第47話 装備品全解除―2
そのとき、火炎ビームが連続で襲ってきた。
「おーい、トレントさん。何だよお。
二発もビームをとばしやがって、ずるいよ。
それはキツイって。俺の入り込む隙がなくなるだろが!」
ブロッケンが驚いたように声をあげる。
「ハチ王子。君はトレントに話しかけているの?」
「ああ、いくら魔物でも、ずるい手口を使われると俺だってキレますんで」
そう言っている間にも、火炎ビームは飛んでくる。
ひょいと、ギリギリでビームをなんとかよけた。
「こいつ、マジでうざいんだよ」
ブロッケンは、剣を構えて俺に話しかけた。
「あたくしがこいつをこっちに引き寄せる。そして、剣で切り倒すわ」
でも、さっきからブロッケンの剣は全くダメージを与えていないじゃないか。
いい加減学習しろよ。
逆に攻撃から避けるために後退するブロッケンを狙って火炎ビームが噴き出す。
なるほど……、それを見て俺は気が付いた。
後ろに下がりすぎるとたぶんダメなんだ。
じゃ、実践してみるか。
俺はわざと木の幹にパンチをして、トレントを怒らせた。
トレントは荒れ狂いながら、根っこの足で俺を踏みつぶそうとする。
ここまではお決まりのパターンだ。
この時にあまり後ろに下がりすぎるとダメだとさっき学んだから、俺は後退をしない。
左に逃げると枝、右に逃げると火の粉、後退すると火炎ビームで襲い掛かってくる。
そしたら、残る方向はこれしかない。
身軽になった俺は、根っこの足にしがみついて、そのまま上へと這い上がった。
這い上がればこっちのもの。
あとは木登りの要領で、するすると裸足でてっぺんまで登っていく。
「残る方向は上しかないだろが!」
てっぺんから渾身の手刀を振り下ろす。
「おまえ、マジ、うざい!」
トレントはメキメキと音をたてて真っ二つに割れた。
それからゆっくり、ドーンと音を立てて倒れた。
「ん? 勝った?」
(裸の王様ならぬ、裸のハチ王子、勝利!)
(すっげー!手刀で切り倒した)
(ハチ王子は野生児か)
コメント欄を確認してから、ユズリハは俺に向かって手を振っている。
そんな…、手を振られたら照れるじゃないか。
「早く、服を着てよ、服!」
なんだ、感激して手を振ってるんじゃないのか。
「わかってるよ。いちいちうるせーな」
ユズリハが服を着ろとあまりうるさく言うので、脱ぎ捨てた場所に戻ってTシャツを着た。
他の装着品はもう付けなくていいだろう。
アイテムボックスにしまった。
あれ? ブロッケンはどうしたのだろう。
無事なのかな。
いつの間にかブロッケンは、宝箱が置いてある台のところに移動していた。
ブラックダイヤモンドが入っている宝箱に手をかけている。
「ご苦労さん、ハチ王子。
君のおかげで宝箱の番人トレントを倒せましたわ。
最初に言った通りに、早いもの勝ちですから、
ブラックダイヤモンドはあたくしがいただきます」
はあ?! 俺が服を着ている間に取っちゃうわけ?
俺が靴下を履き、スニーカーの紐を結んでいる間に、そんなことしちゃうんだ。
トレントを倒したのは俺なのに。
それって、ネコババてやつじゃないか?
「そういうルールでしたっけ?」
「言ったはずですわ。
これはどっちが早くブラックダイヤモンドを手に入れるかのゲームだって。
トレントを誰が倒したかどうかなんて関係ないのよ。
これで、君はお役御免なの。ご苦労さんでした」
「ブロッケン、見損なったわ。あなたってひどい人ね」
「あら、お言葉ね。今頃気が付いたの?
ユズリハあなただって配信が出来たんだからよかったじゃないの?」
(ブロッケンめ、あいつらしい手口だな)
(確かに競争だけど、なんかモヤモヤしないか?)
(ハチ王子がトレントを倒さなきゃ、宝箱まで行けなかったじゃないか)
(モヤモヤする)
(最初からそのつもりだったのでは・・・・)
(すべてはブロッケンの計画通りってことかよ)
(きたねーやつだ)
俺が裸になろうとした時よりも、コメント欄は大炎上している。
俺の心も大炎上した。
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