殴りあふ花

佐藤研哉

殴りあふ花

種蒔いて土のもぐもぐしてきたる


昼の菜の花昼の光を放ちけり


亀鳴いて表彰台のやうに石


月面に散らばる手紙春苺


心中を薔薇に持ちかけられるとは


噴水としてあふむけをやめられず


どれも無断転載された蝙蝠か


五日後の蝉に出逢つてしまふ蝉


瓶底の砂拭く夜の蠍売


その下の一番安い秋蝶で


虫の夜の花器は上書きされたがる


殴りあふ花鶏頭と呼べるまで


色鳥を放ち油彩画くづれだす


月光の泥濘ぷはと魚の口


枯野に立つ裏も表もなき扉


アダムスキー型のかまくら回らざる


電線の伸び縮みして鷹柱


雪を見る右腕を止まり木に変へ


夜の明けて霧氷林みな立ちくらみ


ふりかへるたび早春は薄くなり

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殴りあふ花 佐藤研哉 @stkn_magnolia

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