第2-2話

「お姉様、その目は何?

次期王妃の私にそんなことして許されると思ってるの?」


「本当に憎たらしい」


ミカエラ、

外見だけ見れば、王妃に相応しいのはこの子なのだろう。


私と違い、人の注目を集める主張の強い顔立ち。

1つ1つのパーツは主張が強いが、小さな輪郭の中に収まると上手く調和する。


年下ながら私より整ったスタイル。

体のラインは細いが、出るところは出ていて、その体の起伏が見る人を虜にする。


なにより、私が手に入れることのできなかった

白色の髪。


お父様の琥珀色の瞳はミカエラ同様、私にも遺伝していた。

 

だが、お母様の白色の髪だけは遺伝しなかった。


私の人生をこんな惨めにしたのは、紛れもなくこの黒色の髪のせいだ。


髪色さえ遺伝すれば…


「私も、貴方が憎たらしいわ、世界中の誰よりも」


「何ですって?」


予想もしていなかった言葉が飛んできて、

ミカエラは明らかに動揺していた。


「お姉様さっきからどうしたのらしくない…

頭のネジでも外れたの?」


私の態度に納得できなかったのか、

ミカエラは八つ当たりとして私の肩を強く押した。


「…」


以前なら、そのままお尻をついてしまっていたが、なんとか後ろ足で踏ん張って耐えてみせた。


「パチッ…」


私の体が反射的に動いた。

私はミカエラの頬をかなりの勢いで叩いていた。


ミカエラはそのままお尻をついた。 


叩く方と叩かれる方の立場が逆転した。

 

人を叩くと、こんなにも手のひらがヒリヒリするなんて…初めて知った。


「こっちは全てを失ったの、ねぇ覚悟できてる?」


ミカエラは目に涙を浮かべた。 


こんなことで、涙を浮かべるなんて…


つくづく幸せものだ。


両親から叩かれることに慣れてしまった私は、

叩かれすぎて涙すら出なくなってしまったというのに…


そんなことを思っていると、もう一発叩きたくなってきた。


散々私に酷いことをしてきたんだ、

八つ当たりくらいしても許されるだろう。


ミカエラを無理やり立ち上がらせ、

今度はさっきよりも大きく手を振りかぶった。


「何脅えているの」


ミカエラに向けて放った。


恐怖で体が固まってしまったミカエラは動けない。


ミカエラは体に力を入れて目をつむった。


力を込めた手のひらが、

再びミカエラに触れそうになったときだった。


何者かが後ろから私の腕を掴み、ミカエラへの一発を防いだ。


私が両親にやられているときには、

誰も助けてくれなかったくせに、どうして…


納得がいかない…

手に全力で力を込めるも、ピクリとも動かない。


「やめておけ」


聞き覚えのある声に、すぐに振り返る。


一発を免れ、目を見開いたミカエラも、

自分を助けてくれた人物が誰か確かめる。


「…」


とにもかくにも、運命は私を苦しめる。


怖気付いた表情が見る見るいつものミカエラに戻っていく。


「助けていただきありがとうございます!

ラビラ様」

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