【打切】貧乳好き転生勇者はエロゲみたいな巨乳まみれ異世界でちっぱいハーレムを創る~最強スキル【神の手】で田舎貴族の末弟が無自覚悪役ムーブをかますが何故か評判は上がり続ける~

たしろ

一章

第1話 ハロー乳ワールド

 聖剣の勇者ティン・クォターツ。彼の前世はまさに壮絶そのものだった。

 芸術家としての成功と転落。再起をかけた一大プロジェクト、美少女像の建立。

 その最中に起きた倒壊事故。

 落下する双球の隙間から覗く光景に、ティンは美の極致を垣間見た。


「貧乳こそ至高……」


 巨石は砕け散り、その隙間からゆっくりと血潮が流れ出す。

 盛り過ぎた乳に潰される呆気ない死に様。

 次に目が覚めた時、彼は産まれたばかりの赤子になっていた。


「おめでとうございます、元気な男の子ですよ!」


 胸の大きな産婆がティンを取り上げる。

 どこかやり遂げたような様子で微笑む母メノレの胸もたわわだ。


「お疲れ様です、奥様」


 傍らで手を叩く眼鏡を掛けたメイドも言わずもがな。

 自身を囲む環境に、ティンは産声より先にため息を漏らした。


 この世界は巨乳に満ち溢れている。


 今際のきわで得た悟りを否定するかのような乳房にティンはただただ辟易とした。

 勢いよくドアを開けて入ってきた父親ラッツ・クォターツ子爵に乳はなかったが、後に続いた叔母スニエとその娘もやはり巨乳である。


「我が子が増えるというのは何度経験しても良いものだな!」


 ラッツは我が子を抱き上げ満面の笑みを浮かべる。

 短く切り揃えられた金髪にキリッとした精悍な顔つき。


「おお、この子は私似だな!」


 嬉々として我が子を高く抱き上げるラッツ。

 しかしティンからの反応はない。

 不審に思った産婆がティンの目をまじまじと見る。


 宝石のように輝く青い瞳の奥に見える砂時計のような紋章。

 神紋――限られた者にのみ与えられる特別な力の象徴。

 人により現れる部位は異なるが、神紋を持つ者にはある共通の特徴がある。


「あの、誠に申し上げにくいのですが……」


 口ごもる産婆にラッツは首を傾げる。


「なんだ? 遠慮することはないぞ」

「……この赤子は“転生者”かもしれません」


 その言葉を聞いたメイドは身を震わせた。

 転生者。それは前世の記憶を色濃く残す者。

 この世界では災いをもたらすと言われ忌み嫌われる存在である。


「今ならまだ間に合います。ご希望であれば死産として報告することもできますよ」


 残酷な提案をする産婆に対してメイドは血相を変えて詰め寄る。


「なんてことを! あなたには人の心が無いのですか!?」

「辛く苦しい人生を送る前に魂をあるべき所へ還すというのが、真の心遣いというものではありませんか?」


 言い争う二人を横目にラッツはティンを優しく抱きしめる。


「別に転生者だって良いではないか、私たちの子どもであることに変わりはない」


 ラッツの言葉にメノレも頷く。

 実直な親の愛を前に、ティンは涙を流さずにはいられなかった。


「おおっ、泣いたぞ!」

「あなたの抱き方が下手なのよ。ほら、こっちにおいで」


 メノレに抱かれてティンはピタリと泣き止んだ。

 特段心地が良い訳でもなく、むしろその逆。

 見上げる景色は前世で死ぬ直前に見たものと瓜二つであった。


「おお、すごいな! これが母の愛というものか!」

「ふふっ」


 違う、そうじゃない。が、ティンがツッコミを入れることはできない。

 何せ赤ちゃんなのだから。


「よしよし、いい子でちゅね~」


 あやされ撫でられてもティンの表情はピクリとも動かない。

 優しい家族に恵まれた環境、そして有り余るほどの胸。


 一般的にはご褒美とされるものでもティンにとっては障害物に他ならない。

 目の前にあるたわわな双球を払うように手を振るティン。

 次の瞬間、メノレの乳はティンの顔に重くのしかかった。


「なっ!?」


 周囲の者は皆一様に慌てふためく。


「どうしたメノレ?」

「胸に掛けていた反重力魔法が解かれたみたい」


 ラッツはゴクリと息を飲む。

 触れるだけで魔法を無効化する異能。それこそがティンの得た神紋の恩恵である。


「ご、ご子息様が!」


 メイドが慌てて乳の隙間でもがくティンを救い出す。

 ティンは息を整えた後、自身の手を見る。

 何ら変哲のない赤子の小さな手。そこに重なるゴツゴツとした大きな手。


「これは……すごいぞ!」


 ラッツはメイドからティンを奪い取り、興奮した様子で部屋中を駆け回る。


「もしかするとこの子は英雄になるかもしれんな!」

「あなたったら、こんな平和な時代に何を言ってるんですか」


 ラッツとメノレは冗談めかして笑う。

 英雄の存在が求められたのも遥か昔、大陸を二分して72体の魔王と大戦争を繰り広げていた頃のこと。


 魔王たちの全滅で終焉したこの戦争により、人類は数々の革新的な技術を得た。

 魔法もその一つである。


「メノレ、じっとしていてね」


 スニエがメノレの胸に手をかざす。

 淡い光が放たれた後、メノレの胸は再び重力から解放された。


「ありがとうお姉様、肩が軽くなったわ」

「もう、あなたもそんな立派なものが付いてるんだから魔法くらい学べばよかったのに」

「私なんて人並みよ。世界にはもっともっと大きな人がごまんといるんだから」


 二人のやりとりを耳にして、ティンの懸念は確信へと変わる。

 やはりこの世界は巨乳で満ち溢れている。

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