真夜中のラストダンス

第1話 The person I love about to die

「ありがとう…。」

 そう言って、彼女は俺の手の中で眠った。

 ***

 「あっついねぇ~…。」

 「そうだなー…。」

 4月なのに暑い始まりの日。何気ない会話をしながら歩いているのは俺、斎藤 昴と、幼馴染の宮村 澪だ。澪は眉目秀麗で、俺たちの学校のマドンナだ。運動神経もよくて、ダンスがとても上手だ。そして、俺がひそかに想いを寄せている人でもある。

 「あー。今日から2年生かー。修学旅行楽しみだなー。」

 「おい、まだ始まりたてほやほやの4月だぞ。」

 「だって楽しみなんだもん。」

 「フーン…。お、ついたぞ。」

 「ついたー!」

 「はぁ…、切り替えろよ。」

 「うん!」

 「あ!澪先輩、おはようございます!」

 「おはよう。」

 「おはようございます!」

 「おはよう。」

 どうだ、これがさっきの澪だと誰が思えるだろうか。澪は俺の前以外ではすっごくネコを被る。

 「おーい、澪。クラス表見たか?」

 「んー?まだー。」

 どうしよう、呼び捨てで呼ぶな、の視線が痛い。

 「どれどれ…、あ!見て昴、一緒のクラスだよ!」

 どうしよう、嫉妬と怒りの視線が痛い。まぁいいや。

 「おし、じゃあクラス行くぞー。」

 「うん!」

 ***

 「えー、2年生だからといって、気を抜かないでください。それじゃ、終わりましょうか。」

 「起立、礼。」

 「澪さん、写真撮りましょう!」

 「いや私と!」「俺と!」

 学校が終わったとたんこれだ。まったくやかましい。そう思いながら俺は教室を出る。

 「すいません、今日は親から早く帰ってこいと言われてまして…。」

 教室では落胆の声が相次ぐ。

 ***

 「嘘つかなくてもいいだろ。」

 「だって、早く帰りたいんだもん。あんなことしてたらいつまでたっても帰れないよ。」

 「ふーん。」

 「あのね、昴。」

 「なに?」

 「私ね、もうすぐ死ぬんだ。」

 「…は?」

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