第41話 サイバー攻撃
41-1.スペースエッグⅡ
平和34年8月、烏帽子岳のスペースエッグ打上塔から『物資輸送用スペースエッグⅡ』が月面基地に向けて発射された。
スペースエッグⅡは、月の南極の月面基地に建設用物資を輸送する為に開発された。
スペースエッグⅡは、従来のスペースエッグの後部に固定ロケット部分が追加され従来より約2m長くなっていた。
スペースエッグⅡは、宇宙空間に達すると、追加された固定ロケットを起動させ、秒速11.2kmの第二宇宙速度のスピードになり、月に向かって加速した。
2日後、スペースエッグⅡが月面基地付近に着陸すると、月面基地の作業ロボットが必要な資材を取り出し基地に運び込んだ。
スペースエッグⅡ自身も、作業ロボットが分解し基地の資材として使用した。
この後、数十機のスペースエッグⅡが次々に月面基地に到着した。
こうして、月面基地建設は着実に進んで行った。
41-2.極秘レポート
平和34年10月、アメリカ国際戦略研究所から、1篇の極秘レポートがアメリカの上級官僚と一部の議員に密かに配布された。
その内容の一部は次のようであった。
『極楽グループは、エイリアンまたはガン組織、ジンギスカーンの軍隊である。
極楽グループの進撃を阻止する事は極めて困難である。
かれらの進撃の後には荒廃した荒れ地が残るのみである。
極楽グループの組織は、通常の企業や政治体制、産業体制より意思決定が極めて速く、既存の組織は、これに対抗できない。
また極楽グループは、無借金経営で、豊富な資金力をバックに、競争相手を圧倒している。
しかも、世界中の優秀な科学者や技術者を雇用し、最先端の技術や特許を開発し所有している。
極楽グループは、最も基本的な産業基盤を自分たちのルールに置き変えてしまった。
それは電力システム、電気自動車の情報管理システム、蓄電池、電気自動車、電気式高速船舶、電気式プロペラ飛行機、人工衛星、新型金属、交通網、自動農業工場、ロボット、地下ビル等である。
これらは、密接に関連しているが、以下個別に論じる。
1.電力システム
極楽グループは、超量子擬集体と呼んでいる熱源から直接的に電力に変換している。
超量子擬集体は、一説には、ブラックホールとの説もあるが、詳細は非公開であり不明である。
彼らは、全世界の電力エネルギーをこれだけで、数百年供給できると主張している。
しかしながら、これらも検証不能である。
極楽グループは、既に世界の電力量の30%を電磁波による無線給電システムまたは蓄電池で供給している。
既存の火力発電、水力発電、原子力発電、火力発電、太陽光発電、風力発電、地熱発電だけでなく、石油、石炭、天然ガスも、エネルギー源から駆逐しつつある。
極楽グループは、次のような点で、既存の電力システムに比べはるかに優位にいる。
・発電コストが極めて安い。
・発電所等の建設コストが極めて安いか、まったく必要としていない。
・給電の為の送電線、変電所を必要としない為、それらの建設コストと保守費用がかからない。
・電磁波による無線給電システムの為、給電コストが極めて安い
・給電システムでユーザへの課金や位置等の状態を掌握している
これに比べると既存の電力システムは極めて脆弱である。
ダムや発電所の膨大な建設コスト、変電設備、長大な送電線、送電ロス、送電ネットワークの管理の煩雑さ、大規模停電、環境対策コスト、保守コスト等々。
こうした種々の不利な点を抱えており、極楽グループのコストと比較して、もはや新規の開発は実施できなくなった。
2.電力配給システム
極楽グループは、電力配給を無線給電システムまたは専用の蓄電池で行っている。
無線で行っている為、電気自動車や電気式高速船舶、電気式プロペラ飛行機等を停止させることなく充電可能である。
また、工場や既存の水力発電所等に大型蓄電システムを配置しておけば、大停電事故が発生した時にも稼働が可能である。
無線給電用の人工衛星は、極楽グループが独自の方式で打ち上げており、既に20,000基以上が軌道に投入されている。
人工衛星の打ち上げは、ロケットエンジンを使用せず、超電導による加速装置を使用している。
人工衛星の打上塔は高さ10kmに達し、これはかつて人類が構築した建造物の中で最高の高さの構築物である。
この塔の素材は、極楽グループが独自に開発した物で、成分等については公表されていない。
~中略~
結論
・極楽グループは、無限の増殖を続けるがん細胞である。
・極楽グループの売上は、既に中規模の国家のGDPを超えている。
・世界は、極楽グループに浸食され、変形しつつある。
・既に極楽グループは、既存の企業、産業、政治体制、国家と衝突している。
やがて全面的な衝突は免れないであろう。
・近い将来、極楽グループを破綻させるのか、世界が破綻させられるのか、そのいずれかが選択されるであろう。』
41-3.サイバー攻撃。第一次防衛ラインが突破される
平和34年10月15日グリニッチ標準時間午前7時55分
ハル長官は、秘密ルームにいた。
彼は、コンピュータの3Dディスプレイに向かって話始めた。
「連合チームの諸君。鷲チームのハルだ。ラビットチーム、いるか」
「こちらラビットチーム、準備はOKだ」
「クロワッサンチーム、いるか」
「こちらクロワッサンチーム、準備はOKだ」
「ビールチーム、いるか」
「こちらビールチーム、準備はOKだ」
「熊チーム、いるか」
「こちら熊チーム、準備はOKだ」
「龍チーム、いるか」
「こちら龍チーム、準備はOKだ」
「キムチチーム、いるか」
「こちらキムチチーム、準備はOKだ」
「カンガールチーム、いるか」
「こちらカンガールチーム、準備はOKだ」
「各チーム、配下の組織を動員し、グリニッチ標準時間午前8時00分に『ロータス・フラワー』への総攻撃を開始しろ。全員の健闘を祈る」
「了解」
同時に、応答が返ってきた。
「鷲チーム、準備はいいか。画面に応答しろ」
コンピュータの3Dディスプレイに、攻撃用コンピュータの模式図がしだいに表示され、
サーバーだけで数百を超えた。配下のコンピュータは赤い点で表示され、無数の塊となった。
ディスプレイに『07:59:50』と表示された。
10秒前だった。
コンピュータによる音声とディスプレイのカウントダウンが始まった。
『9秒、8秒、7秒、6秒、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、0秒、スタート』
世界中の拠点から、九州の蓮の花のマークに向かって攻撃の線が向かっていった。
突然、極楽グループの回線が止まった。
その時システム管理室長の大山は、コンピュータシステム管理室にいた。
『ビーー.ビーー.ビーー.』
強烈な警告音が室内に響き渡った。
前方のスクリーンには、量子コンピュータを中心とした、極楽グループのコンピュータ網と複数の防御ラインが同心円状に表示されていた。
その外側は、真っ赤な三角形の矢印や真っ青な三角形の矢印が突き刺さり、揺れ動いていた。
それは卵子に侵入しようとする精子の群れのようだった。
大山は、いままでのサイバー攻撃の防御の経験から、事態が極めて異常であると理解した。
「創立者に、緊急通信しろ」
『了解』
アウルが答えた。
3Dディスプレイにサンの顔が表示された。
「大山君、緊急事態が発生しているようだな」
「創立者、システムへのサイバー攻撃が以前とは比較にならないほどのレベルで起きています」
大山は、画面を見ながら説明した。
大山が見ている画面が、サンにも転送されていた。
「これはひどい」
サンは、うなった。
「赤色が、社会主義国家で、青色が北米です、その他に緑色もあります」
「わかった。直ぐにそちらに向かいます。システム防衛チームも招集してください。
それと世界ソフトの防衛部隊も招集し待機させてください」
大山は、アウルに向かって言った。
「アウル、システム防衛チームを大至急、この部屋に招集しろ。それと、世界ソフトの防衛部隊も招集し待機させておけ。必要な情報は転送配布しろ」
『全て了解しました。招集をかけました。全て完了』
アウルが冷静に答えた。
最初に現れたのは、サンだった。リニアエレベータで直ぐに到着した。
「大山君、どうかね」
「大変な事態です。大変な量の協調分散型DoS攻撃とシステム侵入ソフトの攻撃を受けています。もう第一次防衛ラインは突破されています」
世界中から、九州の極楽市に向かって、いろんな色の三角マークが数限りなく押し寄せていた。三角マークは、協調分散型DoS攻撃(DDoS攻撃)とシステム侵入ソフトの攻撃を表していた。
攻撃のメインのサーバーは、表面に出ず裏で制御して、世界中のパソコンやコンピュータから攻撃が出されている。
「これはひどいな」
サンは、画面を見て、あきれたように見ていた。
41-4.反撃
1分ほど遅れて、6名の子供たちが行列を組んで現れた。全員、極楽学園の制服を着ている。
先頭にいたのは12歳の美智だった。その他の子供達も美智と同年齢かそれ以下であった。
一番後ろに11歳の長男の静雄がいた。まだ本当に小さい。
全員、サンと大山の前に並び、足を揃えて、そして敬礼した。
皆の足音が拡がっていった。
美智が発言した。
「システム防衛チーム、全員招集に応じ、参りました。北米方面担当、神武 美智」
美智が敬礼した。
「ヨーロッパ方面担当、門川 穣」
「アジア方面担当、長尾 圭介」
「ロシア方面担当、大友 愛」
「南米・アフリカ方面担当、谷口 琴音」
「宇宙方面担当、神武 静雄」
次々に敬礼した。
サンと大山が敬礼した。
「ご苦労さん。これから大山システム管理者から、説明を受けて、各自持ち場についてください」
サンがにこやかに話した。
「それでは、現状を簡単に説明します。既に第一次防衛ラインは突破されました」
大山が説明を開始した。
ほうという声がシステム防衛チームから聞こえた。
「我々のシステムの第一次防衛ラインがこれほど簡単に突破されたのは、今回が初めてです。これらは、従来のハッカー集団のレベルを超えています。極めて優秀で、国家的な専門侵略組織としか考えられません。」
「まあ、しばらくは好きにさせておこう。第二次防衛ラインを突破されたら、偽のシステムに誘導するようにしてくれ」
サンがのんびりした口調でいった。これから始まるシステム防衛チームの実践を楽しんでいるようだった。
「創立者、了解しました。既にその措置は設定済です」
大山は、命令をくだした。
「システム防衛チームの諸君、配置につけ」
「ハイ」
高く、透き通るような返事が同時に返ってきた。
子供たちは、一斉にコンピュータの前に座った。
既に何度も訓練しており、自分の場所を心得ていた。
「全員、DDoS攻撃を逆探知し、できるだけ攻撃の元を探り出せ。必要なら詳細な分析と探査を世界ソフトの防衛部隊に依頼しろ」
大山が指示を出した。
「了解」
高く、透き通るような返事が同時に返ってきた。
画面は、色とりどりの攻撃で、もはや九州どころか日本も見えなくなってしまった。
しばらくして、大山が言った。
「攻撃側マシンにワクチンソフトの注入を始める。攻撃先のリストができたところは報告しろ」
ワクチンソフトは、攻撃側マシンに注入されると、マシンに常駐し、攻撃側マシンを凍結させる機能がある。
「北米方面、完了。準備良し」
「ヨーロッパ方面、完了。準備良し」
「アジア方面、完了。準備良し」
「ロシア方面、完了。準備良し」
「南米・アフリカ方面、完了。準備良し」
神武 幾雄は、答えなかった。まだ操作に忙しそうだった。
「宇宙方面、どうした」
大山が、少し強い声で催促した。
「宇宙方面、完了。準備良し」
「それでは、全員ワクチンの注入開始!」
「注入開始!」
高く、透き通るような返事が同時に返ってきた。
画面では、無数の攻撃が一挙に無くなっていった。
41-5.スミス
薄暗いオペレーティングルームに、鷲チームの別班のアレクサンダー・コール・スミスがいた。
勿論偽名だ。彼の本名は誰も知らない。出身地も本当のキャリアも誰も知らない。
スミスは、天才的なハッカーだった。政府機関のシステムのセキュリティを破り、刑務所に行くか、サイバー部隊の特務機関の今の仕事をやるか、選択を迫られ、彼は今の仕事を選んだ。
彼は、両足を机の上に投げ出していた。
彼は、短く刈り上げたブラウンの髪を右手で撫で上げた。耳に上の髪のサイドは極端に刈り上げられていた。
「ジョン。DDoS攻撃が撃退されつつあるぜ」
スミスは、隣にいる同じ班のジョンに言った。彼らは小さな部屋に二人だけでいた。
ジョンが答えた。
「そうだな、相手も優秀だから、これぐらいの攻撃にはびくともしないだろう。もっとも今回は史上最大級の攻撃でいつまで耐えられるかな」
「そういうことだな、これで少しは画面が静かになる。ぼちぼち動き出すか」
スミスは、机の上に投げ出した足を下し、机に向かった。
極楽市のシステム管理室の画面には、再び攻撃が盛り返したのが表示された。今度は、直ちにワクチンソフトが注入され防止された。
攻撃の手は、初めに比べると極端に少なくなった。
だが、以前として攻撃が続いていた。システムに侵入しようとするハッカーの攻撃だった。
「ハッカーのシステム侵入攻撃を検出」
いくつかの場所から、ばらばらに報告が上がった。
「ハッカーの攻撃を分析、追跡しろ」
大山は、勢い込んで言った。
「了解」
高く、透き通るような返事が同時に返ってきた。
「北米方面、第二次防衛ラインを突破されました」
美智が報告した。
「アジア方面、第二次防衛ラインを突破されました」
「よし、全ての操作をトレースしろ。逆探知も行え。第三次防衛ラインをダミーマシンに変更」
それほど広くない密室の中に、スミスとジョンが机の上のコンピュータ端末を前に並んで座っていた。
スミスは、ビール好きでかなり肥満していた、
ジョンは、やせ形で長身だった。
スミスは、机の上の仮想キーボードを忙しく操作していた。
次々にコマンドを入力していく。
システムのスーパーユーザになるコマンドを実行した。
パスワードが要求された。
実は、スミスは以前にこのシステムに侵入したことがあった。
以前のパスワードを入力してみた。
撥ねられた。
「さすがに、変更していたか」
さらに、入力を繰り返した。
やがて、パスワードは受け入れられ、スミスはスーパーユーザになった。
「まー、こんなもんか」
「スゲーな。さすがに超一流のハッカーは違うな」
ジョンが、立ち上がってスミスを褒めた。少し悔しさが漂っていた。
「まー。こんなもんだ」
スミスは満足そうに微笑んだ。
「侵入者が、スーパーユーザになりました」
美智が報告した。
「直ぐに、阻止しろ」
大山が叫んだ。
その時、サンが制した。
「いや、そのまま泳がせろ。ただし操作を画面に表示しろ」
「そのまま、放置します」
美智が答えた。
画面に、システムを操作するコマンドが次々に表示された。
「創立者。侵入者はオペレーティングシステムに熟練し、トレーニングを積んだ極めて優秀な者のようです」
「そのようだな。一部の情報の流出やデータの破損は仕方がない。回線の速度を極限まで遅くしろ。北米方面担当、侵入者の場所や関連情報が得られたら、直ぐに報告しろ」
「了解」
美智が答えた。
第二次防衛ラインに存在するコンピュータは、市販のハードウェアやオペレーティングシステムで構成されていたので、極めて優秀なハッカーなら侵入は可能だった。
だが侵入者は、既に第三次防衛ラインに到達していた。
第三次防衛ラインは、市販のハードウェアのダミーマシンと独自のハードウェア、そして独自のオペレーティングシステムで構成されていた。
「顧客データベースにアクセスされています」
美智が報告した。
「そのままでいい。既にデータベースは、ダミーに変更済みだ」
大山は、冷静に答えた。
「ハッカーのマシンの探査を続行します」
美智が答えた。
「ひゃほー。データベースにアクセスできた。全部吸い取るか」
スミスは、おどけて言った。
画面にアップロードの画面が出た。
「やたらに、遅くないか」
スミスの画面を覗きこんでいたジョンが聞いた。
「そうだな、回線のどこかにネックが生じているようだ。しばらくそのままにしておくか。ちょっとコーヒーブレーク」
スミスは、立ち上がり、コーヒーを飲みにいった。
「システム管理室長。現在ハッカーはオペレーションを行っていません。ハッカーの逆探知に成功しました。場所は、...」
美智の報告が止まった。
「場所は、どこか」
大山が急いで催促した。
「場所は、... 場所は、ペンタゴンの中です」
「それでは、逆にそのマシンに侵入しろ」
「侵入しました」
「侵入者の名前はあるか」
「ありました。スミスという名前です」
「ありふれた名前だな。本名では無い可能性があるな。そのマシンのIDを使い、データベースシステムに侵入しろ」
美智は、アウルを使いデータベースシステムへのログインを試みた。
やがて、ログインに成功した。
「ありました。ペンタゴンの職員のデータです」
「名前を全て大統領の名前にしておけ。スミスのIDで書き換えろ」
「了解。実行します」
美智がいくつかのコマンドを操作していた。
「全て書き換えました」
美智は、ペンタゴンの全職員のデータを更新プログラムであっという間に書き換えた。
「それでは、こちら側のセキュリティーレベルを上げろ。ハッカーの再度の侵入を防止するのだ」
「了解。セキュリティーレベルを上げます」
スミスが席に戻ると、対象システムからのダウンロードは完了していた。
ファイルを覗くと、かなり個人情報があった。
「まあ、こんなもんか。ジョン、うちらの作戦は終わったな、一杯飲みにいくか」
「OK、いいとも」
ジョンが答えた。
システムをシャットダウンさせて、スミスとジョンは、町の居酒屋に出かけた。
二人で、ビールを飲んでいると、突然数人の男たちに取り囲まれた。
壁に押し付けられ、背中に手を回され手錠をかけられた。
「おい、俺達を誰様だと思っているんだ。俺達は、特別な任務を行っているんだぞ」
スミスは男たちに食ってかかった。
「お前たちが、誰様でも、大統領様でも構わない。逮捕する」
二人は有無を言わせず連行され、取調室に連れて行かれた。
取調室で、取調官の机の前に、スミス達はイスに座らされていた。
背広の男がスミスに向かって言った。
「君は、あの部屋で何をしていたのかね」
「何をしていたって? それは言えませんね」
スミスは、拗ねるような態度で答えた。
「言えない? 君は、ペンタゴンの重要なデータベースを壊していたんだよ」
「そんな...ことは無い...ハズです」
「君は、国家の重要な情報を破壊するという重大な犯罪を犯したんだよ。正直に答えた方が身のためだよ」
「とにかく、私達が何をしていたかは秘密ですので、誰にも言えない」
「君達は、自分のコンピュータから、ペンタゴンのサーバーに侵入して、重要なファイルを破壊したんだ」
『ははん。なるほど極楽の奴らがやったのか...』
スミスは誰がやったにかに気づいた。
「何のために、こうした国家犯罪を行ったか、じっくり喋ってもらうからな!!」
取締官がきつい語調で行った。
その時、突然ドアが開いた。
3名の黒いサングラスをした黒い背広の男たちが入ってきた。
先頭の男は唖然としている取締官達に言った。
「国家情報局の者だ。この件は国家機密にかかわるので、その男達を連れて行く。後のことはちゃんと処理するから、心配するな」
こうしてスミス達は救い出された。
翌日、サンは大山を呼び出していた。
「今後は、自動で侵入システムを逆探知し、相手システムに逆に侵入し、相手の動向を調査するようにシステムを改善してください。
開発チームを直ぐに作ろう。啓に相談しなさい。極楽塾から何名か選抜し、極楽ソフトと合同の開発チームを直ぐに作ろう。この点は啓に相談しなさい。私からも啓に指示しておくよ。さらに極楽ソフトにそのシステムのサポート部門を増強してもらおう。人材募集はマコトに依頼しておく」
「よろしくお願いします。開発状況は逐次報告させていただきます」
「そうだな。頼んだよ」
その後、一週間で啓は、極楽ソフトからセキュリティの専門家を20名用意させ、極楽塾の3名と開発チームを組み、大山を責任者としてシステム防御強化と自動探査ソフトの開発を命じた。
二週間後には、初期バージョンの自動探査ソフトが完成し、第一次防衛ラインを突破した侵略者を逆探知できるようになった。
三週間後には、自動探査ソフトが侵略者のサーバーに逆に侵入できるようなった。
一か月目には、相手の重要な情報を自動的に収集できるようになった。
1年後には、量子コンピュータの力で、侵略してきた相手のOSとデータを、全て極楽グループの仮想システムにコピーし、仮想サーバーの中でシステムを動作させ観察できるようになった。
これらのシステムの動作は、世界ソフトで常時観測された。
こうしてコピーされた侵略者のシステムは、5000サイトにもなった。
日本を含め、あらゆる国家機関のシステムがほとんどであった。
もちろん、このことは相手も知らないし、極楽グループ内にも公開しなかった。
ある日、スミスは上司に呼び出された。
スミスは、あの日以来、ひげを剃っていない。憔悴した顔は髭茫々だった。
「スミス。リベンジする気はあるかね」
「おおありです、上級顧問。ぜひやらせてください」
スミスの顔が明るくなった。
「ここへ行ってくれ、その前に再訓練と日本語の猛特訓が必要だな。それと君の全ての経歴は変更しておく」
上司は、書類をスミスに渡した。
そこには、WEBを利用した極楽ソフトの求人と応募方法が載っていた。
「わかりました。こんどはヘマしません」
スミスは、極楽グループから吸い取った顧客リストファイルの先頭にあった『Michi Jinmu』の名前を思い出していた。
『あいつは、いったい誰だ?』
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