第11話 6月23日-新しい仲間

門司港の夜は、関門海峡に映る灯りが星空のようにきらめき、静かな時間が流れていた。夜の23時、FM門司港の小さなスタジオに、佐藤美咲の優しい声が響く時がやってくる。「ハートステーション」の放送が始まると、街の片隅でラジオを聴く人々の心が美咲の声に包まれる。


その夜、美咲はスタジオのマイクの前に座り、少し感慨深げな表情を浮かべていた。「皆さん、こんばんは。こちらはFM門司港の『ハートステーション』、パーソナリティの佐藤美咲です。今夜も皆さんと一緒に、心温まるひとときを過ごしたいと思います。」


美咲は深呼吸をして、続けた。「今日は新しい職場で出会った同僚たちと一緒にランチを楽しみました。新しい環境での友情の始まりに、とてもワクワクしています。」


彼女は机の上に置かれた一通の手紙を手に取った。その手紙には、新しい仲間との出会いの喜びが綴られていた。


---


「美咲さん、


はじめまして。私は門司港に住む森岡真紀と申します。今日は、新しい職場で出会った仲間との出会いを共有させていただきたくて、手紙を書きました。


先日、新しい職場に配属され、最初はとても緊張していました。しかし、ランチタイムに同僚たちが温かく迎えてくれ、一緒に食事をしながら話すことで、緊張がほぐれました。その時、私たちはたくさんの共通点を見つけ、一気に打ち解けることができました。


彼らの笑顔や優しい言葉が、私にとってとても心強く感じました。新しい環境での不安が、一気に消えていくのを感じました。これからこの職場で、彼らと一緒に成長していけることがとても楽しみです。


この思い出を思い出すたびに、YOASOBIの『アイドル』を聴くと、心が温かくなります。ぜひこの曲をリクエストさせてください。


森岡真紀」


---


美咲は理恵さんの手紙を読みながら、彼女が新しい仲間との出会いに感じた喜びに心を寄せた。新しい環境での友情の始まりが、どれだけ大きな力を持つかを改めて感じた。


「皆さん、今日は森岡真紀さんのリクエストをお届けします。理恵さんは、新しい職場で出会った仲間との出会いを語ってくださいました。その心温まるエピソードと共に、YOASOBIの『アイドル』をお聴きください。」


美咲は再生ボタンを押し、スタジオ内に「アイドル」のメロディが流れ始めた。その曲が流れる中、美咲は理恵さんの手紙をじっくりと読み返していた。彼女の言葉一つ一つに、新しい仲間との出会いの喜びが込められていた。


曲が終わり、美咲はリスナーからのメッセージを紹介した。「今、リスナーの方から理恵さんへの温かいメッセージが届いています。その中から一つご紹介します。」


---


「真紀さん、


あなたのお話を聴いて、とても感動しました。新しい職場での出会い、素敵ですね。私も新しい環境に飛び込む勇気をもらいました。あなたのお話をシェアしてくださって、ありがとうございました。


リスナーの藤田美和」


---


美咲はリスナーの優しい言葉を読み上げながら、心が温かくなった。リスナーたちの思いやりのあるメッセージは、理恵さんに届き、彼女の心をさらに温かく包んでいた。


その夜の放送が終わり、美咲はスタジオを出るときに、心の中で新しいエッセンスを考えていた。彼女はリスナーの新しい出会いや友情をテーマに、毎日の放送で少しずつ紹介することにした。これにより、リスナーたちが新しい環境での出会いを楽しみやすくなるだろうと考えた。


真紀さんはラジオを聴きながら、新しい仲間との出会いを思い出し、再び感謝の気持ちでいっぱいになった。リスナーたちの応援メッセージは、彼女にとって大きな励みとなり、新しい職場での生活を支える力となった。


数日後、真紀さんから美咲に感謝の手紙が届いた。「美咲さんのおかげで、新しい職場での出会いを再確認することができました。皆さんの温かいメッセージにも本当に感謝しています。」美咲はその手紙を読んで微笑み、ラジオパーソナリティとしての仕事の意義を改めて感じた。


夜の放送で、美咲はリスナーに向けて語りかけた。「皆さん、いつも番組を聴いてくださってありがとうございます。私たちの声が、誰かの心に届き、少しでも元気を与えられることを願っています。」


そして美咲は、もう一つの特別なリクエストを紹介した。「さて、今日はもう一つ、特別なリクエストをお届けします。こちらは、門司港に住むリスナーの山本さんからのリクエストです。山本さんは、毎晩この番組を聴きながら眠りにつくそうです。彼がリクエストしてくれた曲を、皆さんと一緒に聴いて、今日の放送を締めくくりたいと思います。」


美咲は曲を紹介し、山本さんがリクエストした「ハルノヒ」が流れた。曲が流れる中、美咲はスタジオの灯りを少し落とし、静かにリスナーに語りかけた。「それでは皆さん、今日も素敵な夜をお過ごしください。また明日、お会いしましょう。おやすみなさい。」


その夜も、門司港の街には美咲の優しい声が響き渡り、人々の心を温かく包み込んでいった。


---


その後も美咲の放送は続き、多くのリスナーが彼女の声に癒され、元気をもらっていた。美咲にとって、リスナーの声に耳を傾け、その思いに寄り添うことが何よりも大切な仕事だった。彼女の声は、まるで優しい灯火のように、リスナーたちの心を照らし続けた。


毎晩23時、門司港の静かな夜に、美咲の声が響く。その声は、関門海峡の灯りとともに、リスナーたちの心に温かく届いていった。美咲の放送は、ただのラジオ番組ではなかった。それは、人々の心に寄り添い、希望と癒しを届ける小さな灯火のような存在だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る