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いろいろ悩ましいけど、仕事はしなきゃいけないし、明日はやってくるわけだし。

それに今は発表会で頭がいっぱい。


まずは歌詞を覚えなきゃ。メロディはもう覚えたけど英語の歌詞は簡単じゃない。

意味をかみしめながら覚える。ああ、英語がしゃべれたらなあ。


今日は会社のあとさきおのうちにおじゃまする。


わんころもの激しい歓迎のあと、さきおに歌を聴いてもらう。

なるべく歌詞を見ないで歌う。


静かに聴いてくれるさきお。


「素敵。」

「ありがとう。」

「もう発表出来そうね。」

「まだ全然よお。歌詞も覚えきってないし、サビの前が上手く歌えないの。」

と言って楽譜を見せる。

「ここのところ。」


さきおの家にはピアノがあるから、そこの旋律をピアノでなぞる。

さきおも一緒に歌う。

さきおの声は優しい声。私は大好き。

発表しないからもったいないけど、私だけが聴くことが出来る特権。


お母さまがご飯出来ましたよと呼びに来てくれる。


ちょっと遅めの夕食を共にする。


「お母さまは音楽やられてたんですか?」

「ピアノぐらいかしら。」

「歌は歌わないんですか?」

「歌は苦手ね。遺伝しちゃったのかしら。」と言ってさきおを見る。

「そんなことないですよ。私は好きです。」と言って私もさきおを見る。


お母さまは美しくて楚々としている。


お母さまと話すのがいつも楽しみ。

自分の母親とは大違い。

自分の母親は明るくて元気でちょっとがさつで、いやちょっとじゃないか、今何してるんだろ。

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