第6話 犯人の心理と動機の解明
涼介は集めた証拠をもとに、犯人の心理に迫り、動機を解明する過程に入った。高橋は、香織の指導の下で心理描写の技術を学び、自分の作品に応用することを目指していた。
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涼介は、企業の幹部である桜井達也を訪ねることにした。彼が被害者の同僚であり、企業の不正に関与している可能性が高いと判断したからだ。桜井のオフィスに到着した涼介は、冷静な表情で桜井に話しかけた。
「桜井さん、お時間をいただけますか?お話ししたいことがあります。」
桜井は少し警戒した様子だったが、涼介の落ち着いた態度に応じて、彼をオフィスに招き入れた。
「もちろんです。どうぞ、お座りください。」
涼介は椅子に腰掛け、直接的な質問を避けるためにまず雑談から始めた。「最近、会社の業績が良いと聞いていますが、何か特別な取り組みがあったのですか?」
桜井は安心した表情を見せ、「ええ、新しいプロジェクトが成功しまして、それが大きな要因です」と答えた。
涼介は桜井の話を聞きながら、彼の表情や言葉遣いに注意を払い続けた。涼介は、桜井が緊張や焦りを感じている兆候を探していた。そして、徐々に話題を事件に向けていった。
「実は、最近の事件についてお伺いしたいのです。被害者の方とはどのような関係だったのでしょうか?」
桜井の表情が一瞬硬直した。「彼とは同僚でした。仕事上で何度か一緒にプロジェクトを進めたことがあります。」
涼介はその反応を見逃さず、さらに深く掘り下げることにした。「そうですか。そのプロジェクトの中で、何かトラブルはありませんでしたか?」
桜井は少し動揺した様子で答えた。「いえ、特に大きなトラブルは…」
その時、涼介は桜井の手元に目をやり、彼が無意識にペンを握りしめていることに気づいた。これは、彼が心理的に追い詰められているサインである。
「実は、被害者が会社の不正を暴露しようとしていたという情報がありまして、あなたの名前もその中に出てきました」と涼介は切り出した。
桜井の顔色が変わり、彼は明らかに動揺した。「そんなことは…私は何も知らない…」
涼介はここで圧力をかけることにした。「私たちは、あなたが被害者を殺害したと疑っています。毒物の成分があなたの会社で製造されていることも確認しています。」
桜井は沈黙し、汗が額に浮かび上がった。涼介はその反応を見逃さず、さらに追及した。「動機は何ですか?彼が不正を暴露しようとしたことが原因ですか?」
桜井はついに耐え切れず、声を震わせて話し始めた。「そうです…彼がすべてを暴露しようとしたんです。私たちの努力がすべて無駄になると思ったら、どうしても止めなければならなかった…」
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香織は、高橋にこのシーンのポイントを解説した。「犯人の心理に迫る際には、直接的な質問だけでなく、雑談や間接的なアプローチを使って緊張を解くことが重要です。そして、相手の反応を注意深く観察し、無意識のサインを見逃さないようにするのです。」
高橋はその教えを胸に、自分の作品に応用することにした。彼は、探偵が犯人を心理的に追い詰めるシーンをより詳細に描写し、読者に犯人の心理状態を伝えることを目指した。
涼介は、桜井の告白を基に事件の全貌を解明し、動機を明確にすることに成功した。高橋は、この過程を通じて、心理描写の重要性とその技術を学び、自分の作品に生かしていった。
こうして、香織の指導の下、高橋恭平は探偵の心理的な手法を学び、自らの推理小説作家としての技術を一層磨いていくことができた。
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