第5話 炒飯焦がしました…
気づけば窓からは光が消えて、月だけがが部屋に微かな明るさをくれる。
「ご飯できたよ~~♡♡」
姉の僕を呼ぶ声が聞こえると、立ち上がる。真っ暗な部屋で電気をつけることを忘れ、背中に確かな違和感よりむしろ痛みを感じるほど長い時間硬い床に寝転がっていたようだ。
「お腹すいたぁ。今日のご飯は??」
「お腹すいたすいたのぉ?♡かーわい♡簡単に作れる炒飯にしてみたの。」
「お、やったあ~」
明るいふりをするのだ。さっきのことなんか気にも留めてないふりをしなければ…。キスされた事で芽生えてしまった姉への意識。快不快は関係なく、姉を性的に意識してしまったことを悟られるわけにはいかないのだ。感情を必死に取り繕ることは心に大きな負荷を与えようで、自分のテンションに違和感を覚えてしまう。
「「いただきまーす。」」
腹の立つことに幼少から同じ教育を受けてきた僕ら姉弟は席について”いたただきます”を言うまでの間が一緒なのだ。ハモると姉はニヤニヤするし……。このイライラを蓮華にこめて炒飯にぶつける。
「ん!美味しい!」
「ふふふ、嬉しいなぁ♡お嫁さんに欲しくなっちゃうかな??♡♡」
「うん、いや、何言ってんだよ!!ねーちゃん、普段料理なんてしないのに上手だねぇ。」
「あぁ、褒められると多幸感がすっごい♡♡褒められたら、もっともっと頑張りたい!、もっと弟君に認められたい!ってガムシャラに頑張るよ?♡」
「褒めないどこう…。」
「ふふふ、おねーちゃんはねー、弟君の都合のいい女になりたいの♡呼ばれたら何時でもどこでも飛んでくし~、やって欲しいことがあれば絶対に手を抜かないわ♡♡ね、完璧でしょ?♡♡」
「普通の姉でいてくれ…。毎年、初詣で願っているのに神は何してんのかなぁ…。」
「神様は姉弟で結ばれる事を望んでいるはずよ?♡♡そういう話の神話多いもん♡♡」
「あんたのせいで毎年神へのお願いの1つが無駄になってるんだよ。七夕と初詣くらいしかないのに…。」
今年はもっと頻繫に神社行こう。回数を増やせば一個くらい叶うかもしれないしな。姉が普通になるよりも叶えるのがめんどくさそうなお願いばっかりして、消去法的に叶えてもらおうかな…。"全ての水がドクペ味になる”とか良さそうだ。
「神じゃなくたっておねーちゃんが願いを叶えてあげるよ?」
「お願い!!普通になって!!お願い!!」
両手を固く結び何度も”お願い”と連呼する。
「無理♡♡」
「あぁ、終わったぁぁ…。」
「大人しく私のご主人様になって♡いっぱい命令してよ♡♡」
「姉と主従関係なんてやだよ、比喩表現とかじゃなくてガチの主従だし。」
「うんっ♡本気の服従だよぉ♡♡今すぐ○裸土下座で奴隷宣言しようか??♡♡」
「いや、全力でやめてください。」
「はぁ、、ほんっとじらすよね、♡物心着いてからずっと私をガチ恋させて縛り付けておいてさ♡♡」
「縛りつけてたことはないし、そもそも弟にガチ恋すな。」
「弟君と食べるご飯は美味しいなぁ~♡ごちそうさまでした。」
「僕もごちそうさま。美味しかったよ、お腹いっぱい。ありがとね。皿洗いくらいやろうか?」
「うん、お腹いっぱいになったならよかった♡絶対にやらないで!!弟君はなーーんにもしなくていいんだからね♡♡」
「それは普通に申し訳ないよ。」
「いいから!!お風呂でも入ってきてよ。」
今お風呂に入れば、姉に侵入されることはないだろう。それは都合のいい状況だ。
「了解、ありがと。そんじゃ、風呂入ってくるわ。」
「はーい。そろそろ湯船できるよ~。」
いつの間に風呂の用意までしたのだろうか。悔しいが、姉の従者性能は本当に高すぎる。別に命令なんかしたくないし、主人にもなりたくないのだが、楽な生活に惹かれるのは人間の性なのだろう。服を脱ぎ終わるころには”ピピピピ”とお風呂が涌いた音がする。まじで完璧じゃん。今日の風呂は数少ない一人の時間だ。思う存分にのんびりしてやろう。
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