第17-1話


「王妃様は今何処に?」


「ローズ様の不在を確認した後、アイカス神殿の近くにあるシエル庭園に向かいました」


「シエル庭園に?!」


一度、旧王宮に戻り、見目を整えてもらった後、

すぐさま、庭園に向かった。


「王妃様がいらっしゃることは誰も知らなかったのですか?」


「はい、

私たちだけでなく、デミアン邸の使用人たちも存じてなかったようです」


王妃様の訪問が急であったことは、明白だ。


本来、王妃様クラスの方が訪問する際は、

その方の威厳を保つため、盛大に迎える必要が出てくる。


準備する期間を設けるため、前もって訪問の旨を知らせておくのが通例だ。


「先ほど聞いた話によると、

デミアン様から王妃様へ、お手紙を送ったそうです…」


「ただ、返事はなく、諦めていたところ急に訪問されたようです」


「デミアン様が…」


まさか、デミアン様がそのようなことをするとは…

ときに予想外の行動にでる当たり、本当に独特な方だ。


シエル庭園…状況は決して悪くない。


王妃様の訪問は、私たちに希望を与えるのか、

あるいは絶望を与えるのか…


前者であることを願う。


……


シエル庭園の近くは、大衆で埋め尽くされ、

馬車が進めるような状況ではなかった。


貴族の動向に興味のないアンディークの民ですら、王妃様の訪問となればここまで足を運ぶ。


王妃という権威の力を、間近で見ることができたのは貴重な体験だ。


その名が力となる。


護衛と使用人たちに道を開けてもらい、

私はなんとか入口の近くまでたどり着くことができた。


「侯爵家令嬢のピアール・ローズです。

王妃様がいらしたと聞き、ご挨拶に参りました」


「お待ちしておりましたローズ様。

私、王妃様の侍女をしています、メルシダと申します」


「王妃様とデミアン様が中でお待ちですので、

案内いたします」


「お願いします」


メルシダは、不思議そうに私を見ていたが、

そんなことを気にしている余裕はなかった。


庭園の入口で後ろを振り返ると、

大衆の最前列にいたのは、四大名家の当主たちがいた。


よくよく見てみれば、庭園の周りには武装した騎士の他に、見覚えのある服装をした人たちまで警備に混ざっていた。


サレット、ガレットがいつも着ている服、

つまりパシー家が警備に参加しているということだ。


シエル庭園を見る当主たちの目は儚い目をしていた。


これ以上は見過ごせない。

王妃様がお帰りになったら、どんな関係なのかを聞かなければ。


………


シエル庭園は、私が自ら管理している場所であり、

そこらの庭園とは一線を画す。


奥に進むと、王妃様とデミアン様が待っていたように私を迎えてくれた。


デミアン様は、ホットした様子だった。


「王妃様の来訪されたとお聞きし、

挨拶に参りました、ピアール・ローズです」


「ローズ、久しぶりですね。

会いたかったです」


最後に王妃様にお会いした日は、たしかラビラの

19歳の誕生日パーティーだった。


あの頃と今とでは、私は大きく変った。


けれど、

心を落ち着かせる優しい笑顔、王妃はあの頃のままだ。


「話は旧王宮に戻ってからするとして、

ローズ、貴方がこの庭園に再び輝きを与えてくれたのは事実?」


「はい、事実です。アンティークに来てから私が管理を始めました」


「そう…

パドリセンにいた頃から、庭園の管理は貴方の仕事でしたね」


「はい、

今になって気づきましたが、私は庭園の植物に水をあげたり、成長を見守る時間が好きなようです」


「その気持ちは、私にもわかります。

いいものを見せてもらいました、管理のいき通った素晴らしいな庭園です」


「ありがとうございます」


「この2つの花を庭園に入れるのは、珍しいですね」


王妃様は、2つの花を指さした。


薔薇とクローバー。


「そうですね…

この子たちには、少し特別思いがありまして…」


「そうなのですね」


「ただ、1つ気になることがあります…」


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