第7話 クライマックスと解決

涼介は、集めた証拠と桜井達也の告白をもとに、真相を暴くための最終的な準備を進めていた。彼は香織と高橋に協力を求め、三人で事件の全貌を解き明かす計画を練り上げた。


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涼介は桜井を説得し、事件に関与した証拠を整理するために会議室を手配した。その会議室には、関係者全員が集まるよう手配されていた。桜井は、涼介に促されるままに、関係者の前で真相を語ることを約束した。


会議室には、企業の幹部たちが揃い、緊張感が漂っていた。涼介は一歩前に出て、冷静な声で話し始めた。


「皆さん、ここにお集まりいただいたのは、最近の事件についてお話しするためです。まず、被害者が何をしようとしていたのかを明らかにしたいと思います。」


涼介はプロジェクターを使い、被害者のパソコンから取得した未送信のメールをスクリーンに映し出した。「被害者は、このメールを送信しようとしていました。内容は、会社の不正行為に関する告発です。」


会議室内はざわつき始めた。涼介は続けた。「そして、ここに集められた証拠品の中には、被害者が摂取していたサプリメントの瓶があります。この瓶には、致死量の毒物が混入されていました。その成分は、貴社の製品と一致します。」


関係者たちは驚愕し、桜井に疑惑の目を向けた。桜井は涼介の視線を受け止め、重い口を開いた。


「そうです、私が毒を混入しました。しかし、私は一人で行動したわけではありません。企業全体の不正を暴露されることを恐れ、私たちは共同でこの計画を立てました。」


涼介は桜井の告白を促しながら、さらに詳細な証拠を提示した。「桜井さんのビデオ通話のアリバイも、事前に録画されたものであることが判明しました。映像に映る時計の時刻が一致しないことから、不自然さが明らかになりました。」


涼介はプロジェクターでその映像を再生し、時計の時刻の不一致を示した。これにより、桜井のアリバイが偽造であることが立証された。


「さらに、桜井さんが動機として述べた通り、被害者が企業の不正を暴こうとしたことが直接の原因です。これが動機であり、共犯者たちも同様の目的を持っていたと考えられます。」


涼介は最後に、企業の幹部たちに向かって鋭い視線を投げかけた。「真実を隠し続けることはできません。全員が協力し、真相を明らかにすることが必要です。」


関係者たちは沈黙の中で頷き、桜井を含む数名が自らの関与を認めた。涼介はその瞬間、事件の全貌を解明したと確信し、高橋に向かって微笑んだ。


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香織は、高橋にこのクライマックスシーンの描き方を教えながら、「クライマックスでは、これまでに張り巡らせた伏線をすべて回収し、読者に納得感を与えることが重要です」とアドバイスした。「探偵が全てのピースを繋ぎ合わせ、真相を明らかにする過程を詳細に描写することで、物語に一貫性と満足感を持たせることができます。」


高橋はその教えを胸に、自らの作品で同様のクライマックスシーンを描くことを決意した。彼は、涼介の冷静な推理と巧妙な手法を再現し、読者に驚きと感動を与えるシーンを練り上げた。


こうして、香織の指導の下、高橋恭平はクライマックスの描写技術を身につけ、自らの推理小説に応用することができた。次第に彼の作品は、読者に強い印象を与える完成度の高いものへと進化していった。

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