第61話 私には何も……〜紗耶香〜


「………はぁ、なんで泣いちゃったんだろ私」



外に灯りがつかないのようや光がない時間にて、私は暗いベットの上で体操座りで乗っていた、


配信は……今日は休んだ。

今の私ではちゃんと笑えるかが分からなかったからだ。


「……スランプなのかなぁ……」


この前の旅行でそれが払拭されたと思った。でも……そんなことは無かった。


旅行前にした配信でのことだ。


その時に流れたコメントが不思議と私の目に入った。


:あおいさんが思う新時代ルーキーの4人の魅力を教えてください!


その時はなんにも考えずに彼女たちの魅力を伝えたつもりだ。


ギャップや可愛さ、包容力があったりと……様々な魅力が4人にはあった。


その時に思ってしまったのだ。


「……私の魅力って……個性ってなに?」


その時からだ。配信で上手く笑うことが……配信が楽しいと感じなくなってしまったのは。


エイジさんが教えてくれた。私の個性はみんなに元気を与えてくれることだって。

そして、配信を楽しむことが大事なんだって。


その時は初心に帰って配信をやろう!と意気込んだ……それなのに……配信をやろうした瞬間……怖くなった。


……信念がなかったのだろうか……栞菜さんや凛明みたいに……明確に楽しさや目標が無かったのかな。


昔からそうだ。私にはやりたいことも、何かに対して真剣になったこともない。


配信だって、人気になれたのなんて運が良かっただけ。ただただ騒いで、真似て……たったそれだけ。


私には個性も、魅力も……何もなかった。


でも前までそれでよかったと思っている。そうやってなんとかお金を稼いで、貯めて、栞菜さんや凛明を養えれば……それでいいと……でも。


……エイジさんが現れてから……私は嬉しさと同時に……不安が生じ始めた。


もし、何もない私に気がついて二度と見てくれなかったらどうしようって……私のせいで、ここから去ったらどうしようって……。


また、みたいに見捨てられて……。


そんなことを考えたら頭に離れなくて……不安で不安で……寝れなかった。


配信なんて……出来るわけなかった。


「……最近、胸がざわざわして寝れない……水飲まなきゃ」


少しでも落ち着くために、自分の部屋から出てそのままリビングに行こうとする。


でも……その前にあかりがついている部屋が目に入った。


「……エイジさん?」


そこは彼の部屋だった。なんでこんな時間まで……そう思い、私はこっそりと彼の部屋の中を覗くと……ベットで寝落ちしている瑛二さんと開いているパソコンが映った。


こっそりと近づいて彼のパソコン画面を覗いてみた。

その画面に映っていたのは……私の配信画面であった。


「……な、なんで……?」


困惑していると、彼のメモ帳が目に入った。書かれていたのは……私の事が書かれたものであった。


魅力、個性だけじゃない。どうしたら伸びるのか、どうしたらさらに視聴者を掴めるのか……私に自信を持たせる方法など……色々なことがそこには詰まっていた。


「……え、エイジさん」


……なんで、こんな私のためにそこまでしてくれるのだろうか。


もしかしたら……もう配信なんて出来ないかもしれないのに、それでも彼は諦めずに今も頑張ってくれている。


凄く、凄く嬉しい……それなのに……私は、罪悪感に蝕まれてしまう。


「……ごめんなさい……ごめんなさいエイジさん……こんな、こんな私のために」


泣きそうになった。嬉しさからではない……何も出来ない自分の不甲斐なさに思わず悔しさが芽生えてしまった。


でも、そんな事思っても……今の私にはそんな配信が出来る勇気が出ない。


「……エイジさん…… エイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさんエイジさん…………」


彼の名前を何度も読びながら、私はパソコン画面を閉じ、そのままベットの中に……彼の温もりが肌に直接伝わってくる。


「……あったかい……だめだ私……ずっとここにいたい……」


……なんで貴方は昔から私を見つけてくれるの?貴方だけが私を見てくれて……それが嬉しかった。


でも……私のために動いて欲しくない。もう……彼に辛い思いをさせてたくない。


「……覚悟、決めなきゃ」


私にはもう、何もない……でも、彼の心を射止めれば……。


「……エイジさん……エイジさん」


……優しい貴方なら、私のことを見てくれるよね?ごめんね。でも……私の我が儘も……貴方なら……。


「……愛しています……あの時から、ずっと……」


その日の夜、私は覚悟を決めるのだった。




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