第26話 新パーティ結成
王都の教会での戦闘から2週間後、神官騎士団はブルーム辺境伯領にたどり着いた。
城塞都市では、フリードリヒ国王自らが、神官騎士団を出迎えた。
「よく生き延びてくれたオーランド、このような事態に巻き込んでしまって申し訳ない。」
「何をいいますかフリードリヒ王、サイロスにいいように操られたのは私も一緒です。
頭をお上げください。」
その言葉に王は顔をあげた。
「私は娘エレナと、あなたがよこしてくれた宮廷魔術師長ラヴィーネ様、それと英雄フリューに救われたんですよ。」
オーランド神官長は後方にいる一団の方を見てそう言った。
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「よく帰ってきたわねフリュー、ついでにメーデイア。」
ブルーム辺境伯領に訪れた僕たちを、キルケ様が出迎えてくれた。
「あなたが聖女エレナね。
私はメーデイア(ゴホンッ)、じゃなかったラヴィーネの姉キルケよ。会えて嬉しいわ。」
キルケ様とエレナが握手を交わした。
「こちらこそ伝説の魔術師キルケ様とお会いできるなんて夢のようです。」
それを見ていたラヴィーネが言った。
「ずいぶんなお出迎えねキルケ姉さま、それにキルケが伝説の魔術師なら、同等の私も伝説の魔術師じゃないかしらエレナ?」
「「あんたはいいのよ。」」
なぜかキルケ様とエレナの声がハモった。
「まあまあ、俺にも挨拶をさせてくれ叔母さん。
俺はここの領主を務めるアウグスト=ブルームだ。
君がフリュー君だな、よろしく頼む。」
ブルーム卿は、僕が予想して人物像とは異なって、いかにも戦士風な大柄な男だった。
「あなたが。お名前は女王へカティア様から伺っておりました。
こちらこそ会えて嬉しいですブルーム辺境伯様」
「やめてくれ、ここではアウグストと呼んでくれ。君には俺の叔母さんがお世話になっているし、これから俺も君のお世話になるつもりだ。」
「わかりましたアウグスト様、それでは僕もフリューとお呼びください。君は結構です。」
「わかったよろしくフリュー、俺は君たちを歓迎するよ。」
横で聞いていたラヴィーネが、アウグスト様を睨んで言った。
「あんたねぇ!さっきから叔母さん叔母さんと、お・ね・え・さ・んって呼べって言ったわよね。」
ラヴィーネの剣幕に、大柄なアウグスト卿が狼狽えていた。
「それは、、、母上が叔母さんと呼べと、、、」
アウグスト卿が困っていると、離れて聞いていたキルケ様が言った。
「だって私の息子なんだから叔母さんじゃない、メーデイア叔母さん。」
ラヴィーネはキッとした顔で僕を見ると、僕に腕をとった。
「早く私たちも子供を作るわよ。
見てなさいキルケ!寝室借りるわよアウグ!」
と言って、僕の手を引っ張って行こうとする。
「「待ちなさいラヴィーネ(さま!)!」」
と言ってエレナとリンの二人が僕の反対の手を引っ張って引き留めた。
呆れた顔でアウグスト卿が見て言った。
「はっはっは、フリュー、お前不幸そうな顔してけっこうモテるなー。独身の俺としては羨ましいかぎりだ」
「そう思うなら代わってください。」
「断る。俺には荷が重い。」
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その後、僕たちは会議室に集められた。
「よくきてくれたオーランド。それにラヴィーネ、エレナ、フリュー、それにリンだったな。
国王としておまえたちの助力をありがたく思う。」
とフリードリヒ国王から改めて礼を言った。
そして話をさらに続けた。
「ここに集まってもらったのは、これからのことを話すためだ。
ワシの近衛騎士団、ブルーム卿の兵、それにオーランド神官長が率いる神官騎士団が加わり、これで1000を超える兵力が集まった訳だ。
加えて我々には王国最強の2人の魔術師、聖女、それに魔王殺しの英雄がいる。
しかし、このブルーム辺境伯領に来たのは、ブルーム卿を頼ってのことだが、一つ問題がある。そこでフリューたちの力を借りたい。
しかも危険が伴う願いだ。断ってもらっても構わない。」
王はそう言って僕らを見渡した。
「僕にできる事ならやります。
でも、僕たちということは、ラヴィーネやエレナやリンもってことですよね。
やるかどうかは、どうか彼女たちに聞いてください。」
僕がそう答えると、ラヴィーネは言った。
「あなたがやるなら私もやるわよ。」
「当然でしょ。」
「ですね。」
エレナとリンも頷いていた。
僕たちの会話の後、アウグスト卿が言った。
「まだ話を聞く前に即答とは、さすが話に聞いていた英雄というわけか。
ここからは俺から説明させてもらおう。
ここの東にある荒野の中央に古い城跡がある。そして、そこ地下に封印された迷宮があるんだが、俺がここから離れるとその封印がとけちまうんだ。」
「そこに何があるのですか?」
リンがそう聞くとラヴィーネが答えた。
「何があるか、じゃなく何がいるかね。
答えは
ラヴィーネの答えにエレナが聞いた。
「あなたは知ってたのね? 知った上でフリューと共に行くというのなら、勝算はあるということよね?」
「ある。
と言っても勝算は五分よ。
元々は、魔王戦のあと勇者一行で対処するつもりだったのよ。
鍵はアリエスの聖剣『ライトブリンガー』、だからアリエスがいて勝算は八割とってところかしらね。」
「それでは難しいんじゃないですか?」
リンが聞くと、横で聞いていたキルケが答えた。
「聖剣に代わる鍵はフリューの持つ『シャドウブリンガー』よ。それは勇者の聖剣と一対になるものなの。」
僕は腰に下げている短剣『シャドウブリンガー』を取り出しテーブルの上に置いた。
「これが鍵ですか? 教会での戦いで使ったけど軽くて異常に切れ味が良い位で特別な力はありませんよ。」
そう僕が言うとキルケが言った。
「それはお母様があなたを選んで、あなたに託したもの。誰にでも使えるものじゃないの。
今はまだ力を引き出せていないだけ。
聖剣のような目に見える破壊力は無いけど、その短剣は役目を持っているの。
竜殺しに特化した短剣よ。」
その言葉にラヴィーネが付け加えた。
「そう、あなたなら出来るわ。だから今は勝算は五分でも、私は勝てると思っている。」
まさか、やらなければならない事が伝説の竜殺しとは思っていなかった。
それも僕にかかっているとは...
アウグスト卿が言った。
「という訳だ。
迷宮は竜の寝床に通じており、そこまでの通路は狭くて深い、迷宮に巣喰った魔物と罠がある。
これは少数精鋭で望む必要がある。
だからお前たちに頼みたい。」
「分かりました。僕はやります。」
僕が仲間を見回すと、目が合ったラヴィーネが言った。
「これは元々エルフに与えられた使命よ。もちろんやるわよ。」
さらに
「もちろん。私の力も計算に入ってるんでしょ。やるわ。」
とエレナが言い
「竜相手には力になれないかもしれないけど、途中の罠や魔物なら私も力になれます。連れて行ってください。」
とリンが言った。
最後にアウグスト卿が言った。
「もちろん俺も行く。
英雄、大魔術師、聖女、
それに魔法戦士の俺だ。
勇者パーティにも劣らない布陣だと思わないか?」
そんなアウグスト卿の言葉に、ラヴィーネが釘をさした。
「アウグ、来るのはいいけど、
今度叔母さんとか言ったら後ろからファイアボール打ち込むわよ。」
なんともしまらない領主様であった。
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