勇者パーティの受難 その9

青空が見える。

背中には柔らかい草の感触。

側には同じように寝転ぶ皆がいて。

まるで夢みたい。

夢であって欲しい。

「綺麗な紙飛行機を折れる魔法、紙飛行機を目的地まで飛ばす魔法、紙飛行機を透明化させる魔法、対象を5分だけ巨大化させる魔法…。…あんまり役に立ちそうなものはないかもね…」

魔導書を頭上に掲げながら、メラキはそう言った。

…そう。

私達がこうなっているのは、魔導書に入っている魔法があまりにも戦闘に不向きなものばかりだったせいだ。

「私…役に立てないかもしれない………」

便利で使いやすいと評判の『日常魔法』ですらこれなのに、もっと高度な『支援魔法』や『戦闘魔法』がまともなはずがない。

魔法で助けるつもりが、皆の足手まといになりそう。

どうしようかな。

「ま、まあほら…ルニアがついてきてくれたおかげでメンバーが揃ったんだし。気にしなくていいよ」

「いや、でも……これは……」

思わずため息が出る。

どの魔法も使えなくはないんだけど…使い所が限定されているというか…。

正直に言うと予想外の使いづらさというか…。

精霊達もきっと乗り気じゃな――いわけじゃなさそうだね。うん。

「精霊達が乗り気なら大丈夫かな…。最悪、物理攻撃すればいいし」

「えっ、ルニアって武術できるの!?」

「人並みには、かな」

私の専門は魔法だから、できればそっちで頑張りたかったんだけど。

結界があるんじゃどうしようもない、んだっけ?

「ねぇエルピーダ。この結界、不破壊ってついてる?」

「んー?多分ついてないと思うけど、なんで…あぁー!なるほど!」

その答えに飛び起きた。

不破壊はついてない、か。

それなら解読して壊してしまえば魔法が使えるね。

『皆、この結界の一日の解読可能時間ってどのくらい?』

精霊を呼び出しそう聞いてみる。

返ってきた答えは…

10分。

…え?

10分?

「何かの間違いじゃないの…!?」

「どうしたの?ハルモニアが叫ぶなんて珍しいね」

メラキの声を背に蹲る。

一日に10分しか解読できないなんて、初めてだ。

魔王がそんなにも強い魔法使いだったなんて。

正直ちょっと舐めてたかも。

…いやでも、もしかしたら10分以内に終わるかもしれないし。

『この結界の解読にかかる時間がどのくらいか教えてほしいな』

念の為聞いてみる。

精霊達は慌ただしく動いたあと、こう言った。

『120年くらい』

「あぁぁぁ……、もう私引退しようかな……」

私はその返答でもう一度、澄み切った空を眺めることになった。

…勇者パーティって、何かしらの困難が付き物っていうのは知っていたけど。

こんな酷い困難がついてくるなんて、知らないんだけど!!!

「あぁ…ルニアの魂が抜けてる…」

「あれはしばらくそっとしとくべきだね。大丈夫、そのうち治るから」


これからどうやって戦っていけばいいの!?


◇◇◇


『勇者パーティの受難 完』

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