第24話 購入その2

 アキヨド。

 そのホビーフロアの一角に、目指す塗料コーナーがあった。


 様々な種類の塗料が揃っている。瓶入りタイプ、缶スプレータイプ、ペンタイプ。水性、ラッカー系、エナメル系。ありとあらゆる、というのは大げさに過ぎるかも知れないけれど、ずらりと並ぶ塗料の数はまさに壮観だ。


 さらに筆、平皿、エアブラシ関連用品に各種うすめ液からガ〇ダムマーカーのセットまで並んでいる。


 「すごいね、ここ」


 蔵王ひかりの言う【ここ】が塗料コーナーを指すのか、それともこのホビーフロア全体のことを指すのかは判らない。どっちにしたってすごいんだから、細かいことはどうでもいいとも言える。


 各種テレビゲームに始まってブロックや着せ替え人形などの幼児用玩具、ヒーローや怪獣のソフトビニール人形からパズル、フィギュア類。ガチャガチャのコーナーもあるし、なぜか自転車まで売っている。


 プラモデルだけでも、キャラクターものから自動車、飛行機、艦船、建築物など多種多様な在庫が棚にひしめいている。最近流行っている、美少女プラモなんていうものも一大勢力を築いている。女の子が武装しているのか、なんかすごいな。


 ここに一日いろと言われても、案外苦ではないかも知れない……


 僕はスマホに部屋で撮影した動力ユニットの写真を表示させて、近い色のキャップを持つ缶スプレーを探してみた。確かに、那須野の言う通り青系統だけでも大量にバリエーションがある。


 が、淡い青……水色系というのはそれほどでもない。しかし色鮮やかなものが多すぎる。もっと落ち着いた色はないものか……


 「これなんてどう?」


 横から見ていた蔵王ひかりが、ひとつのスプレーを指さした。タミヤカラースプレーの、インターミディエイト・ブルー。


 「うん、それっぽいね」


 僕はその缶を掴んで、スマホに近づける。おお、なんとなく似ている。たぶんこのへんにある中では一番近い気がする。


 気になるお値段は七百二十円。むむむ、割と高い。今月のお小遣いがあらかたなくなってしまう。

 だけど、磐梯いずみのお陰で昼食代が浮いているからまだ少し余裕があるし、これから先も余裕が出来る予定になっている。


 「じゃあこれにするよ」

 「それ使ったら、松島くんの電車は直るの?」

 「うん。土日か来週あたりになんとかするつもり」

 「そか。早く見たいな」


 僕は笑って、レジの列に並んで会計を済ませた。


 塗装か。僕は未知の世界に踏み出すという、不安と期待でドキドキしていた。蔵王ひかりと下校しているからでは、ないと思う。




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