帰路記

沼坂浪介

帰路記

白雲に輪郭線乗せる山際や


文月やあつがなつくてせみうるさ


鈴ならぬあわてんぼうの赤とんぼ


名月や過ぎてまんまる菊の月


二連星瞬く寒空乱視のせい


冬山路見下ろす街に朝陽さす


あさぼらけ雪は溶けたか吉野山


冬茜山の向こうに帰るのか


春麗ら犬の足跡雨上がり


金星と木星ならんで金木犀


山桜まだら模様のねこみたい


春麗ら水面に浮かぶ鴨の尻


春宵のベテルギウスをかわす船


野良猫とだるまさんころんだ夏の夕


恋流れ梅雨になくなよホトトギス


金網にとまる燕の巣立ちかな


池凍る越冬にきた鴨の謎


参道に二月の蝉とオルゴール


山笑うベランダトマト植えてみた


待ちきれず探梅に出て枝急かす

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