第6話

 夏祭りの会場はたくさんの人で賑わっていた。

由香は灰色の生地にすずらんが描かれた帯が黄緑色の浴衣を着ている。篤は紺色の生地に赤い金魚の

描かれた黒い帯の浴衣を着ている。

「お店がたくさんあるね」

「そうだな。どこ見たい?」

「えーっと、あのお店!」

由香はりんご飴の屋台を指さした

「分かった、行こう」

「すみません、りんご飴2つ」

「合計で800円になりますーありがとうございました」

「はい、由香のぶん

「ありがとう」

それから2人はりんご飴を食べながら射的やヨーヨーすくいなどいろいろな店を回り、お化け屋敷の前で足を止めた。入口ではおばあさんがマイクで呼び込みをしている。

「あっくん、ここ入ってみたい」

篤は不安そうな顔をした。

「大丈夫か?怖がりだろ、由香」

「大丈夫だよ。入ろう」

 小さいお化け屋敷ではあるが、中は凝った造りになっていた。由香が先頭で入ったものの、踏み出す足取りは重い

「怖いなら無理するなよ。先頭変わるぞ」

「私だって、好きな人にかっこいいとこ見せたいんだもん」

「お前、それってー」

由香は痴態を隠すようにずんずん歩き、お化け屋敷を抜けた。

 やがて日が暮れて祭り会場はますます賑わってきた。

ヒューパンッパン

「あ、花火!」

「本当だ。きれいだな」

篤の手を握りると篤も由香の手を握り返した。

その手は温かくて安心できた

やがて花火が終了した

 「あー楽しかった」

「だな」

「また来年も来たいな」

「待ってるよ。由香、悪いんだが少しの間、用事で東京にいかなくちゃいけないんだ」

「そうなんだ。私は大丈夫だからしっかりね」

「ありがとう」

「明日、見送りに行くから」

「ああ」




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