
激しい戦闘の末、エミリーたちはついにベネットを追い詰めた。彼は一枚のUSBドライブを手にしていた。「これが全ての証拠だ。だが、お前たちに渡すわけにはいかない」とベネットは冷たく言った。
「その証拠を渡せ!真実を公表するためだ」とエミリーは叫んだ。
「リチャードの無念を晴らすために!」トムが力強く付け加えた。
ベネットは一瞬ためらったが、その隙を突いてマイケルがUSBドライブを奪い取った。ベネットは驚きの表情を浮かべたが、すぐに冷笑に変わった。「いいだろう。だが、お前たちがこの証拠を公表できるかどうかは別の問題だ」
その瞬間、廃工場の周囲が爆発音と共に崩れ始めた。ベネットは自らを犠牲にして工場を破壊し、証拠を隠滅しようとしていたのだ。
「急げ!ここから脱出するんだ!」エミリーは叫び、トムとマイケルと共に出口へと急いだ。リチャードの幽霊は彼らを守り続け、崩れ落ちる瓦礫から彼らを救おうとした。
激しい爆発と瓦礫の中、三人はなんとか廃工場から脱出することに成功した。息を切らしながら地面に倒れ込んだ彼らは、手にしたUSBドライブを握りしめた。
「これで全ての真実を公表できる」とエミリーは息を整えながら言った。
リチャードの幽霊はエミリーの前に現れ、静かに微笑んだ。「ありがとう、エミリー。君たちのおかげで、全てが明らかになる」
「リチャード、私たちはあなたのために戦ったわ。これからも真実を追い求め続ける」とエミリーは涙を流しながら答えた。
リチャードは満足そうに頷き、「君たちがいれば、私は安心して成仏できる。ありがとう」と言い残し、その姿は次第に薄れていった。
その瞬間、エミリーの携帯電話が鳴り響いた。彼女は画面を見て驚愕した。発信者は「非通知」だが、その内容は驚くべきものだった。
「エミリー、ケイトは今、我々の手の中にいる。証拠を公表することは許されない。もし命が惜しければ、USBドライブを持って指定の場所に来い」という音声メッセージが再生された。
エミリーは驚愕と怒りに駆られながら、トムとマイケルにメッセージを見せた。「彼らがケイトを…」
「罠かもしれない。でも、無視するわけにはいかない」とマイケルが冷静に答えた。
「リチャードが守ってくれる。私たちも行くべきだ」とトムが言った。
エミリーは決意を固め、「行くわ。ケイトを救うために」と答えた。
指定の場所に到着すると、エミリーたちは再び緊迫した状況に置かれた。廃ビルの中に入ると、そこにはケイトが縛られていた。彼女は顔に恐怖の表情を浮かべていた。
「ケイト!」エミリーは駆け寄ろうとしたが、その前に数人の男たちが立ちはだかった。リーダーは冷酷な笑みを浮かべて言った。「USBドライブを渡せば、彼女の命は助けてやる」
エミリーはためらいながらも、ケイトの命を守るためにUSBドライブを差し出した。その瞬間、男たちは冷笑しながらUSBドライブを奪い取り、ケイトを解放した。
「さて、君たちはこれで終わりだ」とリーダーは冷たく言い放ち、銃を構えた。その瞬間、リチャードの幽霊が再び現れ、男たちの動きを妨げようとしたが、力が及ばなかった。
銃声が響き渡り、エミリーたちは倒れ込んだ。彼らの目の前で、全てが暗転していく。リチャードの幽霊は涙を流しながら、「エミリー、すまない…」と呟いた。
エミリーたちの戦いは無残にも終わりを迎えた。インフィニティ・コーポレーションの陰謀は未だ明らかにされず、闇の中に消え去った。
だが、それは終わりではなかった。エミリー、トム、マイケルの魂は怒りと無念に満ちたまま、この世に留まることとなった。彼らはリチャードのような優しい幽霊ではなく、復讐に燃える悪霊となり、インフィニティ・コーポレーションの関係者を一人ずつ呪い殺していった。
エミリーの姿が最初に現れたのは、ベネットの豪華な邸宅だった。彼はその夜、奇妙な気配を感じて目を覚ました。暗闇の中に浮かび上がるエミリーの怒りに満ちた顔を見た瞬間、彼は恐怖に凍りついた。
「お前の罪は許されない」とエミリーの声が、冷たい風のようにベネットの耳元で囁いた。彼は身をすくめ、後ずさりしながら部屋の隅に追い詰められた。
「やめろ…俺に近づくな…」ベネットは恐怖に震えながら叫んだが、エミリーの姿はますます鮮明になり、その怒りの表情が彼の心に深く刻まれた。
エミリーの霊が手を伸ばすと、ベネットの体は氷のように冷たくなり、彼の喉からは息が詰まるような声が漏れた。「お前は真実を隠し、多くの人々を苦しめた。その報いを受ける時が来たのだ」
ベネットの視界が暗くなる中、彼の心臓は激しく鼓動し、やがて止まった。彼は冷たい床に崩れ落ち、そのまま息絶えた。
エミリーの霊は静かにその場を去り、次の標的へと向かった。彼女の怒りと復讐の念は止まることを知らず、インフィニティ・コーポレーションの関係者たちを一人ずつ追い詰めていった。
トムの霊もまた、自らの復讐を果たすために動き始めた。彼の最初の標的は、インフィニティ・コーポレーションの会計責任者だった。彼は会社の不正取引を隠蔽し、巨額の資金を横領していた。
その夜、トムの霊が会計責任者のオフィスに現れた。責任者は突然の寒気を感じ、背筋が凍るような恐怖に襲われた。
「お前が行った不正の数々、全て見ていたぞ」とトムの霊が冷たく囁いた。
「誰だ!誰がそこにいるんだ!」責任者は叫び、周囲を見回したが、トムの姿は見えなかった。彼の恐怖が増す中、トムの霊が姿を現し、その手を伸ばした。
責任者の体は動かなくなり、彼の目には絶望の色が浮かんだ。「お前の罪は重い。今、報いを受けるがいい」とトムの霊が冷たく言い放ち、責任者の命をその手で奪った。
マイケルの霊もまた、自らの復讐を果たすために動き出した。彼の標的は、インフィニティ・コーポレーションの法務責任者だった。彼は法律を悪用し、不正行為を隠蔽するために数多くの手段を講じていた。
その夜、法務責任者の家に現れたマイケルの霊は、彼の悪事をすべて暴く覚悟で現れた。法務責任者はベッドから起き上がり、暗闇の中で奇妙な気配を感じ取った。
「誰かいるのか?」彼は声を上げたが、その声は震えていた。
「お前が隠してきた真実を、今こそ暴く時が来た」とマイケルの霊が低い声で囁いた。
法務責任者の目の前にマイケルの姿が現れ、その手が冷たく彼の肩に触れた瞬間、彼の心臓は恐怖で凍りついた。「お前の罪は許されない。今、報いを受けるのだ」とマイケルが冷たく言い放ち、その命を奪った。
インフィニティ・コーポレーションの関係者たちは次々と恐怖の中で命を落とし、会社の不正行為は徐々に暴かれていった。エミリー、トム、マイケルの霊は、それぞれの復讐を果たしながら、インフィニティ・コーポレーションを崩壊させていった。
しかし、その代償として、彼らはもはや成仏することができなくなった。彼らの魂は怒りと無念に囚われ、永遠にこの世を彷徨い続ける悪霊となったのだった。
リチャードの幽霊は、彼らの悲惨な運命を見守りながらも、彼らの行いがもたらした真実の暴露に一抹の満足感を覚えた。しかし、彼の心には深い悲しみが残った。
「彼らがこうなることは望んでいなかった。だが、真実が暴かれたことに意味がある」とリチャードは呟いた。
エミリー、トム、マイケルの霊は、復讐を果たした後もなお、インフィニティ・コーポレーションの残党を追い続け、悪行を行った者たちを一人ずつ裁いていった。彼らの姿は夜の闇に溶け込み、決して見逃されることはなかった。
そして、その存在が語り継がれることとなった。インフィニティ・コーポレーションの関係者たちは、エミリーたちの霊が現れることを恐れ、次々と命を絶つ者も現れた。彼らの名は恐怖と共に語り継がれ、決して忘れ去られることはなかった。
エミリーたちの復讐劇は、インフィニティ・コーポレーションの完全なる崩壊をもたらし、その不正行為を完全に暴露することとなった。しかし、その代償として、彼らは永遠にこの世を彷徨う悪霊となり、真実を追い求め続けることとなった。
リチャードの霊は、彼らの姿を見守りながら、静かに涙を流した。「彼らの魂がいつか救われる日が来ることを願っている」と彼は祈り続けた。
【完結】すごオチ〜日曜日に始まり、土曜日に完結する。全7話の短編シリーズです。よろしくお願いします。 湊 マチ @minatomachi
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