第26話 工作その2
乾燥後の座席パーツをチェックしてみたけれど、特にムラや塗り残しは見当たらなかった。よし、バッチリだ。
なので、簡易塗装ブースである段ボール箱と新聞紙は僕の部屋に引き上げた。また使う機会があるかも知れないし。
座席パーツから割箸を剥がしていて思ったのだけれど、割箸もかなり青く染まっている。やはり、それなりに長い棒状のものに固定する必要はあったのだ。僕は今日何回目か覚えていない、那須野への感謝を心の中で捧げた。
さてと、組み立てだ。
これは分解の逆をやれば良いので、そんなに難しくはない。良く見ると、座席パーツの裏側にはウエイトを固定する突起もあった。至れり尽くせりだ。
かちり、かちりとパーツを嵌め合わせて、バネを飛ばさないように台車をひとつ嵌めてはネジを留める。もうひとつ嵌めて、ネジを留める。ふう、モハ485の床下セットが完成した!
僕はモハ484の動力ユニットと、今組み上げた床下セットを並べてみた。
んー?びみょーに色味が違う?
しばらく見てみる。似てはいる。けど違う気がする。むう、しかしこれは、妥協の範囲内か?
僕はモハ484とモハ485のボディと床下をそれぞれドッキングさせてみる。窓からちらりと覗く室内が青く見える。窓ガラスの透明プラを通して見るその二両分の印象に、大きな違いはなかった。
あぁ、組み上げたらあんまり変わらないや。
僕は内心にんまりして、残るクハ481二両の床下もささっと組み上げ、まずは床下側からライトスイッチがちゃんと動くかを確認してみた。大丈夫、ちゃんとスライドする。
そして、出来上がった床下バーツをボディに組み込む。おお、バッチリ!……いや、元々バッチリだったものを分解して戻したんだから、バッチリでないと困るんだ。
僕は机の上に長い直線レールを一本置いて、パワーユニットを接続する。そして、その上にクハ481をまず一両、そっと乗せてパワーユニットのスイッチを入れる。
進行方向の選択スイッチを入れてから、ダイヤルを静かに回す。
……あれっ?ライトが点かない?
僕はパワーユニットの電源を切って、クハ481を持ち上げ床下を見る。あっ、ライトスイッチがOFFになってる……
精密ドライバーでライトスイッチをONにして再びやり直す、ヘッドライト、テールライト共に点灯確認オッケーだ!
そしてもう一両も無事確認オッケー!はー、やり遂げた!!
ベテランから見たら、大したことのない工作だろうけど。今の僕にはこの達成感がなによりも嬉しく、そして楽しいものだった。
「完成?」
「うわっと!」
机の上に並ぶ四両の特急電車を見て、磐梯いずみは微笑んだ。
「おめでとう」
「ありがとう」
「今度ハ壊サナイデネ……」
「なんで怪談なんだよ」
まあ、もう壊すつもりはない。思ったよりお金も手間もかかるから、それを考えたら大事に扱う方が全然楽だ。
とにかく、これで僕の鉄道は完全に再起動したんだ。これからどう発展させていこうかなと、僕の心は期待に膨らんでいた。
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どうもです。
いつの間にか500PVも突破していまして、600も間近になっています。本当に有り難いことです。そこで、また記念と感謝の番外編を挟もうかと思ったのですが、あんまり番外編ばかり入れるとメインストーリーが全然進まないので、今回は頑張って二話同時更新にしました。
もうちょっとラブコメ要素も盛り込みたいところなんですが、真一が全然そっち方向に動いてくれないので苦戦しています。そのあたりは、三人の関係性が確立してからになりそうです。
というわけで、この先もお付き合い頂けると幸いです。
それでは!
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