恋愛応援バイト、始めます

あつかち

第1話 恋愛バイト、始めました

恋、それは青春を謳歌するにおいて最も大切なもののひとつだろう。

誰かに恋をし、その人に好かれようと努力する。その結果がどうなっても、人として成長することができる。

しかし、いくらどっちにしろ成長するとはいえ、やはり恋は実らせたい。誰もがそう思っている。

そして、それに目を付けた一人の男子高校生がいた。



「それではさようなら」


『さいなら~』


先生の帰りのあいさつにみんなが雑に答えてそれぞれの目的地へ向かった。


甘原第一高校、略して甘高の1-7。どこにでもあるような普通のクラスだ。荒れてもなければ大人しくもない。まさに可もなく不可もなくってやつだ。ただ一つ、一つだけ他のクラスとは違うところがある。

カップルがいない。中学の頃に先生から高校生になったらカップル増えるぞと言われていたが、あれは嘘だったのだろうか?いや、他クラスはもうカップルができてるらしい。このクラスが異常なんだ。しかし、高校生活が始まって早二ヶ月、遠足や体育祭といった一学期のメインイベントが全部終わった今、とてもじゃないが今からどこかクラスでカップルが誕生するとは思えない。いや、一応誰が誰のこと好きとかいう情報はたまに入ってくるし意外とそろそろ誰か付き合うかもしれない。ま、そうだとしても俺には全く関係ないが。


「青山、すまないがちょっと放課後残ってくれないか?」


いきなり担任の一ノ谷先生に言われた。


「あ、はい分かりました」


俺、知らない間になんかやらかしたか?


放課後に先生に呼び止められるなんてめったにない。心当たりがないので大丈夫だと思いつつもどうしても悪い方向へ考えてしまう。

俺は、自分の席で頭を抱えながら時間が過ぎるのを待った。

それから三十分ほどたっただろうか。生徒が全員教室から出ていき、俺と先生だけになった。


「で、俺、なんかやらかしちゃいましたか?」


俺は単刀直入に聞いた。


「いや、別に青山は何もしていない。むしろ何もしてないから呼んだ」


「何もしてないから?」


俺はこれまでの学校生活を思い返してみた。提出物はやった。委員会活動もやった。俺がやってないことなんてあるのか?


「すいません心当たりないっすね」


「まぁ、無理もないよ。青山、財布今持ってるか?」


「ないです。金ないんで」


「電子マネーは?」


「そもそも使ってません。強いて言えば定期券に十円くらい入ってます」


「それだよ」


「はい?」


「お前、金がなさすぎるんだよ」


予想してない言葉が先生から出てきた。


「一応この学校バイト非推奨だから先生がこんなこと言うのもあれだけどな、バイトしたらどうだ?」


「バイト…でも、別にちゃんと生活できてますし…」


すると先生がため息をつきながら言ってきた。


「お前、遠足の時交通費しかなくて昼飯食わなかったんだろ?班員から聞いたぞ」


まじか誰だよ言ったやつ。


「別に部活もやってないんだし放課後暇なんだろ?学生のうちに働くことも俺は大切だと思うしバイトしてみるべきだと思うよ?」


「はい、考えます」


「じゃあ、もう帰っていいよごめんね急に残しちゃって」


「いえ、大丈夫です。それじゃあ」


俺はそう言って教室を出た。


バイト、か。


これまでしようかどうか考えたことはあった。しかし、正直言ってめんどくさいし、興味のある仕事もなかったという理由で面接にすら言ったことがなかった。しかし、親は、俺が高校に入学してから自分で稼げと小遣いをくれなくなってしまったので、正直言って金がないなんてレベルではない。多分来月分の定期は買えない。

そんな時に先生からのあの話。バイトを始めるにはこれ以上ない機会かもしれない。俺はスマホを開いて家の近くのバイトを探してみた。


ファミレス、コンビニ、ファストフード店、ドラッグストア。だめだ。どれも興味すらわかない。


そもそも普段家から出ないで動画とアニメと漫画ばっかり見ている典型的なオタクだ。興味あるわけがないか…ていうか、来週発売の漫画の新刊、買う金ないな…主人公とヒロインいい感じになってきたところなんだけどな…二人の周りはもう付き合ってるのにもう早く付き合っちゃえよもう俺が漫画の世界に入ってくっけちゃおうかな?


ん?俺がくっつける?


そういえば俺のクラス、カップルはいないだけで好きな人がいるってやつは結構いるよな?これで金稼げないか?

幸いにも恋愛に関する知識はアニメや漫画から仕入れてそれなりにはある。俺、カップリングとか大好きだし。


そう思ったらさっそく行動に移そう。俺は学校配布のパソコンを使ってチラシを作った


【恋愛相談から恋愛のお手伝いまで。あなたの恋、お手伝いします】


料金は…1000円超えるとたぶん誰も頼まないだろうし…前払い100円、成功報酬500円。これでもまだ成功して600円か…ちょっと渋いな…そうだ!

俺は、チラシの料金欄に、2週間経過で+200円を書き加えた。これなら2週間で800円稼げる。金欠の俺にとっては十分だ。


俺は、完成したチラシのデータをパソコンに保存し、コンビニのプリンターで残り少ないお金を使ってコピーした。

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