第112話 目を覚まさせてあげるわ (ジュリア談)―2

秘密のダンジョン大捕物帳 ジュリア視点のエピソードです。

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 「三枚目の令状が出ていて……

こっちは、殺人未遂罪の教唆の疑いで逮捕状だ。

スナイパーがすべてを自供した」


「は、はぁ? あのバカめ!」


「よって、任意の同行ではなく逮捕だ。エバンス諦めろ」


「弁護士を呼んでくれ。

消費税は払うから、そうすれば金塊は取り戻せるだろ」


「それは、署で話をしよう」


「待て、待て、話を聞け。

密輸ではない。税関を通るつもりだったのに、ここに難破したんだ」


「それも署でお話を…

言っておくが、殺人未遂罪の教唆の罪はお金で解決できないからな。

観念しろ」


エバンスの手に手錠がかけられた。


「午前9時6分、殺人未遂罪の教唆で逮捕!」


「ぐっ……日本時間のな」


「ああ、日本時間だ」


わたしは、急いでハヤブサに連絡する。


「ハヤブサ? ジュリアだけど。

警察は捜査差し押さえに入ったわ。

それから、殺人未遂をそそのかしたとして、今エバンスを逮捕したから。配信開始して」


「ああ、もうとっくに配信しているよ。

ハチ王子がボートで座礁船に向かった時点から」


「そうなのね。ノマド・キャンパーのほうは?」


「ユズリハが今、ノマド・コロニーから配信スタートさせた」


「あずさはどうしてるの」


「妹はわたしと一緒に、座礁船に近い岸壁で中継を手伝っている」


「わかったわ。次はわたしも配信をスタートする番ね」


「了解。よろしく頼む」


エバンスは警察の黒いジープに乗せられた。

ジープには着脱式赤色警光灯が取り付けられて、待機場所本部へと走って行った。


わたしは、外へ出てスマホを取り出し配信を始める。


「ハーイ、ジュリアよ。緊急でカメラを回しています。

わたしは、ダンジョン第5層界にいます。

と言っても、それがどこなのか知らない人が多いと思うんだけど。

そう、そうよね、一部の人はSNSでバズったから知っているかもしれないわね。


わたしの背景に写っているのは、何だと思う?

そう、どう見ても工事現場事務所よね。

ここのダンジョンでは、開発の名のもとに自然破壊が行われているの。

ちょっとドローンで周辺をみせるから、よく見ててね」


ドローンは伐採された山林、掘削された砂利、工事で濁った川などを映し出した。


「ここは、ダンジョンといっても、

魔物が出ないセーフティーゾーンなの。

まるで、わたしたちが住んでいる地上と同じ。

青い空、緑の草原、野鳥たちの群れ。

都市化した地上よりも、ここは地球らしいと言えるかもしれないわ。


ここには、探索者しか入れないけど、いろんなダンジョンと繋がっていて、

いろんな国から探索者が来て休憩することができるの。

中には、地上とここを行ったり来たりして生活する探索者もいるわ。

そう、ここは世界中のダンジョンのハブ空港の役目をしているの。


そんなダンジョンを商業目的で開発しようとした人間が、別の理由でさっき逮捕されました。

その理由は、今はまだ取り調べ中だから言えないけど、そのうちニュースで明らかになることでしょう。


ここを配信しているチャンネルは私以外にもあるから、見てみてね。

配信場所がそれぞれ違うから、面白いかもよ。


ハヤブサ・チャンネルでは、密輸品差し押さえの様子を中継中。

ユズリハ・チャンネルは北部に住むノマド・キャンパーたちとのインタビューを中継中。


もしかしたら、

ここに居る探索者で配信できる人が他にもいるかもしれないわね。

わたしの声が聞こえたら、配信してちょうだい。

第5層界のすばらしさをあなたの得意なことをしながら紹介して、

そして、開発反対の声をあげましょう。


時差があるから、今寝ている人のために何時間でも配信しつづけるわ。

あ、アハハ、そうね。わかったわ、アーカイブに残します。

全世界のみんな、お願い、

協力してこのダンジョンの自然環境を守りましょう。


じゃ、しばらくしたらハチ王子がゲスト出演してくれると思うから、

その辺を散策しながら待ちましょうか。

その間に、みなさんからの質問に答えるわ。なにか質問があるひとー」


わたしはスマホカメラに向かって微笑んだ。


エバンス逮捕に成功したら、次はわたしたち探索配信者の出番だ。





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