能あるボクは爪を研ぐ

にゃんぺろ

幼少期

第1話 醜い貴族の子


剣と魔法の世界


様々な種族が暮らすこの世界では

それが当たり前であり

誰1人として疑問を抱くこと無く生活している



そう、ボク以外は誰も…



・・・・・・・・・・



何がきっかけなのかはわからない。


ボクが5歳の誕生日を迎えた日の夜。

失った記憶を突如として思い出した…そんな感じの夢を見た。


誰だろう…

鏡に映るこの国では珍しい黒髪の青年は?

いや、これは夢の中のボクか?


え?

いきなり場所が変わっ…


そこには見たこともない四角く巨大な建造物が所狭しと並んでいた。


記憶に無いはずなのに懐かしいようなその光景はまた次の瞬間に変わる。


建造物の一番上!?

凄い!なんて高さなんだ!

そうして見渡した夜の街はキラキラと輝いておりやはりどこか懐かしい…


これは転移の魔法なのか?


いや、転移ってなんだよ。

転移魔法なんてアニメや漫画の話だろ。

ん?アニメ?漫画?

…知らない。知らないのに知ってる?

いやいや、聞いたことも無いのになんでボクは知ってるんだ?


魔法じゃない…テレ…ポート?

瞬間…移動…


なんだこれ??


頭の中がグチャグチャだ


無理やり何かを混ぜ合わせてかき混ぜられて…


瞬間移動

念動力

透視

千里眼

精神感応

・・・・

これは!?

この身体の能力?


地球…日本、人、そして文化


次々と知らない言葉がその内容と共に浮き上がってくる。


入ってくるんじゃなくて浮き上がってくるんだ。


最後に浮き上がってきたのは

仲間に背後から刺された記憶ビジョン


「レン、お前は強くなりすぎた。

組織のお偉いさんがお前のそのチカラを脅威と判断したんだとよ。

お前の事は嫌いじゃなかったが…

これでサヨナラだ。」


刺したナイフを捻って言葉を発する余裕も与えてもらえる事も無く見事に即死だった。


勝手な事を…

今まで散々そのチカラを利用してきたクセに。




そしてボクの二度目の人生の幕が上がる。



・・・・・・・・・・・


レオン=メイザルグ


メイザルグ伯爵家の次男として生まれたボクは5歳になるこの日まで悪戯オークと呼ばれていた。


3歳までは母親に似て美しく愛らしい容姿だったのだがある日突然高熱を出して寝込んでしまった。

原因がわからずに数日間も生死の境を彷徨い3歳児の体力は限界を迎えようとしていた。


藁にもすがる思いで街にきていた旅のまじない師に相談した両親だったが…


「これは…のろいですね。」

のろいだと!?」

「あぁ…そんな…私のレオン」

まじない師よ、なんとかできないだろうか」

「私にはこのようなのろいをとく事は出来かねます。王都の大聖堂におられる聖女様ならこのようなのろいなど容易く解呪できるでしょうが」

「そんな!なんて事だ…王都まで行くには馬車で急いでも3日だ、この子の体力が保たない」

「ただ、生き残る方法が無いとは言いません」

「なに!助かるのか!?もうこの子は体力の限界なんだ!どうか助けてはくれないか!」

「お待ちください伯爵様。

生き残る方法とは言いましたが、結果どのような事になるのかは私にもわからないのです。」

「なんだと?どういう事だ!」

「なんでもいいわ!この子が助かるなら!生きてくれるのであればわたくしの命を使ってでも助けてあげたいの!!」

「わかりました。そこまでおっしゃられるのであればこののろいに抵抗できるようにお坊ちゃんの生命力を強くするまじないを施しましょう。ですがそれもどこまで保つかは神の御心次第です。」

「かまわない!やってくれ!!!」


まじないを施したところ熱が少し下がり始めた。


「おお!少し顔色が戻ってきたぞ!助かるのか!」

「あぁ、レオン!良かった」

「私の力ではこれが限界です。長くは保たないでしょう。早急に王都の大聖堂へ行かれることを進言させていだだきます。」

「今から発つ!マイケル!丈夫な布を持って来てくれ!この子を私の体に固定して馬上でも落ちないようにする!」


すぐに出発した伯爵は各街で馬を替え無休で王都へ向かった。


こうしてなんとか王都にたどり着いたボクは当時6歳だった聖女様に解呪してもらい一命を取り留めたのだ。


まじないの副作用を残して。


・・・・・・・・・・


そして現在。


5歳の誕生日の翌日。

目覚めるとメイドが忙しく動き回っていた。


「レオン様、お目覚めになられたのですか?珍しく1人で起きられたようですね。」

「うん、おはよう」

「……え?」

「うん?」

「レ…レレ…」


ほうきのオジサンか?


「レオン様が挨拶したぁぁっ!!」


ドタバタと部屋を飛び出していくメイド。

悪戯オークが挨拶したんだ、そりゃ驚くか。



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