時々シッポ⑭ 〜元保護犬

 我家の二代目はるお嬢様は、元保護犬です。某県の動物愛護施設から、ある保護団体さんが引き出した一頭です。

 譲渡前は、仮母と呼ぶ預かりボランティアさんの個人宅で、その家の愛犬達と暮らしていました。


 先代犬がいるときから、もしも次に犬を迎えることがあったら、保護犬の里親になろうと考えていました。


 自分がペットショップで犬を購入する姿を想像できないこと。元々、日本の由緒ある中型柴系雑種犬が好きなこと。

 犬達のために、何か出来ることがあれば良いなぁと思っていました。


 はるの存在は、里親募集のサイトで知りました。希望する条件で検索できるのは便利ですが、様々な保護団体が登録しており、信頼できる団体かどうかは注意して、よく確認する必要があります。


 先代犬が白毛のオスだったので、全く違うコが良いと思い、黒毛のメスで中型雑種犬(10kg前後)、落ち着いた成犬を探しました。私はもう仔犬から育てる気力も体力もないことと、次に迎えるコは先代犬の代わりではなく、比べることのないように、と考えたからです。


 定期的に譲渡会を開いている団体さんでしたが、日程のタイミングが合わず、個別にドッグカフェでお見合いしました。

 意外と小柄な印象、物怖じせずに頭を寄せてきて、大人しく撫でられていました。そのあと、近くの公園を軽くお散歩して、スタッフさんといろいろ話しました。

 何度かメールでやりとりし、数週間のトライアル(お試し期間。自宅で一緒に過ごしてみる)へと進みました。フードやクレートなど必要な物は用意してもらえて、トライアル中は、毎日メールで様子を知らせます。

 

 その後、正式譲渡となり、その日を誕生日に決めました。第二の犬生の始まりです。

 それまでの仮名をそのまま使う場合も多いですが、名前を「はる」と決めました。ウチに来た季節が春、新しい始まりの季節だったからです。女子なので、柔らかいイメージで、ひらがなにしました。


 犬を迎え入れる方法には、拾う(最近はあまりないと思いますが)、もらう、ペットショップやブリーダーから購入する、などがありますが、その中にひとつの選択肢として、「保護犬の里親になる」ということを加えて欲しいと思っています。


 仔犬でなければ懐かないのではないか。

 素性のわからない犬を迎えるのは不安。

 里親としての条件が厳しすぎる。……等々。


 保護犬の里親になることへの様々な意見があると思います。


 仔犬がどんな犬に育つのかわからないのに対して(育てる楽しみでもあるのですが)、成犬は身体の大きさも個性もわかっていて、イタズラもしないし、落ち着いて一緒に暮らすにはピッタリです。

 はると暮らし始めて、こんなに楽で良いのだろうかと思いました。手が掛からないし、ほとんど叱るようなこともありません。


 甘え上手なはるは、二代目ということもあり、ゆるゆる甘々に暮らす我家のお嬢様となりました。


 はるは最初からお散歩が上手で、人馴れしていて、撫でられるのが大好き。どんな事情で飼育放棄されたのかを知ることはできませんが、野犬ではなく、誰かに飼われていたことは確かなようです。


 野犬出身の場合は、まず人に馴れること、首輪やリードを付けて散歩を出来るようにするところからのスタートとなります。


 保護団体さんでは、保護犬と里親とのマッチングにとても気を使っています。

 簡単に無料タダで犬がもらえる、とは考えない方が良いです。

 譲渡後に再度、飼育放棄されたり、逃走して迷子になってしまったりしては、それまでの努力が無となって、どれほどやりきれないことでしょう。

 本来、犬を迎えるというのは、それくらい熟考するべきことなのです。


 はるの生命を繋ぐために、多くの方々の尽力があり、引き継いだ責任の重さを感じます。


「もう何処にも行かなくていいんだよ。ずっとここに居ていいんだよ。ここがはるのおウチなんだからね」


 一緒に過ごすこの穏やかな日々が、少しでも長く続きますように。


 そして、保護犬達が新しい家族の元で愛されて暮らせますように。

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