第四場。

  舞台、誰もいなくなり、そこは飛行船の発着場。

  アウローラを担いだマーチとヴィオラが物陰に隠れて様子を窺っている。

  帽子を被った男エリックが入ってくる。

  それを追って少年エラムが駆け込んでくる。


エラム:父さん!


  エリック、帽子を脱いでエラムに被せる。


エリック:そう寂しがるな。この空の下にいる限り、父さんはお前を見ているよ。じゃあ、行ってくる。


  エラム、頷いて手を振ると踵を返し走り去る。

  エリック、ゆっくりと奥、ナルフェール号へと消えていく。

  ディクラインが現れる。


ディクライン:ご苦労だったね。

ヴィオラ:コレさえ貰えればいつでも。

ディクライン:約束の報酬だ。


  ディクライン、ヴィオラに金の袋を渡し、アウローラを受け取る。


マーチ:二重に金貰うの狡くねぇか? さっきの返せよ。

ヴィオラ:馬鹿言わないで。一度貰った物は返せないし一度あげた物は受け取れない。人間ってのはそういう決まりで生きてるもんなのよ。

マーチ:あーそうかい。


  マーチとヴィオラ、頷き合って去る。


ディクライン:お帰り、我が娘。


  ディクライン、アウローラを降ろす。


ディクライン:さぁ、機械仕掛けの愛しき天使よ。その硝子の瞳を見せてくれ。アウローラ。


  アウローラ、顔の布を外す。


ディクライン:まだ夢うつつといった具合か。まぁ良い。二つの世界が溶け合うにはまだ時間が掛かる。それまでは遊んでくると良い。アウローラ。お前に丁度良い遊び相手もいるだろうからね。


  アウローラ、ぼんやりとした足取りで去って行く。


ディクライン:私も行くとしようか。


  ディクライン、去る。

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