最終決戦です!
魔導ジャマーの破壊に成功しました――完、といきたいところですが、戦いはまだ終わりません。レール放題も残っていますし、宇宙にはまだ、星屑の悪魔が残っています。
この後の予定も一応立てているので、サハクさんたちと手短に確認しておきたいですね。
「サハクさん!」
「やったな姫さん!」
「ええ、ですが喜ぶにはまだ早いです。この後は予定通りでいいんですよね?」
「ああ、頼む。こっちはマスドライバ―を確保したらすぐに追う」
「了解しました。アイちゃん、どうですか?」
サハクさんとの通信をきって、アイちゃんに確認を取ります。いちばん大事なのは魔導機関が復活したかどうかです。
これが上手くいってないとこれから先の予定がすべて崩れます。
「出力安定……使えるぞ!!」
「よし! スピちゃん達は?」
「そっちも今やっている――格納完了。いつでも行けるぞ!」
頑張って戦っていてくれたスピちゃん達の回収も完了したところで、『スピアイエル』上を向きながら加速していきます。
魔導機関が万全の状態で使えれば『スピアイエル』は単独での大気圏外へ行くことが出来ます。サハクさん達は無理なのであとで合流する予定ですね。
「上昇しつつ、第二、及び第三主砲を起動するぞ」
「はい!」
今までよりも、難しいですが的も大きいのでなんとかなると思うんですけどね――荒ぶるターゲットを沈めて、引き金を引きます。
「いってください!!」
祈り混じりに放たれたビームは惑星に展開しているレール砲台をずたずたに引き裂いていきます。
これはやったんじゃないでしょうか。レール砲台がえぐり取られるように消滅したせいで、残っている部分も一部は星の引力に耐えきれず自然崩壊しているみたいです。
これでレール砲台ももう使い物にならないでしょう。
さて、残るは宇宙の艦隊を……と思ったところで通信が入ってきました。
サハクさんたちかと思いましたが違うみたいです。
「貴様らよくもやってくれたな」
底冷えするような声とともにモニターに現れたのは金属製の身体をした人型。最初は鎧を着ているのかもと思いましたがよく見れば、全身が金属で出来ているようです。これが星屑の悪魔なのでしょうか。
「よくも余の作品を壊してくれたな。ただで済むと思うなよ」
「何が作品ですか。私達もサハクさんたちも苦しめるようなものを作って、支配しておいてそのいいぐさ。こっちのセリフですよ!!」
尊大な態度で自分が優位だと疑っていないみたいですね。でも、追い詰められているのはそっちだということを教えてやります。
「おい、あまり頭に血を登らせるなよ」
「分かっていますよ」
小声でアイちゃんに返答します。確かに、ちょっとムキになっていたかもしれませんね。
相手をかわいそうなおじさんとでも思っておくほうがいいかもしれません。
「ふん! 魔導機関などという惰弱なものがを使用している存在が粋がっているだけのくせに小娘がよく吠える」
「魔導機関が惰弱ってどういうことですか?」
「どうもこうも……伝わってすらおらんのか。なら、話すことは――む? 貴様、その艦は?」
「この艦がどうかしましたか? これは私の艦ですよ」
『スピアイエル』を見て、星屑の悪魔の様子が変わりました。
何か観察するような目つきです。いやらしい視線を感じます。
「少々、異なっているようだがやはりアレは……いや、違うのか? わからんな。だが、調べれば分かることだ。おい、貴様その艦を余によこせ。さすれば、今までの無礼をゆるしてやるぞ?」
「誰が渡すものですか! それに謝るのは」
「お前の方だよ! 星屑の悪魔!!」
サハクさんたちレジスタンスたちも合流してくれました。
私と一緒に魔導ジャマーに突っ込んだ生き残りだけですが、心強い援軍です。
「余をその名で呼ぶな! 害虫共が……蹴散らしてくれる!!」
その言葉を最後に通信はきられました。
さらに軽戦艦をはじめとする敵艦隊がこちらに向かってきます。私が撃破したときよりも数は増えていますが、艦種は軽戦艦一、重巡洋艦四、軽巡洋艦七です。
大部隊ではありますが、魔導機関が使えるこの状況では――
「魔導機関さえ復活すれば、お前になんか負けない!」
「やれる、やれるぞ!」
レジスタンスの巡洋艦でも戦えます。
というか、むしろ押している状況です。
私も手慣れた手つきでコントロールスティックを操作してビームを発射していきます。
敵の戦闘機も今まで一番多いですが、スピちゃんたちが、直鞍だけでなく自由に飛び回れるようになったおかげで、
「かもうちだー」
「いいてきはやられたてきだけなのでー」
「せきねんのうらみー」
バリバリと落としてくれています。
ただ、あの星屑の悪魔が乗っていると思われる軽戦艦は射線を小刻みに移動させて、私の主砲が当たらないようにしているんですよね。
鬱陶しいにも程があります。
「こちらが有利なんだ。あせるなよ?」
「分かっています」
私はこうして、アイちゃんに注意されているので冷静な方ですが、レジスタンスの人たちはそうも言っていられないようでした。
こちらの数が敵艦隊を上回ると、
「今こそ倒す!!」
「突撃だー!!」
我先にと軽戦艦を狙って前に出ていってしまいました。
サハクさんはまだ落ち着いていますが、それでも気がせっているような雰囲気は感じますね。
まあ、でもこのまま任せてもいいでしょう。
残りは軽戦艦だけですし、今にもビームが届いて――爆散しました。
これで、私達の勝ちです! と思ったときでした。
「な、なんだ魔導機関がまた……」
「出力が!?」
軽戦艦を倒したレジスタンスの巡洋艦の速度が急速に落ちていきます。
「アクティブステルス解除。害虫は馬鹿だから同じ手に引っかかるな」
星屑の悪魔の声とともに現れたのは巨大な球状の物体。私の『スピアイエル』の倍以上の大きさです。要塞とでも呼べばいいのでしょうか。
それが、巡洋艦の向こう側に存在していました。
一体何処にあんなものが隠れていたのでしょうか。
ですが、それよりも魔導機関に影響が出ているということはあれには魔導ジャマーが搭載されているということ。
「すぐに後退してください!」
私やサハクさんが通信を飛ばしますが、すでに手遅れだったようです。勢いを失ったレジスタンスの巡洋艦が何隻も浮いていました。
「どうやら、要塞に例の魔導ジャマーを搭載しているようだな。こちらも範囲ないに入ると魔導機関の出力が落ちるだろう」
アイちゃんの言葉に下唇を噛み締めながら私とサハクさんは後退していきます。こちらまで巻き込まれてはおしまいです。
それにしても星全体を覆うのとは別に小型化していたなんて、範囲は地上に設置してあったものよりも狭いようですが、中々に厄介な代物ですね。
「ふん全員は無理だったか……だが、特と見るが良い余の慈悲を無視した害虫め!」
浮いているだけのレジスタンスの巡洋艦を要塞がレール砲台と似たような兵装で嬲り殺すように撃ち抜いていきます。
少しばかりシールドによって耐えてはいましたが、無駄だと言わんばかりに数の暴力で沈められてしまいました。
「次は貴様らだ! 余のスターミレニアムが貴様らを駆除してくれる!」
その言葉と同時に要塞がこちらに向かって前進してきました。おまけに砲撃付きです。
「下がりましょう。範囲に巻き込まれないよう攻撃です」
「あ、ああ。分かった」
生き残っているのは私とサハクさんを含め三隻です。
後退しながらでの砲撃ですが、要塞の巨大さ故にあまり効果があるように思えませんね。ジャマーの範囲にビビって速度に多く割り振っているのもあるのでしょうが、良くない傾向です。
「範囲を絞ったほうが良いな」
「分かってます……スピちゃんたち!」
「はいさー!」
「おとりですな」
宇宙戦闘機や作業ポッドに乗ったスピちゃんたちを要塞に向かわせることで、敵の範囲を理解して、ギリギリのところまで攻撃にまわします。
動けなくなったスピちゃんが一体ずつ攻撃されていきます。
こんな使い方をしてごめんなさいスピちゃん。
「むう、スターミレニアムの速度では追いつけんか。ならば!」
そんな声が聞こえると、スピちゃん達が今まで以上の速度で機能停止していきます。
これは、範囲を広げている!?
「どうやら、こちらの魔導機関と同様に砲撃のエネルギーをジャマーの範囲にまわしたようだな」
「冷静にいっている場合じゃありませんよ!? このままじゃ、私達も……」
脳裏に浮かぶのは先程、嬲られるように沈められたレジスタンスの艦でした。
ああなってしまうのか……と思う私でしたが、アイちゃんには考えがあるようでした。
「ぎりぎりだが、第一主砲を使う」
「あの威力がすごいとか言っていた?」
「いちばちかだがな」
その声に合わせて、なんか艦からゴウンゴウンと謎の音が響いています。
見れば、艦の前面が開いて中心部から巨大な砲塔が顔を出していました。
第一主砲ってこれですか!?
この大きさなら簡単には撃てないのも当然です。
驚く私を尻目にアイちゃんは着々と準備を進めていきます。
「魔導アンカー射出。空間固定。魔力急速充填……五〇……六〇……七〇……八〇」
アイちゃんの声にだけに集中します。ほかは全部余計なものです。
「余の前に沈めぇ!!!」
「九〇……一〇〇!!」
「いっけぇー!!!!!」
思いっきいり叫びながら引き金を引きました。
主砲から放たれたのは莫大な魔力の奔流です。これを今までと同じビームと呼ぶには無理があります。
全てを飲み込むような光は星屑の悪魔がいる球状要塞へ一直線へと向かっていきます。
「馬鹿な……余のスターミレニアムが消えていく……あの艦は、やはりれいの…………」
揺れる船体が収まったときには、球状要塞の大部分がえぐり取られていました。
そして、『スピアイエル』に異常は見受けられません。無事です。私達は勝ったんです。
星屑の悪魔はご自慢の要塞とともに星屑になったというわけですね。
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