【ホラー小説】怪文書【感想待ってます】

野口マッハ剛(ごう)

第1話 我が子の落書き

 私と妻は職場恋愛からのおめでた結婚だった。周囲の人々からは、やっぱり、そういう言葉と共に、おめでとう、という祝福もあった。


 妻は出産の時に我が子のイラスト、こうなれば良いな的な将来への思いを込めたというものをいつも肌身離さずに持っていた。


 その絵の子どもに顔の表情は無くて、というよりもそもそも顔の部分が赤く塗り潰されていた。私は気味が悪いので妻に理由を聞いた。妻は笑顔で私はこの子を産んだら死のうと思います。そう答えたのだ。


 私は縁起でもない、そう妻を怒った。


 そして、妻は元気な男の子を出産した。私と妻は新たな家族を迎えて三人一緒にマイホームでの生活を送っていた。


 私は育休を取得できる限りはそうした。妻の子育ての負担をちょっとでも減らすためにである。


 男の子の名前は今更ながら言うとリョウである。かわいい我が子の落書きは親バカでいつ見てもピカソのようだ。


 リョウは成長して思春期の中に、家の壁に落書きをして回った。人物画だと思われるが、顔の部分が赤く塗り潰されていた。私はどこかで見たような? そう思い出そうとして思い出せない。


 私は親バカで妻は我が子の落書きを怒った。


 私は妻に包丁で刺して殺した。我が子の落書きの上に鮮血が上塗りされる。私は我慢の限界だった。私にばかり育児を押し付けていた妻は実は浮気をしていたのだ。


以下、怪文書


 すごい! 我が子の落書きはどう見ても妻の未来のようだ! 裏切り者には鮮血を持って罪を償わせよ! 私は未来からの使いである! 今夜は妻のスープを我が子のために作ろう!


………………


 この怪文書は事件発覚後に男の家から見つかったノートの切れ端である。警察関係者によると、男は妄想状態にあったと言う。



一話、終わり

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