第3話 犯行の計画と実行
三田村香織は、書斎の大きな白板に向かって、色とりどりのマーカーを手にしていた。高橋恭平は、香織の隣でノートを広げ、緊張と興奮が入り混じった表情で彼女の一挙手一投足を見守っていた。
「さて、高橋君、今日は犯行計画の立て方について学びましょう」と香織は始めた。「まず、犯人の動機から考えます。動機がしっかりしていなければ、どんなに巧妙な計画でも読者を納得させることはできません。」
香織は白板に「動機」と大きく書き、さらに「復讐」「利益」「恐怖」「情熱」といったキーワードを付け加えた。「例えば、今回は復讐が動機のケースにしましょう。犯人は、自分を裏切ったビジネスパートナーに対する復讐を誓った、としましょう。」
高橋は真剣な表情でメモを取りながら質問した。「復讐が動機だと、どういった計画が考えられるでしょうか?」
香織は頷きながら続けた。「次に計画の細部を考えます。犯人はどのようにして被害者に近づき、どのようにして犯行を実行するか。重要なのは、計画が現実的でありながらも読者を驚かせるような捻りがあることです。」
香織は「計画」と書き、その下に「接触」「手段」「アリバイ」といった項目を書き出した。「犯人は、ビジネスミーティングを装って被害者と接触します。そして、毒を用いた犯行を計画します。毒は被害者が日常的に摂取するサプリメントに混入させることにしましょう。」
高橋は興味深げに聞き入っていた。「でも、それだとすぐに犯人が疑われてしまうのでは?」
香織は微笑んで答えた。「そこでアリバイの重要性が出てきます。犯人は、自分が犯行時刻に他の場所にいたことを証明するために、巧妙なアリバイを作り出します。」
香織は「アリバイ」と書き、その下に「証人」「物的証拠」「時間操作」といった要素を追加した。「例えば、犯人は犯行時刻に別の場所にいることを証明するために、事前に録画したビデオ通話を利用します。ビデオ通話の映像を使って、自分がその時間帯にオフィスにいたことを証明するのです。」
高橋はそのアイディアに感心した様子で頷いた。「なるほど、ビデオ通話の映像を使うんですね。でも、探偵がどうやってそのアリバイを崩すんですか?」
香織は再び白板に向かい、「探偵の追跡」と書き加えた。「探偵はまず、ビデオ通話の映像が事前に録画されたものであることに気づきます。例えば、映像の中に時計が映り込んでいて、その時刻が一致しないことから、不自然さを見抜くのです。」
香織は高橋に向き直り、「さあ、これを元に短編を書いてみましょう。犯人の動機から計画の立て方、そしてアリバイの作り方まで、実際に物語にしてみるのです」と言った。
高橋は決意に満ちた表情で頷き、ノートにペンを走らせ始めた。香織の指導の下、彼は犯人の視点から物語を描き、計画の詳細を緻密に描写する技術を学んでいった。
こうして、二人は架空の犯人が巧妙なアリバイを作り出すシーンを描き出した。高橋は香織の教えを受けながら、自らの推理小説作家としての技術を一歩一歩磨いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます