第28話
ザガンを始末して、数日が経った。
最近、ノルは忙しい。
デイドラの配下である
王都以外の街で殺した人々の死体を荷車に積んで運んでくるのだ。
だからノルは毎日のようにアンデッドを作り続けている。
その間、アシルは地下牢にいる者達の世話を焼いていた。
人間たちの事など、魔王軍の面々は誰も気にしていない。
その扱いが明らかに餌に対するものではないとしても、誰も見に来る事はないので疑問は抱かれない。
「……あ、ありがとう、
「……れ、礼なんて言わなくていいの。信用してはダメよッ」
「……で、でも、
ヘレナと共にザガンに血を吸い尽くされそうだった少女のアシルに対する認識が変わり始めているようだった。
毎日、食料と身を清める用に桶に入った湯、それから退屈に思わないように城にある書庫から本等を運んだ甲斐があった。
とは言え、他の貴族の女性たちには純粋な善意からとる行動も不気味に映るらしく、信用されている様子はない。
それはヘレナも同じだった。
ノルとの共同部屋に帰ってくると、彼女はベッドの上でねそべりながら読んでいた本を枕の下に隠し、すぐに起き上がって睨んでくる。
「……つ、ついにわたくしを食べる時が来たのですか」
「……違う。また少し出てくる。俺かノルが帰ってくるまでは部屋のどこかに隠れているんだ」
「……」
ヘレナは何か言いたげな表情のまま俯いた。
しばらく待ったが、何か言う気配はない。
無言のまま掛け布団を頭まですっぱりと被ったのを見て、アシルは部屋を出る。
腰に巻いたベルトに、新しい武器である吸命剣パンドラを下げるのを忘れずに。
「……引き渡しは終わったか」
城の廊下にある窓から外を覗くと、そこではデイドラの配下達――総勢十名程の身体中に突起が生えている骸骨兵、
王都周辺にある二つの街を滅ぼし、住民全てを皆殺しにしただけあって、死体の数は一回では運びきれない。
最近は毎日のように運んでくる。
しかしもう死体の追加は必要なかった。既にノルが生み出したアンデッドのほうが、アシュトンが生み出したアンデッドの数を上回っている。
このままアンデッドを作り続け、いざ反旗を翻すときにノルの魔力が万全じゃないほうが問題だ。
(丁度良い……アシュトンに挑むにはもう少しレベルを上げておきたいところだしな)
存在力を吸収するうえで、次の獲物はあの
ちなみにアシルの現在のステータスは、
名前 アシル
種族:
Lv31(17305/203860)
中位
Lv27(750/30400)
体力:B
攻撃:B
守備:B
敏捷:C
魔力:C
魔攻:C
魔防:D
<
・
<
・
・
<
・闘気斬
・闘風刃
進化解放条件:レベル50
上位
生前、超えられなかったレベル30の壁は、種族レベルのほうは呆気なく超えた。
雑魚だったとはいえ、中位アンデッドである
ただいずれも剣を使わず、闘気のみの使用だったので
ステータスを確認し終えたアシルは人知れず王城から姿を消した。
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