攻略学園の落ちこぼれ〜ダンジョンが蔓延る世界で自由に楽しく生きます〜

ネリムZ

第1話 歴代最弱!

 2020年、『神災』と呼ばれる災害が発生した。


 原因不明の迷宮ダンジョンが出現。入口ゲートを出てモンスターが溢れかえってしまったのだ。


 弱いモンスターなら対処できたが、強力なモンスターに負けて行った。


 ゲートの出現位置によって核兵器なども使用できずに滅んだ国もあったらしい。


 モンスターに人間が滅ぼされる一歩手前。


 絶望の中で希望の光が芽生えた。


 能力に覚醒した人間が現れたのである。


 能力者は次々に出現してはモンスターを倒し、文明の再生を始めた。


 能力の覚醒原因も未だ不明。


 多種多様な能力により現在3000年。インフラは充実し2020年とは比べ物に成らない兵器なども作成された。


 能力者は覚醒した時点で国に登録し管理される仕組みが現代ではできている。


 脳内に埋め込まれるナノマシンによって逆らう事を許されない。逆らったら脳の機能が停止するのだ。


 能力者は一般人と違って兵器に匹敵する力を持つ事がある。国民を安心させるための材料。


 人権侵害とか色々の問題で騒がれているが、生活の保証や免税特権など。


 国のために戦う事を義務として与えられるが見返りも十分。


 ルールを守った中の自由は一般人よりも優れていると私は思う。


 そして今、3000年5月31日、私達はダンジョン攻略をしようとしている。


 これは義務でもあり生活を充実させるためのモノでもあり、将来のための訓練でもある。


 能力者は攻略学園と言う場所で学ぶのだが、その生活の一環としてダンジョン攻略をする。


 高等部に進級或いは入学と同時に本物のダンジョン攻略が可能なのである。


 ダンジョンはゲートの色で難易度が分かれており、下から白、緑、青、赤、紫、黒で変わる。


 私達が向かっているのは白色のゲートなので最も簡単なダンジョンとなっている。


 「そろそろ着くね」


 「そうだね」


 私達は軍用車両に乗ってダンジョンまで運ばれている。外の景色は見れないのが難点。


 最初に言葉を出したのは我ら攻略学園愛知区高等部チーム53班のリーダーであり幼馴染の竜宮院八重りゅうぐういんやえ、ニックネームでリエちゃんと呼んでいる。


 日本全国に攻略学園は16校ある。


 「到着しました」


 運転手さんが停止させ私達に言葉を出す。


 「それでは、気を引き締めて行きましょう!」


 「おー!」


 「緩いっ!」


 リエちゃんと私の他にも二名仲間がいる。


 立花天音たちばなあまねさんと八代香織やしろかおりさんである。


 全員女子なのは学園が男女別で分けているから。男女間の問題を起こさせないための処置らしい。


 ゲートの見た目は中が少し反映されているので、外観で中身がどんな感じなのか予測する事ができる。


 だが、事前調査はされているためにどのような形のダンジョンなのかは既に知っている。


 ダンジョンには二種類あり、迷宮型と自然型があって今回は前者。


 中は迷路のように入り組みモンスターやトラップなどがある。


 簡単に言えばゲームのダンジョンと差程変わりない。だからダンジョンとか単純なネーミングになっているのだ。


 武器を担ぎ準備を終えたのを確認したリエちゃんは電子生徒手帳を操作してドローンカメラを起動する。


 学生は攻略を配信する義務がある。攻略の観察及び監視や一般人の娯楽とダンジョン攻略は可能と言う勇気を与えるためとか、そんな理由だったはず。


 成績とかにも関わるし、私生活をより充実させたいなら配信で得られるポイントは重要。


 「高等部一年53班ダンジョン攻略に入ります」


 ゲートを通過すると風景はガラッと変わり、少しジメッとした迷宮になる。


 洞窟みたいな空間。


 生徒手帳を見れば『機能停止』と言う文字が浮かび、それはナノマシンの機能が一時的に停止した事を表す。


 能力を使っても問題ないと言う事だ。


 「それでは、いつも通り目標はボス討伐。ダンジョン攻略始めます!」


 ダンジョンはボスを倒せば消える。


 だけどまたどこかで新たなダンジョンが生成される。その度に攻略する。


 一般人よりも強い能力者がその役目を負うのだ。


 昔で言うところの自衛隊や警察は全て能力者がやっている。


 そして私達の班は高等部に進級してから編成され、何度か攻略を経験している。


 だが、ボスは一度も倒せた事がない。ボスの居る場所まで行けた事も無いのである。


 それが普通なのかと言われたら、違う。


 一ヶ月もあれば学生は白迷宮は攻略できるのが普通なのだ。それだけの武器と訓練は与えられる。


 「ゴブリン⋯⋯二体」


 八代さんが小さく言葉に出す。


 彼女の扱える能力は【罠透視】と【敵察知】である。


 【敵察知】はモンスターの場所を把握する能力。


 「クロちゃん前衛お願い」


 「まっかせてー!」


 薙刀を構えた私は地を蹴って接近する。


 ゴブリン二体が持つ武器は棍棒だった。


 ゴブリンの力は高校男子の平均くらいはある。


 だけど、身体能力を強化する能力者の私は能力を発動させなくてもその攻撃を防げる。


 強化系能力者は能力に耐えるために肉体が頑丈になり身体能力も人並み外れる。⋯⋯あくまで仮説らしいけど。


 棍棒の攻撃を防ぎつつヘイトを集め、アサルトライフルを構えたリエちゃんが照準を合わせる。


 「私は右を。立花さんは左をお願いします。八代さんは警戒を!」


 立花さんの能力は【火系統魔法】と言うのである。


 火を出して飛ばす事ができる。


 ダダダダと連射音が響き右のゴブリンが蜂の巣になる。


 「能力発動【火系統魔法】『ファイヤーボール』」


 立花さんとゴブリンの距離は12メートル。


 「まずった」


 普段なら私がもう少し近づけるけど二体横並びだったために失敗した。


 火の球体はゴブリンに一直線に向かったかと思われたが、途中で軌道を変えて私の方にやって来る。


 「ごめ⋯⋯」


 「大丈夫っ!」


 火の球体を薙刀で破壊し、ゴブリンの棍棒を左手で防ぐ。


 立花さんは魔法コントロールが苦手で10メートル以内でしか狙い通りに当てられない。


 二ヶ月近く仲間をやっていれば慣れる。


 「せいっ!」


 ゴブリンの背後に近づいていた八代さんがダガーを取り出して首を刺した。


 そのまま横に動かして絶命させる。


 モンスターは倒すと塵になり魔石を落とす。血肉はダンジョンに吸収されると言われてる。新たなモンスターを作るため⋯⋯って言う説が今のところ有力。


 「はぁはぁ」


 体力的疲れは無いけど、精神的に疲れる。


 モンスターが倒れる光景はまだ慣れない。怖いんだよね。ほんと。


 「ごめんなさい」


 「大丈夫だよ。ほら、私は無傷でーす」


 「クロちゃん痛みとかは無い?」


 「全く無いよ。私の身体は丈夫だからねっ!」


 笑って答えるが、リエちゃん以外の顔は暗いままだ。


 仲間になってから日は浅くないと思うけどなぁ。かなりの壁を感じるよ。


 「魔石回収しとくね」


 リエちゃんはリーダーだけど一番雑用を熟す。


 私も手伝いたいけど、倒した直後の魔石はどうして握れない。


 魔石はゲートの色と一緒。


 「これで二十ポイント」


 バックパックに入れてから再び移動を再開する。


 私は前を歩きながらチラッと後ろを飛行するカメラを見る。


 今日の配信は何人いるんだろうか。


 私が攻撃を防ぎ、リエちゃんと八代さんが倒す。


 立花さんは魔法を四回使うと魔力切れを起こして使えなくなる。既に四回使って三体倒している。


 二時間の探索時間が経過して、宝箱を発見した。


 「良かった。迷子にはなってなかった」


 リエちゃんがほっとする。


 同じ景色が続くので紛らわしくなるよね。ちゃんと地図は書いてあるけど。


 事前調査もボス部屋までは調べないからね。調べならがら攻略する。


 問題が発生したら助けが来るだろう。そのためのライブ配信だ。


 「八代さんお願いできますか?」


 「うん」


 リエちゃんの言葉に返事をしてから八代さんが宝箱に近づく。


 彼女はトラップ解除が得意なのだ。


 その間は休憩。


 「能力発動【意志共有】」


 リエちゃんが能力を発動する。半径二十メートル以内で任意の人達で脳内会話が可能になる能力だ。


 その時の違和感も無ければ本人もエネルギーを消費しない。


 激しい戦闘とかでは指示が行き渡らない事もあるので、優秀な能力と言える。


 “久しぶりに見に来た。他に誰かいる?”

 “あい。まぁ学生らしい攻略が続いてるぜ”

 “そうなんや”

 “八代の罠解除か。長いんだろうなぁ”


 警戒しながら身体を休めている。


 八代さんは真剣に解除を試みて、三十分が経過している。


 流石に長いのでは?


 「すぅー。すぅー」


 呼吸がおかしく肩が小刻みに震えている。八代さんがトラップを解除する時、十分を超えるとこうなる。


 それでもちゃんと解除できるしピンチの時はすぐに助けに入る。


 カチャ、そんな音が宝箱から聞こえた。


 「開いた!」


 私がテンション上げ上げで言うと、八代さんは短く答えた。


 「⋯⋯爆ぜる」


 「能力発動【怪力】!」


 私は力を上げる能力を発動して皆を抱え上げる。


 「能力発動【俊足】!」


 スピードを上げてこの場から離れる。


 これも何回か経験しているので慣れっこだ。


 「にっげるよおおおお!」


 刹那、爆音が大きく響き渡り爆風に煽られる。


 『すみません』


 脳内会話に流れる八代さんの声。


 『今日はこの辺で撤退リタイアしよっか』


 リエちゃんの言葉に反対意見は出なかったので、抱えたまま速攻で帰る事にした。


 “今日もリタイアか”

 “うんじゃ退散”

 “頑張れよ”


 ゲートから抜け出し、ナノマシンが起動した事を確認する。


 「ふひー」


 「クロちゃんおつかれ。下ろしてくれて良かったのに」


 「私が運んだ方が早く帰れるからね。汗拭いたら車乗ろ」


 私達は攻略学園へ帰還する。


 攻略学園は全寮制で全てが学園内で解決するようになっている。


 「うぅ。今日もボス部屋まで行けなかった」


 「そうだね。次は行けるよ頑張ろっ!」


 「うん。頑張る。⋯⋯また弾補充しないとなぁ。弾くらい無料にしてくれたら良いのに」


 リエちゃんが愚痴を零す。


 翌朝、6月1日。


 月の初めは学内ランキングが更新される。


 チームの総合ポイントが張り出されて順位付けされている。


 憂鬱な日だ。


 私達の班は下を見ればすぐに分かる。全部で70チーム。


 『70位53班520ポイント』


 ダントツの底辺である。一個上の班は2100ポイントである。


 1000は超えていると言われているこの時期に私達は半分までしか行けていない。


 簡単に言えば『落ちこぼれ』のチームなのだ。





◆あとがき◆

お読みいただきありがとうございます

新連載始めました。超能力社会の1ページをお見せできるように精進致します。

応援よろしくお願いします。楽しんでいただけるよう死力を尽くします

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