𐎢‎𓊆148録𓊇𐎽 気持ちの準備


まぁ…………活動者、芸能人に限らずとも組織による魔法というのは誰しもがかかっている状態にある。


表に自分という存在をアピールする仕事をやっている人達が目立っているだけで、大手企業で実績を残して「自分一人でも何とかなる!!」と意気込んで起業してみると、会社として一切成り立たずに、簡単に倒産させるという人間は少なからず居る。


成功体験を自分だけの力と勘違いした人間の末路と言える。


どんな成功体験も、自分一人でこなせる事の方が珍しい。ほぼ皆無に近いといっても過言ではない。


自分の力だけで夢を掴み取る事が出来る人間なんて居ないと思っている。どんな体験にも絶対に自分以外の誰かが関わって、その人達のお陰で成り立っているものだと思っている。


それを心に留めている人達は、どんなにドン底に落ちても誰かが助けてくれる。逆に、自分の力だと思って「自分は凄い人間なんだよ!!」と振る舞っている人間は、いざ落ちてしまった時にどこまでも転がり落ちていく。


しかし、どんなに横柄に振る舞っているような馬鹿でも、死ぬ時まで1回落ちることも無く好き放題のままに生き続けることもあれば、どんなに良い人でも周りの人間に恵まれ無さすぎて、どこまでも落ちていって………そんな世の中に悲観して、そのまま自殺してしまうという人だっている。


因果応報も当たり前に起きるが、同時に理不尽ということも同じくらいに起きるというのは仕方無い。


運も実力のうち、とはよく言ったものだ。実力であり、才能でもある………運命に見捨てられたか、愛されたかの違い。


その違いが理不尽を生み続けるのだろうと思うと、どうすることも出来ないツラさばかりが募っていく。



「あっ、話は変わるんですけど…………今日の依頼の話についても色々と聞いていいですかね?」


「はい、なんぼでもどーぞ」



ミーシャちゃんが話を切り替えて、今度は今日の工場の件についての話になった。


配信をリアルタイムで追っていたとは言えども、現地に居たわけでもないので、分からないところは沢山あるのは当然。



ミーシャさんが聞いてきたのは、私達が対峙してきたメインの敵…………千手観音やタキシードモジャンボ、フクロウ社長などについての情報だった。


特に気にしていたのはフクロウ社長についでだった。アレが社長だというのは配信で追っていたが、何故廃業した自分の会社の工場に住み着いていたのか………という不可解な行動に疑問を抱いていた。



確かに…………わざわざ工場に住み着いていてるような振る舞いをしていたのは不思議な事だ。ミーシャさんに言われるまでは特に気にも留めていなかった。


目の前に出てきた敵を殺す事しか考えていなかったので、本来ならば違和感を覚えるべきところでも完全にスルーしていた。



その程度の意識でフクロウ社長とは戦っていたので、フクロウ社長の言動そのものにも意識を全く向けていなかったせいもあり、何を言っていたのか殆ど覚えていなかった。


配信のアーカイブを見返してみても、配信の中で得られる情報以上の事は勿論無い。そこにプラスアルファとなるような情報も私は持っていなかった。


フクロウ社長の戦闘の様子を改めて見て、自分でもやった覚えのないことも多く、フクロウ社長に関する情報を提示する以前の問題だった。



「うーん、なるほど………ゆみりさんは、これ以上何も分からないって感じみたいですね。ありがとうございます」


「申し訳ないです」


「いえいえ、色々な物事を同時にやれという方が無理難題です。しかも、あのように死と隣り合わせ…………いつ死んでもおかしくないような状況で、五体満足の健康体で帰ってこれたこと自体が奇跡のようなものです」


「ミーシャさんと話していると、自己肯定感が少しずつ上がっていきそうな気がしますわ」


「あまりに卑屈にならないでくださいね?」


「はい」


「それで・・・・・・楓夏依さんは…………どうですかね?実際にトドメを刺して、USBメモリの方に取り込んだみたいですが····················何か、知れたことってありますか?」


「無ぇっすけど。でも、私の推測でな………神とか、そういうのになってくるんじゃないんですかね?実際に取り込んでみて、あの化け物フクロウから感じる力は、とんでもなくデカいモノですから」


「なるほど」


「それと、最後に私達に送り込んできたアンドロイドと同じ力を感じました。あのアンドロイド…………おそらく、あの化け物フクロウが最後っ屁として死ぬと同時に発動する術式か何かを組み込んで、それが工場内での最強の生物の性質をコピーするというモノだったんだと思います」


「ありがとうございます」


「私とゆみりで、明らかに話し方が違うのは触れないでおきますわ」


「そう言ってる時点で触れてるじゃないですか」


「···································テメェさ、なんでそんなに喧嘩腰なんだよ、何?殺されてぇんか?殺されてぇなら早く表出ろよ。なんだったら、引きずり出してやろうか?」

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