第27話 騙し合いスタート
探偵の人に言われたとおり、俺は警察のふりをして玲ちゃんの両親に電話をかけた。
ここまでは全て想定通り...。
しかし、ここからはかなりミッションの難易度が跳ね上がる。
ここからは彼ら二人を連れていく必要がある。
事前調査の結果、お父さんの方は数年前に足を悪くしてから運転はしておらず、お母さんの方は免許を持っていない。
だから、ここに来る際もいつもタクシーを使っていた。
なので、探偵事務所に連絡するといつものように電話をしてタクシーを呼ぶのだった。
というか、どこかのタイミングでもし交番に電話をされようものならそんな事実はないと言われてしまうし...。
そうして、探偵さんの知り合いの車好きの人に借りたタクシーそっくりの車で、俺が迎えにいくのだった。
いつも使っているタクシー会社を装って...。
「もうそろつきそうです」と、内線で話すように普通に携帯の電話を使って話をする。
もちろん、イヤホンを使っているので探偵さんの声は外には漏れない。
『もう少しだけ待ってください。流石に早すぎるので』
「了解。てか、本当のタクシー会社から連絡きたらどうするんですか?」
『それはない。さっき電話が終わった後にすぐ俺のほうでキャンセルの連絡を入れたからな。名前も電話番号も知ってるし、喋り方の特徴もわかってるから成り切るのは難しくないからな』
そうして、5分ほど経過したところで夫婦の前でタクシー風の車を止める。
そして、扉を開けると二人が入ってくる。
「予約いただいていた、菅原様でお間違い無いですか?」
「はい。すみませんが、熊川警察署までよろしくお願いします」
「...はい。分かりました」
そう言われてとりあえず車を出すのだった。
...やばい、心臓がバックバクする。
ばれたらやばいなんて話では済まない。
そうして、そのまま車を走らせる。
仲睦まじい感じと聞いていたが、社内では一切会話をしない二人。
というか、お父さんの方のピリついた感じが結構怖かった。
信号待ちになると貧乏ゆすりを始める。
その振動が前で運転している俺にも伝わってくるのだ。
そのまま、警察署近くまで行ったところで、ある別のビルの地下に入る。
「...運転手さん?どこ行くんですか?」
「あっ、いえ...。あそこらへん一体は路駐禁止なので」とか、適当なことを言いながら地下に入る。
すると、既に6台ほどのハイエースとかの大型の車と併せてまるで映画の中のヤクザをかき集めたような人たちが待ち構えていた。
事態を察してか怯え始める二人。
そして、俺はタクシーから飛び降りて、ヤクザの方に土下座をする。
「す、すみませんでした!遅れてしまい!」
「せやなぁ、5分の遅刻やわ。こりゃまたお仕置きが必要やな」
「せ、せめて!む、娘だけは!」
「そうだなー。うーん、考えておくよ。ん、連れてけ」と言われて俺はとある車に押し込められる。
もちろん、彼らはヤクザではなくヤクザみたいな見た目の人たちである。
探偵さんの知り合いの。
すると、次の瞬間そのヤクザ役の一人がタクシーの扉を乱暴に開けて、後部座席に座る菅原夫妻にこう言った。
「あんたの娘、やってくれたな」
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