【完結】すごオチ〜日曜日に始まり、土曜日に完結する。全7話の短編シリーズです。よろしくお願いします。

第25話 真実の迷宮

ニューヨークの朝は冷たい風が吹き抜け、街の喧騒が一日の始まりを告げていた。ジュリアは早朝からエミリーと共にリンダの居場所を探すための手がかりを追っていた。彼女たちはリンダが最後に目撃された場所、彼女が働いていたカフェへと向かった。

カフェは静かな住宅街の一角にあり、モーニングラッシュが始まる前の穏やかな雰囲気が漂っていた。ジュリアはカフェのドアを開け、店内に入ると、カウンターの奥にいる若い女性に声をかけた。

「すみません、リンダ・ブラウンさんを探しているんですが、ここで働いていると聞きました」

女性は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、「リンダは少し前にここを辞めました。何か伝言でも？」と尋ねた。

「彼女に急ぎの用事があって。どこに行ったのか知っていますか？」ジュリアは焦る気持ちを抑えながら尋ねた。

女性は少し考えた後、「確か、彼女はボストンに行くと言っていたような…。詳しくはわかりませんが」と答えた。

ジュリアは感謝の言葉を述べ、カフェを後にした。ボストンという手がかりを得たことで、彼女は次の行動を決めた。

「エミリー、ボストンに行く必要があるわ。リンダを見つけるために」とジュリアは決意を固めた。

エミリーも覚悟を決め、「はい、ジュリアさん。私も一緒に行きます」と答えた。

二人はすぐにボストンへの旅支度を整え、最初の列車に乗り込んだ。車窓から見える風景が次第に変わっていく中、ジュリアはジョンの記憶の断片を思い返していた。USBに隠された証拠、それを見つけることで全てが明らかになるはずだ。

ボストンに到着すると、ジュリアとエミリーはリンダがよく訪れていたという図書館へ向かった。図書館は静寂に包まれた大きな建物で、歴史を感じさせる古い書籍が所狭しと並んでいた。

ジュリアは図書館の司書にリンダのことを尋ねた。「すみません、リンダ・ブラウンという女性がここに通っていたと聞いたのですが」

司書はしばらく考えた後、「ああ、リンダさん。彼女はよくここで勉強していましたね。でも、最近は見かけません」と答えた。

ジュリアは感謝の意を示し、図書館の中を探し始めた。リンダがどこかに手がかりを残しているかもしれないと期待し、彼女がよく座っていたという席に向かった。

その席には、古い本が積み上げられていた。ジュリアはその本の一つ一つを注意深く調べ、リンダが何かメッセージを残していないかを探した。その中の一冊に、リンダの手書きのメモが挟まれているのを見つけた。

「ジュリア、これを見て」エミリーが興奮した声で呼びかけた。

ジュリアはメモを手に取り、そこに書かれた文字を読み上げた。「USBは安全な場所に隠した。見つけるためのヒントは、私たちが最初に出会った場所にある。リンダ」

ジュリアはそのメモを握りしめ、「リンダの言っていた最初に出会った場所…それはニューヨークの大学図書館ね」と呟いた。

「急いでニューヨークに戻りましょう。兄の記憶と全ての真実がそこにあるはずです」とエミリーは決意を固めた。

二人は急いでボストンからニューヨークへの帰路についた。列車の中でジュリアは、リンダのメモに隠された意味を考え続けた。ジョンとリンダが最初に出会った場所、そしてそこに隠されたUSB。それがインフィニティ・コーポレーションの不正を暴く鍵である。

ニューヨークに戻った二人は、すぐに大学図書館へ向かった。図書館の広々としたホールに入ると、ジュリアはリンダが言っていた「最初に出会った場所」を探し始めた。彼女の直感が導くままに、ジョンとリンダが座っていたという席に向かう。

ジュリアはその席の近くの棚にある本を一冊一冊調べ始めた。その中の一冊、古びた百科事典を手に取ると、カバーの裏に小さなポケットがあるのを見つけた。そこに、リンダが隠したUSBがあった。

「見つけたわ、これが証拠よ」ジュリアは声を上げた。

エミリーも興奮して、「これで兄を救えるんですね！」と喜びの声を上げた。

ジュリアはUSBを持ち、エミリーと共に図書館を後にした。次のステップは、この証拠を安全に公表し、インフィニティ・コーポレーションの不正を暴くことだ。ジュリアの心には、ジョンを助けるための強い決意が燃え続けていた。

その夜、ジュリアは自宅でUSBの中身を確認しながら、次の行動を計画した。インフィニティ・コーポレーションの不正を暴くためには、信頼できるジャーナリストにこの情報を渡す必要がある。彼女は過去の記憶を頼りに、かつての同僚である調査ジャーナリスト、サム・ベネットに連絡を取ることにした。

サムは信頼できる友人であり、ジュリアがかつて企業で働いていた時の仲間だった。彼は今でも真実を追い求める情熱を持ち続けている。

「サム、久しぶり。助けて欲しいことがあるの」とジュリアは電話で彼に伝えた。

「ジュリア！元気だったか？もちろん、何でも言ってくれ」とサムは答えた。

ジュリアはジョンの記憶に関する話と、USBの証拠について簡単に説明し、サムに協力を求めた。サムはすぐに合流することを約束し、翌日、二人はニューヨークのカフェで会うことになった。

その翌日、カフェの一角でジュリアとサムは再会し、USBの中身を確認しながら今後の計画を練った。USBには、インフィニティ・コーポレーションが行っていた環境データの改ざん、不正な労働慣行、インサイダー取引など、数々の不正行為の詳細が記録されていた。

「これを公表すれば、彼らを追い詰めることができる。だが、慎重に進めなければならない」とサムは言った。

「ええ、ジョンを守るためにも、そしてこの真実を明らかにするためにも」とジュリアは決意を込めて答えた。

ジュリアとサムはこの情報を公表するための戦略を練り、信頼できるメディアに協力を求めることにした。ジュリアの心には、ジョンを救うための強い使命感が宿っていた。全ての真実が明らかになる日は近い。

その夜、ジュリアはエミリーと共にジョンの病室を訪れ、彼に向かって静かに話しかけた。「ジョン、私たちは真実を暴くための証拠を見つけたわ。あなたの記憶も、全て取り戻すことができるはず」

エミリーは兄の手を握りしめ、「兄さん、もうすぐ全てが終わるわ。必ず助け出してみせる」と涙を流しながら言った。ジョンは依然として昏睡状態だったが、その顔にはどこか安らぎが漂っているように見えた。

翌日、ジュリアとサムは信頼できるメディア関係者との会合をセッティングした。彼らはニューヨークの中心部にあるカフェで、調査報道を専門とするジャーナリストのケイト・マッカーシーと会うことになった。

「ケイト、これが全ての証拠よ」とジュリアはUSBを手渡しながら言った。「これには、インフィニティ・コーポレーションが行ってきた全ての不正が記録されている」

ケイトはUSBを手に取り、慎重に中身を確認し始めた。「これはすごい…もしこれが本当なら、彼らは完全に終わりだわ」と彼女は驚きの声を上げた。

「そう、だからこそ私たちは慎重に進めなければならない」とサムが付け加えた。「彼らは非常に強力で、私たちの動きを察知すれば何をするか分からない」

ケイトは深く頷き、「分かったわ。私たちのチームでこの証拠を検証し、公表の準備を進める。だが、その前にもう一度あなたたちの話を聞かせて」とジュリアとサムに向かって言った。

ジュリアはこれまでの経緯を詳細に説明し、ジョンが記憶を失った経緯と、その背後にあるインフィニティ・コーポレーションの陰謀を語った。ケイトは真剣に話を聞きながら、ノートにメモを取っていた。

「ジョンの記憶を取り戻すことができれば、彼が直接証言することも可能ね」とケイトが言った。

「そう、そのためには彼の記憶を完全に取り戻す必要がある。私たちはその方法を模索しているところよ」とジュリアが答えた。

ケイトはしばらく考え込んだ後、「まずはこの証拠を検証し、確実に公表できるよう準備するわ。あなたたちもジョンの記憶を取り戻すために全力を尽くして」と言った。

ジュリアとサムはケイトに感謝の意を示し、再びジョンの病院へと向かった。彼らはジョンの記憶を取り戻すための次のステップを考え始めた。

「ジュリア、次に何をすればいいの？」エミリーが不安そうに尋ねた。

「ジョンの記憶を取り戻すために、彼が最も強く記憶している場所や出来事に焦点を当てる必要がある。私たちはもう一度彼の記憶の中に入り込み、鍵となる断片を見つけるわ」とジュリアは答えた。

その夜、ジュリアは再びジョンの手を握り、深呼吸をして意識を集中させた。彼の記憶の中に入ると、彼がリンダと共に逃亡生活を送っていた時期の記憶が鮮明に蘇った。彼らは密かに隠れながらも、インフィニティ・コーポレーションの手先に追われ続けていた。

記憶の中でジュリアは、ジョンがリンダに向かって「これが最後のチャンスだ。私たちは真実を公表しなければならない」と言っている場面に出会った。

リンダは決意を込めて頷き、「私たちは必ずやり遂げるわ。ジョン、私たちの未来のために」と答えた。

次の瞬間、記憶の断片が激しく揺れ動き、ジュリアはジョンが激しい追跡の末に車の中で事故に遭う場面に再び戻った。彼の意識が途切れる瞬間、ジュリアは強い衝撃と共に現実に引き戻された。

「ジョンの記憶にはまだ多くの断片が隠されている。でも、その中に全ての真実があるはずよ」とジュリアはエミリーに伝えた。

エミリーはジュリアの手を握りしめ、「兄を助けるために、私も何かできることはないですか？」と尋ねた。

ジュリアは微笑み、「エミリー、あなたの存在がジョンにとって大きな支えよ。あなたがそばにいることで、彼も強くなれる」と答えた。

その翌日、ジュリアはサムと共にケイトのオフィスを訪れた。ケイトはUSBの中身を詳細に調査し、その内容が真実であることを確認していた。

「ジュリア、これで全ての準備が整ったわ。明日の朝、私たちはこの情報を公表する」とケイトは力強く言った。

ジュリアとサムは感謝の意を示し、全てが順調に進むことを祈りながら病院に戻った。彼らはジョンの記憶を取り戻すために、再び彼の記憶の中に入り込む準備を整えた。

「ジョン、私たちはもうすぐ全てを明らかにできる。あなたの記憶を取り戻すために、私は全力を尽くすわ」とジュリアは静かに語りかけた。

その夜、ジュリアは再びジョンの手を握り、深呼吸をして意識を集中させた。彼の記憶の中に入り込むと、今度はジョンが幼少期に戻っている場面に出会った。彼が家族と共に過ごした幸せな日々が広がっていた。

ジュリアはその温かい光景を見つめながら、ジョンの記憶の奥底に隠された真実を探し続けた。次の瞬間、彼の記憶の中で見えたのは、彼がリンダと初めて出会った大学図書館の一角だった。

ジョンとリンダはその場所で運命的な出会いを果たし、共に多くの時間を過ごしていた。その場所こそが、彼らの未来を決定づけた場所だった。

ジュリアはその記憶を辿りながら、ジョンとリンダが初めて会話を交わした瞬間に出会った。彼らの間に芽生えた絆が、全ての始まりだった。

「ジョン、あなたの記憶の中には多くの真実が隠されている。私はそれを見つけるために全力を尽くすわ」とジュリアは心の中で誓った。

その瞬間、ジュリアの心に一つの確信が生まれた。ジョンの記憶を完全に取り戻すためには、彼自身がその記憶を受け入れる準備ができていることが必要だ。そして、彼が再び意識を取り戻し、自分の記憶と向き合う勇気を持つことが重要だった。

ジュリアはエミリーと共に、ジョンが目覚めるためのサポートを続けながら、全ての真実を明らかにするための最後の準備を進めた。彼女たちはジョンの記憶を取り戻すために、全てを賭ける覚悟だった。

「ジョン、私たちはあなたを救い出す。そして、全ての真実を明らかにする。待ってて、必ず助け出してみせるから」とジュリアは静かに誓った。

ジュリアの前には、まだ多くの謎が広がっていた。しかし、彼女は決して諦めることなく、ジョンの記憶の全てを解き明かす覚悟を持っていた。