第25話 意味深
あの後は探偵と助手を名乗る彼女と色々話をした。
過去されたことに関するざっくりとした内容、探偵さんのことを信用しておらずすでに他の探偵に依頼をしている可能性...そして今後のこと...。
探偵の方が協力してくれることに感謝しつつも、改めてあの両親の執念に言葉を失うのであった。
帰り道の中、きっと色々考え込んでいるであろう玲ちゃんに声をかける。
「大丈夫。俺が絶対守るから!」というと、優しい笑顔で微笑むのだった。
きっと不安で、怖くて、申し訳なくて、いろんな感情がその小さな体の中を埋め尽くしているだろうことは何となく分かった。
頭を撫でるとまた少し無理したような笑みを浮かべる。
「...無理して笑わなくていいよ?俺の前では全部曝け出していいから」
すると、服の袖を握ってくる。
その手は...震えていた。
◇探偵事務所
「話すとは思いませんでした」と、私は率直にそう告げる。
「...もちろん迷ったよ。けど、いくら悩んでもやっぱり味方しない理由が...見当たらなかった」
「いやいや、あるでしょ?メリットは。お金とか今後のことを考えれば、黙って彼女を引き渡す方がいいに決まってます」
「...そうかもな。でも、俺は...なんで今ある探偵事務所に入らなかったのか...なんで自分で立ち上げようと思ったのか。いや、それになぜお前のようなポンコツを雇ったのか...。そこには俺なりの正義があったからだ。探偵だから?依頼だから?仕事だから?そんな言葉で片付けていいわけがない。わけがねーんだよ」
「...それはご自分の過去のことを言ってます?」
「...あぁ、そうだよ。俺の...過去のことだ。俺の家族はとある探偵にメチャクチャにされた。探偵...擬きだった気もするがな。いわゆる、別れさせ屋ってやつだよ。父さんの元カノだったらしいんだが...ありもしない浮気をでっち上げて、幸せな一家を全部ぶち壊して...去っていったあの悪魔。あんな風になりたくなかったから、いまここにいるんだ。ここで見過ごしたら俺はあいつと変わらないだろ」
そんなことを呟くと、「いいねぇ、それでこそ王子ですよ」と助手が笑う。
「...お前はいいのか?」
「何がですか?」
「ここで働いても未来はない。言ってしまえばこれはただの俺の自己満の探偵事務所に過ぎない。ここでやってきたことはきっと他の探偵事務所でも役に立つ筈だ。辞めるなら早い方がいいだろ」
「じょーだん。私は王子がいるからこの探偵事務所に入ってきたんですよ」
「...あぁ」
「解決しましょう」
「...あぁ」
「その時、私は知っていることを全てお話しします」
「...知っていること?」
「はい。あの事件について...もね」
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