第2話 デッキとは自己表現?それとも自己表現は不要?

 2回目にしてこんな重い表題……だが実際、僕が最初から数えて数回の対戦の間に学んだことなのだ。


 ええとも、結論を言おう。どっちでもええ……!


 言葉を平易かつ乱暴に使用したことをお詫びする。が、己の考えは極論これに帰結した。しかも、早々に。

 これはあくまで友人と紙の対戦をする前に電子媒体である「MTGA」で学んだことであり、読んでくださっている読者の皆様の立場でいろいろと意見が変わることは把握しているつもり。

 それこそMTGA専門のプレイヤーもいらっしゃるだろうし、都市部・地方部のカードショップに通われて熱心に対戦会に参加してらっしゃる方もいるでしょう。あるいはセミプロ・プロとして賞金や栄誉・勝利を求めて貪欲にデッキをまわしてる方も、いるかもしれない。

 そんな方々にマジック31年の歴史の中で数年しかかじっていない自分が言えることはせいぜいこれだけなんだ。


 MTGにおいてデッキ、構築に関しては60枚以上であればどんな制限も存在しない。サイドボード、つまりサブプラン用に登録できるカード群に関しても、3本先取勝負(BO3と呼ばれています)で15枚とルールが公言している。

 その中で自己を表現したいと現れたのが僕。だけどその思いは当時アリーナに蔓延っていたあるデッキに粉々に粉砕された。


 そう、相棒デッキ……!


 僕が始めた時期は相棒コンセプトが悪逆の限りを尽くす大魔境時代。オーコがいなくなったら今度は怪獣たちがのっしのしと環境を踏み歩く時代。

 知らない人に向けて語ると、今言ったデッキの中でもサイドボードの中でもなく、特定の条件を満たせば1枚だけ勝負に持ち込む出来るシステム、それが「相棒」という能力。

 勝負に参上する我が相棒……!そう考えるとカッコいいコンセプトなんだけどね。この相棒システムはMTGの歴史の中でもかなりの失敗システムとして後世に語られることになった。なにせMTGの歴史で昔あったとはいえ異例も異例、カードの内容や誤植ではなくルール自体にエラッタ、つまり訂正が入ったんだから。

 そろそろ引き延ばさずに相棒システム(旧)の悪さを簡単に説明しよう。 


 なんと相棒システム(旧)、最初から手札に存在するような処理でありながらサイドボードに存在してて、にもかかわらず表記されたマナコストを払ったら、そのまま戦場に出せちゃうのだ!


 なにがまずい、言ってみろ。心の中で無残様、もといウィザーズ様がパワハラしてきますがウィザーズ様、不味すぎます。

 手札に存在しないから手札破壊カードが通用しない。場に出されたら能力が発動するから出された方が圧倒的に不利。しかも、どの相棒持ちクリーチャーも能力が強過ぎんだ……。当然だがサイドボードは「デッキ」ではなく予備のカード群。対戦相手が触ること能わず。昔からサイドボードからカードを呼び寄せる効果のカードはいくらでもあったけどさ、手札を絶対経由してたんだよね。唱えるまでは排除できない、ええともクソゲーです。


 結果起こったこと。プロ、アマ、MTGA問わず「相棒入れなきゃデッキじゃねぇ」レベルで使用される事態に。何その平氏じゃないと人間じゃないみたいな環境。

 あったんだなぁそんな環境が(涙)。個人的にここから2022年までは結構、MTGの歴史における核の冬並みに業界はひえっひえだった気がする。

 

 閑話休題。相棒を使用したデッキににあり合わせのカードで挑んだ僕の自己表現は否定された。それもそのはず当時自分はカードゲーム初心者、右とか左とか関係なくわからない事だらけだったんだ。

 せめてもの救いは相棒デッキはどれもTier0レベルで大活躍中、対して僕の自己表現はよわよわ。マッチ機能が味方をしてくれて当たる回数はそこまで多くなかったと記憶してる。いや嘘、トラウマレベルで強さが刻まれてる。

 でもこんないびつな環境で始めた僕がこの考えに行きつくのはさもありなんだと思うんだ。それに今は理解が上がって、自己表現で勝てることが増えてきたんだから。

 ここまで書いてきたけど、この問題においてプレイヤー側は何も悪くないんだ。

 だってこれ、全部公式様が提供してくださったカードが引き起こした問題。あえて言おう、こんなやべぇシステム刷ったウィザーズが悪い(直諭)。


 「強いデッキをコピって使って何が悪い」という派閥がいたり、「自己表現しないプレイヤー無理だわぁ」という学会がいることは知ってる。SNS漁ってたら嫌でも目に付くけど。

 こんな環境で育てられた僕があえて言います、健全健全!どっちでもええ!

 コピペ派閥がコピったデッキを己が起源とか言わなかったり、自己表現至上学会がオリジン求めすぎてヘイト高め合ったりしなきゃ問題ないよ(そういう人がいるのも事実、やめようね)

 だって僕が始めたあの時、あの環境は「強いデッキコピペ」派閥も「自己表現至上」学会も、相棒入れずんばデッキにあらず、な環境だったんだから。


 最後にこの相棒の顛末を締めくくろうと思う。

 前述の通り相棒システムは変更された。戦場に最初から出せる→3マナ払って手札に加える。しかも特定の制限があるタイミングでマナを支払わないといけなくなった。

 それでもこの相棒システムは強すぎて、環境を荒らしたカードたちは軒並み禁止、つまりデッキに組み込めなくなった。存続してる相棒カードもあるっちゃあるけど、昔ほど猛威は振るってない。


 もし未プレイの方が今の環境に不安を持ったなら?安心して、今は本気で健全だと思うよ。やいのやいの不満を言う人もいるし、というかTCGはゲームの特性から言って不満はだれしももつ遊びだと思ってる。

本っ当に幸運なことに、僕は最悪の魔境から己のTCG人生をスタートさせた。相棒っていう最悪なシステムが結果的に、どんな相手と戦ってもあんま不満を持たなくなって、怒りの時間を自己研鑽に費やせてる。


 でも僕にとって本当の地獄は、そして沼にハマる出来事は。

 友人と対面して遊んでからが、本番だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る