第6話 私のアイオル
「さて、採寸もおわったし、コマちゃんの元気が残っていれば、本を見に行こうかと思ったけれど……その服じゃ目立つわね。ドレスが届くまで、家でゆっくりしてね。」
正直、体力の限界が来ていた。いろんな人にあったし、馬車で移動したし、へとへとだ。
「結構疲れたので、休みたいです。」
「それならよかったわ。夕食ができたらエリが呼びにくると思うから、それまでお部屋で休んでいましょうか。お部屋の場所はもうわかる?」
「はい、1人で行けます。」
ゆっくりおやすみ〜というリオナ夫人の声を背に、階段を上がり、自分の部屋に入る。
驚いたことに、大きな本棚がもう作りつけてあった。
「本棚……早い……」
「男爵様は家具職人もお呼びしていたようです。おやすみの際、私がお邪魔でしたら出ていきますが、どうされますか?」
ずっと私の後ろに控えて、ついてきていたエリがそう言った。
「まあ、1人で休みたいかな。」
「わかりました。夫人がされましたように、アイオルを2回叩くと私が伺います。」
「あ、私それまだ持ってない……」
「それはいけませんね。夫人に伝えてきます。少々お待ちを。」
エリは、扉の音を立てることもなく静かに出ていった。表紙の光る本……『ネヴァーディング王国の歴史』を本棚の端に置いて、しばらくすると、リオナ夫人とエリが戻ってきた。
「ごめんね、コマちゃん。大事なことを忘れていたわね。はい、これがあなたのアイオルよ。」
「ありがとうございます。」
渡されたのは、転生前に使っていたのとほぼ全く同じスマホだった。
「使い方は大丈夫かしら?私がしたように、アイオルを持って手で2回叩くと、使用人に伝わるわ。」
「私が知ってるスマホと同じなら、使い方はわかります。」
「多分大体同じよ。わからないことがあったら、エリを呼んでね。じゃあ、少しの時間だけど、ゆっくりおやすみなさい。」
リオナ夫人とエリが出ていくと、コマはベッドに寝転がった。手には渡されたアイオルがある。画面を1回タップすると、植物の写真が背景のロック画面が現れた。画面下からスワイプすると、開いて、色々なアプリが入っている。
iPhoneとまるっきり一緒だ……
iPhoneの開発をしていた人も転生してきたのかな。
「オール、これを作ったのは誰?」
『はい。私はエリック・シャリンジャー創設の、電子機械部によって作られました。』
「オール、電子機械部って何?」
『はい、電子機械部は、王宮内にある部署の1つで、異世界からもたらされた技術を研究、開発する部署です。』
「やっぱり、王様が絡んでるんだ……」
なんとなくそんな気がしていた。アイオルという名前、貴族には支給されるということ。王様が所持を奨励しているということ。
これを考えてしまうと、もはや陰謀論者なので、あまり考えたくないが、一つの考えが頭を過ぎる。
みんなのデータを集めてる…?
データを集めたところでどうなるかまでは、コマにはわからなかったが、集めると何か利益がありそうなことぐらいはわかる。
アイオル、あまり使いたくないな……
コマはベッドサイドのサイドテーブルの上にアイオルを置くと、できるだけ遠くまで転がって、静かに目を閉じた。
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