第11-2話


「ローズ様、農地を見に行く前に会わせたい男がいるのですが、紹介してもよろしいでしょうか?」


「役に立つのなら、是非会ってみたいです」


「腕は、超一流です」


酒屋の裏に入って行ったパウロは、

存在感の強い大柄な男を1人、裏から連れてきた。


この雰囲気…


「この方も、四大名家の…」


「初めまして、ローズ様。

暗殺一家・パシー家当主のパシー・サレットと申します」


「ピアール・ローズと申します、」


「王妃様の寵愛を受けているとパウロから聞いております」


また王妃様の名前がでた。


どういった関係なのかが気になるところだが、

今は目の前のことに集中しよう。


「よろしければ、私も同行してもよろしいでしょうか?」


「もちろんです。

仕事を依頼することになるかもしれませんが、よろしいでしょうか?」


「なんなりと」


私はパウロに教わりながら変装をした。


サレットも慣れた手つきで変装し、顔にメイクで施す。


あっという間に変装を終わらせたパウロ、

その動きの節々からいつものパウロらしさが完全に消え去っていた。


変装の過程を見ていなかったら、

パウロとは絶対に気づけないだろう。


「ところでローズ様、

どうしてオドールを怪しんだのですか?」


馬車での移動途中、サレットに尋ねられた。


「権力に溺れた人間は、私利私欲のためにその権力を悪用します。特にアンディークのような場所では悪用など容易い(たやす)ことです」


「この環境が悪用を促すんです」


「なるほど…」


サレットだけでなく、パウロも興味深そうに数回頷いた。


アンディーク北西部、未開拓の辺境の地に、

私たちの目的の場所があった。


「これは…」


一面に広がるブドウ畑、

その近くにある小さな工場。


私はこの光景を一生忘れないだろう。


「私たちのアンディークで好き勝手やってくれましたね」


サレットは、冷静を装っているが、それでも怒りが溢れ出していた。


「貴方の選択をお聞かせください」


私の選択が、そのまま2人の選択となるのだろう。


「サレット様、

オドールの愚行は見逃せません、暗殺を依頼します」


「終わらせましょう…」

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