第15-1話


『統括者オドール

北の都・リバリフトにに向かっていた途中、

爆発事故に巻き込まれ死亡』


タイトルにそう書かれた外号が発行され、

アンディークは朝から大パニックに見舞われた。


オドールの死は、殺伐としていた私の心を落ち着かせた。


アンディーク中心部、いつも私が通っているシエル庭園から徒歩10分の場所にあるアイカス神殿に私は1人で向かった。


早朝に送られてきたサレットからの手紙。


その手紙の指示通り、

右側の奥から3本目の柱付近にある階段を降り、

その先にある1つの小さな部屋に入った。


「お待ちしていました、ローズ様」


「貴方が、サレットのご子息で」


「はい、パシー・ガレットです。

こと度は、父の命に従い依頼を遂行させていただきました」


この存在感の強さ、サレットにそっくりだった。


この人がオドールを…


「依頼の内容は全て果たしました。

証拠は一切残しておりませんので、ご安心ください」


「流石ですね 」


「当日は、今日のように雨が降っていたので、

絶好の機会でした」


この時期のアンディークは、今日のような雨の強い日が多い。


「一体、どうやって殺ったのですか?」


「オドールが北の都に向かう前日の夜、馬車に大量の火薬を詰め込んでおきました。

早朝、リビーフ大橋で、すれ違いざまに微弱の火がついたマッチを投げ込めば簡単に着火し、私はそのまま川に飛び込むだけ」


「でも早朝にリバリフトに行くタイミングがこんなにすぐに来るなんて…

もう少し時間がかかると考えていました」


「それは、私がそうするように仕向けただけです、偽の召集書をオドール宛に送りました」


「なるほど…」


仮に雨が降らなくても、早朝のアンディークは霧が強く視界が悪い。

そのことも全て、計算していたのだろう。


パシー・ガレット、サレットが認めるだけあって、強力な駒だ。


「これからはローズ様にだけお使いしろと父から

命を受けています」


「本当にいいのですか?」


「それが、私に課せられた任務です」


ガレットは、淡々と答えた。


「それから、他の三家への伝言は私にお伝えください、間に私が入り、効率よく伝えられるようにします」


「助かります」


時間効率が上がり、怪しまれるリスクも軽減できる…

本当に頼もしい方がやって来た。

 

「報酬は仕事内容に見合った金額を必ずお支払いします」


「報酬は受け取れません」


「いや、受け取ってください、

私がそれを望んでいます」


「感謝申し上げます。依頼内容は完璧に遂行します」


こういうタイプの人には、安心して仕事を任せられる。


「さっそく1つ依頼をさせてください」


「相手は?」


「オドールに忠誠を誓っていた柄の悪い男たちです。変に嗅ぎ回られると困るので、できれば、後追い自殺という形で処理しておいてもらいたいです」


念には念を、微弱でも危険分子は排除しなければ。

 

「承知しました。

依頼が完了しましたら、ここに文字を刻んでおきます」


「この部屋は水漏れで、酸性雨が中に入ってきます、この雨の量なら文字はその都度、溶かされていくでしょう」


「雨で溶かす…なるほど。

私がここに文字を刻んで指示を出してもよろしいのですか?」


「もちろんです。

念の為、家のものに神殿を見張らせておきます」


「お願いします。

これから、アンディークは変わっていきます」


「希望は失望と絶望を生み出すだけなので、

あまり期待はしません」


「そうですね、

そう思っていただけるとありがたいです」

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